食道のPAS染色標本(別冊No. 9A)とα-アミラーゼ消化後のPAS染色標本(別冊No. 9B)を別に示す。消化試験で同定されるのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
PAS染色で陽性を示す物質のうち、α-アミラーゼ(ジアスターゼ)による消化でその反応が消失または減弱するものはグリコーゲンです。食道の上皮細胞にはグリコーゲンが豊富に存在し、図AでPAS陽性を示し、図B(α-アミラーゼ消化後)でその陽性が消失していることから、この消化試験で同定される物質はグリコーゲンであると判断できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 線維素はフィブリンとも呼ばれ、PAS染色では通常は薄いピンク色に染まることがあります。しかし、α-アミラーゼは炭水化物分解酵素であり、線維素はタンパク質であるため、アミラーゼ消化の影響を受けません。したがって、アミラーゼ消化試験で線維素が同定されることはありません。正しくは:線維素はα-アミラーゼ消化によって変化しないタンパク質です。選びやすい理由:炎症や損傷部位によく見られる物質であり、組織染色で観察されることがあるため、鑑別の対象となりやすいですが、酵素消化試験の特異性を理解していれば誤りと判断できます。混同注意:他のタンパク性沈着物(アミロイドなど)と混同することがあります。アミラーゼ消化試験では炭水化物とタンパク質の違いが重要です。
- 2. 中性粘液はPAS染色で陽性を示しますが、その主成分はムコ多糖(グリコプロテイン、プロテオグリカンなど)です。これらのうち、唾液腺や胃腺などに含まれる中性ムチンはジアスターゼ(α-アミラーゼ)消化によって減弱しますが、食道に存在する中性粘液の多くはα-アミラーゼに対して完全には感受性を示さないか、消化性が異なります。特に食道腺のムチンはアミラーゼ抵抗性の成分を含むことがあります。選択肢として最も適切なのはグリコーゲンです。正しくは:中性粘液の一部はα-アミラーゼ消化で消失しますが、食道において最も明確に消化され、PAS陽性を示すのはグリコーゲンです。選びやすい理由:PAS染色で陽性を示し、消化管にも存在するため、正しい選択肢と誤認されやすいです。しかし、食道におけるアミラーゼ消化試験の主要な対象はグリコーゲンです。混同注意:酸性粘液(PAS陽性で、アルシアン青にも陽性)や、アミラーゼ消化性の有無を正確に覚えていない場合に混同しやすいです。
- 3. アミロイドは異常なタンパク質の沈着物であり、コンゴーレッド染色で特徴的なピンク色を示し、偏光顕微鏡下で緑色の二重屈折を示します。PAS染色では通常、弱陽性を示すこともありますが、主成分はタンパク質であるため、炭水化物分解酵素であるα-アミラーゼによる消化の影響は受けません。正しくは:アミロイドはα-アミラーゼ消化によって変化しないタンパク質です。選びやすい理由:PAS染色で染まることもあるため、他のPAS陽性物質と混同しやすいですが、アミロイドの診断はコンゴーレッド染色が主であり、アミラーゼ消化の対象ではありません。混同注意:PAS陽性を示す他の非グリコーゲン性物質、特にタンパク質性の沈着物(線維素など)と混同しやすいです。酵素消化試験の特異性を理解することが重要です。
- 4. 正解。グリコーゲンは多糖類であり、PAS染色で濃い赤紫色に陽性を示します。α-アミラーゼ(ジアスターゼ)はグリコーゲンを分解する酵素であるため、α-アミラーゼ消化処理を行うと、グリコーゲンが除去され、PAS染色での陽性反応が消失または著しく減弱します。食道の上皮細胞にはグリコーゲンが豊富に存在するため、本問題の所見はグリコーゲンの消失を示しており、この試験で同定されるのはグリコーゲンです。正しくは:この選択肢は正しいです。
- 5. リポフスチンは細胞内に蓄積する「消耗色素」とも呼ばれる脂質含有性の色素であり、PAS染色で弱陽性を示すことがあります。しかし、リポフスチンはα-アミラーゼによる分解を受けません。その陽性反応は主に脂質やタンパク質の複合体によるものであり、炭水化物分解酵素では除去されません。正しくは:リポフスチンはα-アミラーゼ消化によって変化しない脂質関連色素です。選びやすい理由:PAS染色で陽性を示すことがあるため、誤って選択される可能性がありますが、酵素消化試験の特異性を理解していれば誤りと判断できます。混同注意:他のPAS陽性物質、特に色素性沈着物と混同しやすいです。リポフスチンは一般的にチーリ・ビオラ法などの特殊染色で確認されます。
国試ポイント
本問題は、組織標本の特殊染色と酵素消化試験に関する知識を問うものです。特に、PAS染色が示す物質(グリコーゲン、中性粘液など)と、α-アミラーゼが特異的に分解する物質(グリコーゲン)の組み合わせを正確に理解しているかが重要です。画像問題として、消化前後の比較から原因物質を特定する能力が試されます。
混同注意
PAS染色で陽性を示す他の物質(中性粘液、酸性粘液、アミロイド、リポフスチンなど)と混同しやすいです。それぞれの物質がPAS染色で陽性を示す理由、およびアミラーゼ消化に対する感受性の有無を明確に区別できる必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず提示された画像でPAS染色陽性物質の有無と、酵素消化による変化を確認します。次に、使用された酵素が何であるか(今回はα-アミラーゼ)を確認し、その酵素が特異的に分解する物質を思考します。その上で、選択肢にある物質の中から最も適切なものを選択します。特に、PAS陽性を示す他の物質とアミラーゼ消化による変化の有無を正確に区別できるかがポイントとなります。
関連知識
PAS染色(過ヨウ素酸シッフ反応)の原理、PAS陽性を示す主な生体物質(グリコーゲン、中性ムチン、基底膜、一部の真菌など)。α-アミラーゼ(ジアスターゼ)消化試験の意義と、それがグリコーゲンに特異的であること。各種消化酵素(ヒアルロニダーゼ、ノイラミニダーゼなど)とその対象物質。食道組織の組織学的特徴(重層扁平上皮とグリコーゲン含有)。