肺炎が疑われた患者の喀痰のGram染色標本(別冊No. 15)を別に示す。分離菌はブドウ糖を発酵し、オキシダーゼ試験と運動性は陰性であった。考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
喀痰のグラム染色像(下図)には、グラム陰性桿菌が多数観察されています。この時点で、グラム陽性球菌であるStreptococcus pneumoniae (5) や、グラム染色で染まらないMycoplasma pneumoniae (3) は除外されます。残るはグラム陰性桿菌であるAcinetobacter baumannii (1)、Klebsiella pneumoniae (2)、Pseudomonas aeruginosa (4) です。追加の情報として、「ブドウ糖を発酵し、オキシダーゼ試験と運動性は陰性」とあります。Pseudomonas aeruginosaはブドウ糖非発酵(酸化)、オキシダーゼ陽性、運動性陽性であり、条件に合いません。Acinetobacter baumanniiはブドウ糖非発酵、オキシダーゼ陰性、運動性陰性ですが、ブドウ糖発酵性で条件に合いません。一方、Klebsiella pneumoniaeはブドウ糖を発酵し、オキシダーゼ陰性、運動性陰性のグラム陰性桿菌であるため、すべての条件に合致します。したがって、最も考えられるのはKlebsiella pneumoniaeです。
選択肢ごとの解説
- 1. 本菌はブドウ糖を発酵せず、オキシダーゼ陰性ですが、非発酵菌である点が特徴です。また、グラム陰性桿菌ではありますが、形態学的特徴や運動性、ブドウ糖発酵性からこの選択肢は誤りです。正しくは:Acinetobacter baumanniiはブドウ糖を非発酵です。選びやすい理由:グラム陰性桿菌である点や、肺炎の原因菌となる点で迷うかもしれませんが、ブドウ糖発酵性の違いが重要です。混同注意:グラム陰性桿菌の一種として混同しやすいですが、ブドウ糖発酵性で鑑別します。
- 2. 正解。Klebsiella pneumoniaeはグラム染色でグラム陰性桿菌として観察され(画像所見に一致)、ブドウ糖を発酵する腸内細菌科の一員です。また、オキシダーゼ試験陰性、運動性陰性という特徴もこの菌に合致します。莢膜を持つため、グラム染色で周囲に透明なハローが見えることが多く、これも所見と一致する可能性が高いです。
- 3. Mycoplasma pneumoniaeはグラム染色では染まらず(細胞壁がないため)、通常のグラム染色標本では観察できません。また、ブドウ糖を発酵しますが、菌の形態や特徴が大きく異なります。正しくは:Mycoplasma pneumoniaeはグラム染色では染まりません。選びやすい理由:肺炎の原因菌としては有名ですが、グラム染色所見から容易に鑑別できます。混同注意:グラム染色で染まる細菌と、細胞壁を持たないために染まらない菌の基本的な違いを混同しやすいです。
- 4. Pseudomonas aeruginosaはグラム陰性桿菌であり、運動性も持ちますが、ブドウ糖を非発酵(酸化)し、オキシダーゼ試験は陽性です。問題文の「ブドウ糖を発酵し、オキシダーゼ試験と運動性は陰性」という条件に反します。正しくは:Pseudomonas aeruginosaはブドウ糖を非発酵(酸化)し、オキシダーゼ試験陽性、運動性陽性です。選びやすい理由:グラム陰性桿菌で肺炎の原因となるため選択肢として魅力的に見えますが、ブドウ糖の発酵性、オキシダーゼ、運動性の違いで鑑別できます。混同注意:グラム陰性桿菌の中での発酵菌と非発酵菌、およびオキシダーゼ反応の違いを混同しやすいです。
- 5. Streptococcus pneumoniaeはグラム陽性球菌(連鎖球菌)であり、グラム染色で青紫色に染まるはずです。問題文の画像はグラム陰性桿菌を示しているため、この選択肢は誤りです。正しくは:Streptococcus pneumoniaeはグラム陽性球菌です。選びやすい理由:肺炎の主要な原因菌であり、名称が似ているため迷うかもしれませんが、グラム染色所見で大きく異なります。混同注意:グラム陽性菌とグラム陰性菌、球菌と桿菌といった基本的な鑑別点を混同しやすいです。
国試ポイント
本問題は、グラム染色所見と細菌の生化学的性状(ブドウ糖発酵性、オキシダーゼ反応、運動性)を組み合わせて、肺炎の原因菌を鑑別する能力を問うものです。グラム染色での菌の形態と染色性、主要なグラム陰性桿菌の発酵性と非発酵性、および関連する生化学試験の結果を正確に理解していることが重要です。
混同注意
グラム陰性桿菌の中でも、Enterobacteriaceae (腸内細菌科)に属する発酵菌と、PseudomonasやAcinetobacterなどの非発酵菌の区別が頻出です。特にブドウ糖の発酵性、オキシダーゼ反応、運動性の組み合わせで鑑別することが多いです。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まずグラム染色所見(グラム性、形態)で大まかに絞り込み、次にブドウ糖発酵性、オキシダーゼ反応、運動性などの生化学的性状を用いてさらに鑑別を進めます。特にグラム陰性桿菌に関しては、主要な菌種(E. coli, Klebsiella, Pseudomonas, Acinetobacterなど)のこれらの性状を確実に覚えることがポイントです。
関連知識
ブドウ糖発酵菌(例:大腸菌群、Klebsiella)は、ブドウ糖から酸とガスを産生します。非発酵菌(例:Pseudomonas、Acinetobacter)は、ブドウ糖を酸化経路で利用するか、全く利用しません。オキシダーゼ試験は、チトクロムcオキシダーゼの有無を調べ、Pseudomonasなどの非発酵菌の多くが陽性、腸内細菌科の菌は陰性です。運動性は、べん毛の有無によるもので、Klebsiellaは非運動性です。