MCVが正常である患者の赤血球の大きさを測定し、健常人と比較した成績(別冊No. 13)を別に示す。考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
画像から、患者の赤血球直径分布は正常人(健常人)と比べて左にシフトし、一部はより小さい径にピークを持つ二峰性を示しています。これは赤血球が小型化していることを示唆しています。しかし、問題文にはMCVが正常値とあるため、平均としては正常な大きさでありながら、赤血球の分布幅(RDW)が異常に拡大していると解釈できます。遺伝性球状赤血球症では、赤血球膜の異常により、球状で浸透圧脆弱性が亢進した小型赤血球(小球性赤血球)が出現し、脾臓で破壊されやすいことから溶血性貧血を呈します。この疾患では、MCVが正常範囲内であることが多い一方で、MCHCが上昇し、RDWは正常から軽度上昇、赤血球の直径分布は左方シフトを示すことが特徴です。特に、軽度な症例ではMCVが正常でも、赤血球形態は異常を示すことがあり、この画像所見と合致します。
選択肢ごとの解説
- 1. 腎性貧血は、エリスロポエチン産生低下による正球性正色素性貧血であり、赤血球形態に特徴的な異常はみられない。MCVは正常だが、画像のような赤血球直径分布の二峰性や左方シフトは典型的ではない。正しくは:腎性貧血では赤血球形態は通常変化せず、正球性正色素性貧血を呈する。選びやすい理由:MCVが正常値という点で選択肢として考えられるが、赤血球形態の異常所見とは合致しない。混同注意:再生不良性貧血(正球性正色素性貧血)
- 2. サラセミアはヘモグロビン合成異常による小球性低色素性貧血であり、MCVは低下する。問題文の「MCVが正常値を示す患者」という条件に反する。また、サラセミアでは標的細胞が特徴的に見られるが、赤血球の直径分布は健常人より小さい方にシフトするものの、二峰性になることは稀である。正しくは:サラセミアではMCVが低下する。選びやすい理由:小球性赤血球が見られるため、画像のような左方シフトの分布を呈することから混同する可能性がある。混同注意:鉄欠乏性貧血(小球性低色素性貧血)
- 3. 鉄欠乏性貧血は鉄不足による小球性低色素性貧血であり、MCVは低下する。問題文の「MCVが正常値を示す患者」という条件に反する。重症化するとRDWは拡大するが、二峰性分布は稀である。正しくは:鉄欠乏性貧血ではMCVが低下する。選びやすい理由:貧血として最も頻度が高く、小球性赤血球が見られることがあるため。混同注意:サラセミア(小球性低色素性貧血)
- 4. 再生不良性貧血は造血幹細胞の障害による汎血球減少症であり、貧血は正球性正色素性貧血を呈する。MCVは正常であるが、赤血球形態に特徴的な異常はなく、画像のような赤血球直径分布の二峰性や左方シフトは典型的ではない。正しくは:再生不良性貧血では赤血球形態は通常変化せず、正球性正色素性貧血を呈する。選びやすい理由:MCVが正常値という点で選択肢として考えられるが、赤血球形態の異常所見とは合致しない。混同注意:腎性貧血(正球性正色素性貧血)
- 5. 正解。遺伝性球状赤血球症では、赤血球膜の異常により球状赤血球が出現し、浸透圧脆弱性が亢進する溶血性貧血である。赤血球は小さく見え、赤血球直径分布は左方にシフトし、二峰性を呈することがある。MCVは正常範囲内か、軽度低下することがあるが、問題文の「MCVが正常値を示す患者」という条件と、画像所見(赤血球の小型化、分布の左方シフト)が最も合致する。選びやすい理由:MCVが正常なのに、赤血球の分布が異常な点が鑑別のポイントとなるため、他の正球性貧血と混同しやすい。混同注意:自己免疫性溶血性貧血(ただしクームス試験陽性で鑑別可能)
国試ポイント
MCVが正常値であっても、赤血球直径分布の異常(二峰性、左方シフト)から遺伝性球状赤血球症を鑑別できること。特に溶血性貧血の鑑別診断において、球状赤血球の有無と、それに伴うRDWやMCHCの変化を理解しているか。
混同注意
MCVが正常であるため、再生不良性貧血や腎性貧血といった正球性貧血と混同しやすいが、画像のような赤血球直径分布の異常(特に左方シフトと二峰性)はこれらの疾患では典型的ではない。サラセミアや鉄欠乏性貧血は小球性貧血であり、MCVが低下するため、問題文の「MCVが正常値を示す患者」という条件とは合致しない。
次に同じ論点が出たら
同様の症例が出題された場合、MCVだけでなく、赤血球形態(特にRDWやMCHC)、浸透圧脆弱性試験の結果、溶血性貧血の症状(黄疸、脾腫など)の有無、そしてクームス試験の結果を確認して診断を確定する。
関連知識
遺伝性球状赤血球症の診断には、家族歴、浸透圧脆弱性試験(高頻度で陽性)、直接クームス試験陰性、MCHC上昇、脾腫の有無などが重要である。また、赤血球膜蛋白(スペクトリン、アンキリンなど)の異常が原因である。