血清鉄と鉄結合能の関係(別冊No. 14)を別に示す。この患者で考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第71回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
画像では、患者の血清鉄が著しく低値であるのに対し、総鉄結合能(TIBC)は健常人に比べて明らかに高値を示しています。この「血清鉄低値、TIBC高値」のパターンは、体内の鉄が不足し、より多くの鉄を運搬しようとしてトランスフェリン(TIBCの大部分を占める)が増加する鉄欠乏性貧血の典型的な所見です。
選択肢ごとの解説
- 1. 感染症に伴う炎症性貧血では、血清鉄は低値となりますが、サイトカインの影響で肝臓からのトランスフェリン産生が抑制されるため、TIBCは低値または正常範囲内となることが多く、本症例とは異なります。正しくは:感染症による炎症性貧血では、血清鉄は低値だが、TIBCも低値または正常となる。選びやすい理由:貧血症状があり、血清鉄が低値であるという点で共通する可能性があるため。混同注意:鉄欠乏性貧血。炎症性貧血では体内の鉄貯蔵は十分であるか増加していることが多い。
- 2. 尿毒症による貧血(腎性貧血)は、エリスロポエチンの産生不足が主な原因であり、鉄代謝異常が直接の原因ではありません。そのため、血清鉄やTIBCは通常、変動しません。ただし、慢性的な炎症状態を伴う場合は炎症性貧血と同様の所見を呈することもありますが、画像のようなTIBCの高値は典型的ではありません。正しくは:尿毒症による貧血では、血清鉄やTIBCは通常正常範囲である。選びやすい理由:慢性疾患による貧血の一種であり、鑑別疾患として挙げられるため。混同注意:鉄欠乏性貧血の画像所見を他の慢性疾患に伴う貧血と混同してしまう。
- 3. 溶血性貧血は赤血球の破壊が亢進することで起こる貧血であり、鉄の代謝とは直接関係ありません。むしろ、赤血球が破壊されることで鉄が放出され、血清鉄は高値となる傾向があります。TIBCは通常、正常範囲内です。正しくは:溶血性貧血では、血清鉄は高値または正常であり、TIBCは通常正常範囲である。選びやすい理由:貧血の鑑別疾患の一つであり、知識が不足していると選択してしまう可能性があるため。混同注意:鉄代謝異常を伴う貧血。
- 4. 正解。本患者の血清鉄は健常人に比べて明らかに低値(約1/3程度)であり、総鉄結合能(TIBC)は健常人に比べて高値(約1.5倍)を示しています。これは体内の鉄が不足しているために、鉄を運搬するタンパク質であるトランスフェリン(TIBCの大部分を占める)が増加し、より多くの鉄を結合しようとしている状態であり、鉄欠乏性貧血の典型的な所見です。
- 5. 再生不良性貧血は、骨髄の造血機能が障害され、赤血球、白血球、血小板の全てが減少する汎血球減少を特徴とします。鉄代謝異常が直接の原因ではないため、血清鉄やTIBCに特徴的な変化は見られません。血清鉄は正常またはやや高値となることがあります。正しくは:再生不良性貧血では、血清鉄やTIBCは通常正常範囲である。選びやすい理由:重篤な貧血の原因疾患の一つであり、鑑別疾患として考慮されるため。混同注意:骨髄機能不全による貧血と、鉄代謝異常による貧血の鑑別。
国試ポイント
鉄欠乏性貧血における血清鉄、TIBC、フェリチンの変動パターンを理解しているか。
混同注意
炎症性貧血では血清鉄が低値になりますが、TIBCも低値または正常範囲内にとどまるため、鉄欠乏性貧血との鑑別が可能です。貯蔵鉄であるフェリチンの値も鑑別に有用です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の症例が出題された場合は、血清鉄とTIBC(あるいはUIBC、トランスフェリン飽和度)の組み合わせを必ず確認し、さらにフェリチンの値を考慮して鑑別を行います。
関連知識
鉄欠乏性貧血では、血清鉄↓、TIBC↑、不飽和鉄結合能(UIBC)↑、トランスフェリン飽和度↓、フェリチン↓が典型的な所見です。これに対し、慢性疾患による貧血(炎症性貧血)では血清鉄↓、TIBC↓、フェリチン↑または正常となることが多いです。