下肢静脈超音波検査で大腿静脈に可動性を有する血栓を認めた。対応で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
大腿静脈に可動性血栓が認められた場合、その血栓が剥離して肺動脈に流れ込み、肺塞栓症を引き起こすリスクが非常に高いです。そのため、血栓がどれだけ上流(心臓側)まで進展しているかを正確に把握することは、肺塞栓症の危険度を評価し、抗凝固療法やフィルター留置などの適切な治療方針を決定する上で最も重要です。総腸骨静脈は下大静脈に連なる主要な静脈であり、そこまで血栓が進展しているか否かは、治療戦略に大きく影響します。
選択肢ごとの解説
- 1. 静脈血栓の評価において、面積狭窄率の算出は主要な指標ではありません。これは主に動脈の狭窄度評価に用いられるものです。正しくは:静脈血栓の評価では、血栓の進展範囲、閉塞度、可動性の有無などが重要視されます。選びやすい理由:血管の狭窄を評価する手法として知られているため、関連性があるように見えるかもしれません。混同注意:動脈硬化による動脈狭窄率の評価と混同している可能性があります。
- 2. 可動性血栓が存在する場合にミルキング法(下肢の筋肉を絞る操作)を行うと、血栓が剥がれて肺塞栓症を引き起こすリスクが非常に高いため、絶対に行ってはいけません。正しくは:ミルキング法は、血栓がない、または安定した血栓である場合において、静脈弁の機能評価や血液の駆出能を確認する際に用いられます。選びやすい理由:下肢静脈の血流評価や弁機能評価の一環として行われる手技であるため、検査項目の一つであると誤解しやすいです。混同注意:静脈弁不全の評価法と、血栓の有無や範囲、特に可動性血栓の評価法を混同している可能性があります。
- 3. 正解。大腿静脈に可動性の血栓がある場合、その血栓が剥離して肺動脈に流れ込み、肺塞栓症を引き起こすリスクが非常に高いため、血栓がどの程度上流(心臓側)まで進展しているか、特に総腸骨静脈などの主要な静脈まで及んでいるかを確認することは、病態の重症度評価と治療方針決定のために不可欠です。
- 4. 可動性の血栓がある部位に対して強い圧迫を加えることは、血栓を剥離させ、肺塞栓症を誘発する危険性があるため行ってはいけません。圧迫法は静脈が圧迫により潰れるかを確認することで血栓の有無を診断する目的で行われますが、血栓が確認された後は慎重に行う必要があります。正しくは:診断目的で静脈の圧迫性を確認する際は、血栓の存在を考慮し、穏やかに圧迫するか、血栓部位を避けて行うべきです。選びやすい理由:静脈血栓の診断に圧迫法が用いられるため、その手技を続行するものだと誤解する可能性があります。混同注意:血栓の有無を診断するための圧迫法と、すでに血栓が確認された後の評価やリスク管理を混同している可能性があります。
- 5. 静脈血栓の評価において、血栓部分の最高流速を測定することは、その後の治療方針を決定する上で直接的な意味合いが薄いです。可動性血栓の存在下では、血栓の進展範囲の確認が最も重要であり、流速測定よりも優先されます。正しくは:静脈血流の有無やパターン(呼吸性変動など)を確認するためにパルスドプラ法は有用ですが、血栓の「最高流速」を測定することは一般的ではありません。選びやすい理由:ドプラ法が血流評価に広く用いられるため、血管内の状態を評価する上で重要であると誤解しやすいです。混同注意:動脈血流評価における流速測定の重要性(例:狭窄度評価)と、静脈血栓における評価のポイントを混同している可能性があります。
国試ポイント
下肢静脈血栓症、特に可動性血栓を伴う場合の超音波検査における緊急性と、肺塞栓症予防のための適切な検査手順に関する知識を問う問題です。可動性血栓に対する危険な操作と、必須の評価項目を区別できるかがポイントとなります。
混同注意
血栓の診断目的で行う手技(圧迫法、ドプラ法)と、すでに診断された血栓の評価やリスク管理のための手技を混同しやすいです。また、動脈疾患の検査項目(狭窄率、最高流速)と静脈疾患の検査項目、そして安定した血栓や弁不全の評価法と、可動性血栓に対する対応を混同する可能性があります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合、「可動性血栓」「浮遊血栓」などのキーワードに注目し、肺塞栓症のリスクを最優先に考えた対応が問われていると判断します。特に「上流への進展範囲の確認」が重要視されることが多いです。また、血栓を刺激するような操作(強い圧迫、ミルキングなど)は危険であると判断できるかを確認します。
関連知識
深部静脈血栓症(DVT)の診断基準(非圧迫性、内部エコー、血流欠損など)、DVTによる肺塞栓症(PE)のリスク因子と症状、可動性血栓・浮遊血栓・遊離血栓の危険性、DVTにおける治療法(抗凝固療法、血栓溶解療法、下大静脈フィルター)、超音波検査におけるドプラ法の原理と応用(パルスドプラ、カラードプラ)について理解しておく必要があります。