血清コリンエステラーゼ活性が低下するのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
有機リン化合物は、アセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼ(血清コリンエステラーゼとも呼ばれる)の両方の活性を不可逆的に阻害します。アセチルコリンエステラーゼは神経伝達物質であるアセチルコリンを分解する酵素であり、その阻害はアセチルコリンの蓄積と過剰な神経刺激を引き起こし、中毒症状を呈します。血清コリンエステラーゼ活性の測定は、有機リン中毒の診断および重症度評価の重要な指標となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 一酸化炭素中毒は、ヘモグロビンと強く結合してカルボキシヘモグロビンを形成し、酸素運搬能力を阻害しますが、血清コリンエステラーゼ活性に直接的な低下作用はありません。正しくは:この中毒は、主に血液の酸素運搬能に影響を与え、コリンエステラーゼ活性とは直接関係しません。選びやすい理由:中毒症状を示すため、他の酵素活性異常と混同される可能性があります。混同注意:特定の酵素活性低下と関連する中毒(例:有機リン中毒)と一括りにされやすいです。
- 2. 水銀中毒は主に神経系、腎臓、消化器系に影響を与え、酵素のSH基と結合して機能を阻害することがありますが、血清コリンエステラーゼ活性の顕著な低下の主要な原因ではありません。正しくは:水銀は広範囲な酵素を阻害する可能性がありますが、コリンエステラーゼ活性低下の主要な指標ではありません。選びやすい理由:重金属中毒として様々な酵素活性に影響を与えそうなイメージがあります。混同注意:重金属がSH基を阻害するという一般的な知識と、コリンエステラーゼに特異的な低下を引き起こすという認識が混同されることがあります。
- 3. シアン中毒は、ミトコンドリアのチトクロムc酸化酵素を阻害し、細胞の酸化的リン酸化を停止させることで細胞呼吸を妨害しますが、血清コリンエステラーゼ活性に直接的な低下作用はありません。正しくは:シアンは細胞呼吸の重要な酵素複合体を阻害しますが、コリンエステラーゼではありません。選びやすい理由:劇症の中毒であり、生命維持に重要な酵素を阻害するという点で、コリンエステラーゼも阻害されそうだと誤解されることがあります。混同注意:チトクロムc酸化酵素の阻害とコリンエステラーゼの阻害が混同されることがあります。
- 4. 鉛中毒は主にヘム合成経路の酵素(特にALAデヒドラターゼやフェロケラターゼ)を阻害し、貧血や神経症状を引き起こしますが、血清コリンエステラーゼ活性に直接的な低下作用はありません。正しくは:鉛は主にヘム合成系の酵素を阻害することで知られています。選びやすい理由:他の重金属中毒と同様に、広範な酵素阻害を引き起こすイメージがあるため、選びやすいかもしれません。混同注意:ALAデヒドラターゼなど、鉛が阻害する特定の酵素と、コリンエステラーゼが混同されることがあります。
- 5. 正解。有機リン化合物は、アセチルコリンエステラーゼ(真性コリンエステラーゼ)およびブチリルコリンエステラーゼ(偽性コリンエステラーゼ、血清コリンエステラーゼ)の活性を不可逆的に阻害します。血清コリンエステラーゼ活性の低下は、有機リン中毒の診断マーカーとして非常に重要です。
国試ポイント
この問題は、特定の中毒性物質とその生体内の酵素活性への影響に関する基本的な知識を問うものです。特に、有機リン中毒と血清コリンエステラーゼ活性の関連性は、臨床検査技師にとって必須の知識であり、頻繁に出題されます。他の選択肢の中毒物質がどのようなメカニズムで生体に影響を与えるかについても理解しておく必要があります。
混同注意
アセチルコリンエステラーゼ(真性コリンエステラーゼ)とブチリルコリンエステラーゼ(偽性コリンエステラーゼ、血清コリンエステラーゼ)の区別が曖昧になりやすいです。有機リン中毒では両方とも阻害されるため、血清中のブチリルコリンエステラーゼが指標となることを理解しておく必要があります。また、肝機能障害でも血清コリンエステラーゼ活性は低下するため、鑑別が必要です。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、有機リン中毒の症状、治療法、または血清コリンエステラーゼ以外の関連検査項目(例: 肝機能指標との鑑別)が問われる可能性があります。また、他の重金属中毒やガス中毒における特定の酵素阻害メカニズムや、その診断マーカーについて深く問われることも考えられます。
関連知識
有機リン中毒の症状には、縮瞳、発汗、唾液分泌過多、徐脈、気管支痙攣、筋力低下、呼吸不全などがあります。治療薬としてはアトロピンやPAM(プラリドキシムヨウ化物)が用いられます。アセチルコリンエステラーゼは赤血球や神経シナプスに存在しアセチルコリンを分解するのに対し、ブチリルコリンエステラーゼは肝臓で合成され血清中に存在し、薬物代謝にも関与します。肝硬変などの重度の肝機能障害でも血清コリンエステラーゼ活性は低下することが知られています。