子宮頸部擦過細胞診検査のPapanicolaou染色標本(別冊No. 10)を別に示す。この細胞に関連の深い病原体はどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
下図の細胞は、核の腫大と濃染、そして核周囲の明瞭な空胞(ハロー)を伴う扁平上皮細胞であり、これはHPV感染に特徴的な細胞であるコアロサイト(koilocyte)の形態です。コアロサイトの出現は、子宮頸部異形成、特に軽度異形成(CIN1)の診断基準の一つであり、HPV感染が子宮頸癌の主要な原因であることから、この病原体との関連が最も深いと言えます。
選択肢ごとの解説
- 1. カンジダ感染では、偽菌糸や出芽酵母がみられ、重症の場合には炎症性細胞が多数出現しますが、提示された画像のような核周囲の明るいハローを持つ異型細胞(コアロサイト)は特徴的ではありません。正しくは:カンジダは真菌であり、子宮頸部細胞診では偽菌糸や出芽酵母として観察される。選びやすい理由:膣炎の原因として一般的であるため、鑑別に挙がりやすい。混同注意:細菌性膣症やトリコモナスなどの他の性感染症。
- 2. ガードネレラ菌は細菌性膣症の原因菌で、細胞診ではクエ細胞(clue cell)として観察されることが特徴です。クエ細胞は細菌が扁平上皮細胞に付着して細胞質が顆粒状に見えるものであり、提示された画像に見られるような核異型や核周囲の明るいハローは示しません。正しくは:ガードネレラ菌は細菌性膣症の主要因であり、特徴的なクエ細胞として認められる。選びやすい理由:細菌性膣症は婦人科疾患として頻度が高いため、選択肢として考慮されやすい。混同注意:トリコモナスやカンジダなど、他の一般的な膣感染症。
- 3. トリコモナス原虫感染では、パパニコロウ染色でトリコモナス原虫自体(洋ナシ型、有鞭毛)や、それによる細胞変性(空胞変性、核腫大など)が見られることがありますが、下図のような明確な核周囲ハローを伴う異型細胞はトリコモナスの特異的所見ではありません。正しくは:トリコモナス原虫は特徴的な形態を持ち、細胞診ではしばしば炎症性の変化を伴う。選びやすい理由:性感染症の一つであり、子宮頸部細胞診の鑑別項目として挙げられるため。混同注意:細菌性膣症やカンジダ症。
- 4. 単純ヘルペスウイルス感染では、多核巨細胞、核内封入体、核のクロマチン辺縁化(マージネーション)などが特徴的ですが、下図に示されているような核周囲の明らかなハローを伴う細胞(コアロサイト)は単純ヘルペスウイルス感染の典型的な所見ではありません。正しくは:単純ヘルペスウイルス感染では、多核巨細胞、核内封入体、クロマチン辺縁化が特徴的な所見である。選びやすい理由:ウイルス感染による細胞変性として、類縁の病原体を想起する可能性があるため。混同注意:ヒトパピローマウイルス感染による細胞変性。
- 5. 正解。提示された画像は、核の腫大、濃染、不整、および核周囲の明るいハロー(空胞形成)を特徴とする細胞(コアロサイト)を示しています。これはヒトパピローマウイルス(HPV)感染に特徴的な細胞変性であり、子宮頸部異形成や癌の前駆病変として認識されます。
国試ポイント
子宮頸部細胞診におけるHPV感染の特徴的な細胞所見(コアロサイト)の識別能力と、その原因病原体に関する知識が問われています。鑑別すべきは、他の一般的な膣炎や性感染症の原因となる病原体による細胞の変化です。
混同注意
他のウイルス(ヘルペスウイルスなど)や細菌(ガードネレラなど)による細胞変性や炎症性変化と混同しやすいですが、核周囲ハローと核異型の組み合わせはHPV感染に特異性が高い。
次に同じ論点が出たら
同様の細胞診問題が出た場合は、まず細胞の核の形態(腫大、濃染、クロマチンパターン)と細胞質の変化(空胞、封入体)に注目し、次に特異的な細胞形態(コアロサイト、クエ細胞、多核巨細胞など)から病原体を特定します。
関連知識
子宮頸癌の発生メカニズム(HPV感染→異形成→浸潤癌)、HPVワクチンの種類と効果、子宮頸部細胞診におけるその他の異常細胞所見(扁平上皮内病変LSIL/HSIL、腺細胞異常など)。