28歳の男性。血液検査で異常を指摘されたため来院した。血液所見:白血球199,000/μL、赤血球228万/μL、Hb8.2 g/dL、血小板25.7万/μL。末梢血のMay-Giemsa染色標本の弱拡大写真(別冊No. 13A)と強拡大写真(別冊No. 13B)を別に示す。染色体検査で予想される所見はどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第71回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
この患者の血液所見は、白血球数の著しい増加(199,000/μL)、貧血、そして末梢血May-Giemsa染色標本において、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球、桿状核球、分葉核球といった骨髄球系の様々な段階の細胞が認められることから、慢性骨髄性白血病(CML)を示唆しています。CMLは特異的な染色体転座であるt(9;22)によってフィラデルフィア染色体(Ph染色体)が形成されることが特徴であり、この転座によりBCR-ABL融合遺伝子が生じます。したがって、染色体検査で予測される所見はt(9;22)です。
選択肢ごとの解説
- 1. t(8;21)はM2型急性骨髄性白血病(AML)に特徴的な染色体異常ですが、本症例では白血球の著しい増加(199,000/μL)と好塩基球の増加、骨髄球系の幼若細胞から成熟細胞までが連続的に認められる慢性骨髄性白血病(CML)の所見が強く示唆されており、AMLとは病態が異なります。正しくは:急性骨髄性白血病(特にM2型)の臨床像と骨髄像が提示される場合に選択されます。選びやすい理由:染色体転座は白血病の診断において重要であるため、一般的な選択肢として目につく可能性があります。しかし、具体的な血液像と臨床像と一致しません。混同注意:他の白血病で認められる染色体異常と混同する可能性があります。
- 2. 正解。本症例の血液所見は、著しい白血球増加(199,000/μL)、貧血(Hb 8.2g/dL)、そして末梢血像で骨髄球系細胞が幼若型から成熟型まで連続的に見られる(骨髄球、後骨髄球、桿状核球、分葉核球など)ことが慢性骨髄性白血病(CML)を示唆しています。特に、白血球の著しい増加と骨髄球系の多様な分化段階の細胞の出現はCMLに特徴的です。t(9;22)転座は、CMLの診断において非常に特異的であり、フィラデルフィア染色体(Ph染色体)として知られています。
- 3. t(12;21)は、小児の急性リンパ性白血病(ALL)に多い染色体異常であり、B細胞性ALLの予後良好因子とされます。本症例の血液所見は、リンパ系細胞の異常ではなく、骨髄球系の細胞の著しい増加と分化異常を示しており、ALLの病態とは一致しません。正しくは:小児の急性リンパ性白血病(B細胞性ALL)の臨床像と骨髄像が提示される場合に選択されます。選びやすい理由:こちらも白血病における一般的な染色体異常の一つですが、提示された血液所見とは明らかに異なります。混同注意:他の白血病で認められる染色体異常と混同する可能性があります。
- 4. t(15;17)は、急性前骨髄球性白血病(APL、M3型AML)に特徴的な染色体異常です。APLでは異常な前骨髄球が増加し、DICを合併しやすい特徴がありますが、本症例のように白血球が著しく増加し、骨髄球系細胞が多様に分化している所見とは一致しません。正しくは:急性前骨髄球性白血病の臨床像(特にDIC傾向)と特徴的な細胞(異常前骨髄球)が提示される場合に選択されます。選びやすい理由:急性骨髄性白血病の一種であり、白血病における重要な染色体異常であるため、知識としては知っている受験生が選びやすいかもしれません。しかし、画像所見と一致しません。混同注意:急性骨髄性白血病のM3型とM2型(t(8;21))の鑑別や、他の急性白血病の染色体異常と混同する可能性があります。
- 5. inv(16)は、M4eo型急性骨髄単球性白血病(AML-M4eo)に特徴的な染色体異常であり、好酸球の増加を伴うことが多いです。本症例の血液所見は、骨髄球系の著しい増加と分化異常を示すCMLの所見であり、M4eoとは病態が異なります。正しくは:好酸球増加を伴う急性骨髄単球性白血病(AML-M4eo)の臨床像と骨髄像が提示される場合に選択されます。選びやすい理由:特異的な染色体異常と病型が結びつく知識がある受験生にとって、選択肢として考慮される可能性があります。しかし、画像所見とは一致しません。混同注意:他の急性骨髄性白血病のサブタイプで認められる染色体異常と混同する可能性があります。
国試ポイント
慢性骨髄性白血病(CML)の主要な診断基準である血液所見と、それに伴う特徴的な染色体異常(フィラデルフィア染色体、t(9;22))を結びつけて理解しているかが問われています。特に、末梢血での白血球の著しい増加と、骨髄球系細胞の分化段階の多様性を画像から判断できる能力が重要です。他の白血病でみられる代表的な染色体異常との鑑別も必要です。
混同注意
各白血病の病型と、それに特徴的な染色体異常の組み合わせ。特に、急性骨髄性白血病(AML)のサブタイプ(M2, M3, M4eoなど)とそれぞれの染色体異常。
次に同じ論点が出たら
今後、同様のCMLの問題が出題された場合、白血球の著しい増加と骨髄球系細胞の多様な分化を示す末梢血像(特に幼若細胞の割合と成熟細胞の混在)を読み取れるか、そしてそれがt(9;22)(フィラデルフィア染色体)と関連しているかを判断する視点が重要になるでしょう。また、鑑別すべき他の白血病(特にAML)の血液像と、その染色体異常も確認する。
関連知識
慢性骨髄性白血病(CML)の病態生理(BCR-ABL融合遺伝子、チロシンキナーゼ阻害薬)、急性骨髄性白血病(AML)のFAB分類やWHO分類、各白血病の末梢血・骨髄像の特徴、およびそれらに対応する染色体異常。