リンパ節の術中迅速組織標本の弱拡大写真(別冊No. 8A)と強拡大写真(別冊No. 8B)を別に示す。標本にみられる不良の原因はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
術中迅速診断では、組織を凍結させて薄切し、染色するという工程を踏む。提示された画像では、組織が断裂していたり、シワが寄っていたり、欠損が生じていたりする。これらは薄切時のナイフの切れ味の悪さ、薄切速度の不適切さ、あるいは凍結が不十分な組織を無理に薄切したことなどに起因する典型的な薄切アーチファクトである。特に、組織の縦方向の亀裂や、部分的な欠損、圧縮によるシワは、薄切の際に物理的な力が不適切にかかったことを示唆している。
選択肢ごとの解説
- 1. 切り出し不良は、診断に必要な組織が欠けていたり、目的外の組織が含まれたりする原因となるが、提示された写真のアーチファクト(氷晶による組織の破壊や薄切時の裂け目など)とは直接関連しない。正しくは:切り出しは適切な部位を迅速に採取し、適切な大きさに整える必要がある。選びやすい理由:標本作成の初期段階であるため、あらゆる不良の原因として考えやすい。混同注意:組織採取や処理の初期段階全般と混同しやすい。
- 2. 凍結が不適切であると、氷晶の形成によって組織構造が破壊され、細胞が膨化したり組織が裂けたりするアーチファクトが生じる。しかし、今回の画像で観察される主な不良は、薄切に伴う組織の欠損や破綻、シワなどであり、凍結不良による広範な氷晶アーチファクトとはやや異なる。正しくは:凍結は迅速に行い、氷晶の形成を最小限に抑える必要がある。選びやすい理由:迅速診断では凍結が不可欠であり、凍結が不良の原因となることは多いため、選択肢として非常に魅力的。混同注意:薄切不良と凍結不良によるアーチファクトは類似することがあり、区別が難しい場合がある。
- 3. 正解。示された画像では、組織の途切れ、欠損、断裂、圧縮によるシワ、あるいはナイフマークと推測される線状のアーチファクトが顕著にみられる。これらはすべて、薄切(ミクロトームでの組織のスライス)の際に生じる典型的な不良(ナイフの切れ味、薄切速度、組織の固定状態など)である。選びやすい理由:薄切は標本作製のデリケートな工程であり、多くのアーチファクトが生じやすい。混同注意:凍結不良による組織の脆さも薄切不良の一因となるため、両者が混同されやすい。
- 4. 固定不良は、組織の自己融解、細胞の変性、染色性の悪化などを引き起こすが、術中迅速診断では未固定組織を凍結切片として用いるため、通常は固定の工程は含まれない。したがって、画像にみられる不良の原因とはなりえない。正しくは:固定は細胞や組織の形態を保つために適切に行う必要がある(通常迅速診断では行わない)。選びやすい理由:通常の病理組織診断では固定は極めて重要な工程であり、不良の原因となりうるため、知識として選びやすい。混同注意:一般的な病理組織標本作製プロセスにおける不良と、術中迅速診断のプロセスにおける不良を混同しやすい。
- 5. 染色不良は、細胞や組織の染まり方(濃淡、均一性、特定成分の染色の有無など)に影響するが、画像で示されている組織自体の構造的な破壊や欠損とは直接関係しない。正しくは:染色は適切な試薬と手順で行い、均一で鮮明な染色結果を得る必要がある。選びやすい理由:標本の最終的な見え方に関わるため、不良の原因として考えやすい。混同注意:組織の構造的な問題と、染色液や染色プロセスの問題を混同しやすい。
国試ポイント
術中迅速病理診断の標本作製過程における、各工程(切り出し、凍結、薄切、染色)で生じるアーチファクトの種類と原因を正確に理解しているかを問う問題。特に、迅速診断特有の「固定しない」という点と、凍結と薄切で生じやすいアーチファクトの区別が重要。
混同注意
凍結不良と薄切不良によるアーチファクトは、組織の脆さや破壊という点で似た所見を呈することがあり、しばしば混同されやすい。しかし、凍結不良は氷晶による細胞の膨化や組織全体の破壊、薄切不良は物理的な力による組織の裂け、断裂、シワなどが主な特徴となる。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず術中迅速診断のプロセスを正確に想起し、その上で各工程で生じうる特有のアーチファクトを詳細に確認する。特に画像所見を注意深く観察し、構造的な破壊、細胞の変性、染色性の異常といった不良の種類を判別することが重要。
関連知識
凍結切片の薄切は、病理診断の中でも高度な技術を要する。ナイフの刃の角度、温度、薄切速度、組織の向きなどが適切でないと、様々なアーチファクトが発生し、診断を困難にする。主なアーチファクトには、ナイフマーク(線状の傷)、チャッター(厚さの変動による縞模様)、組織のシワ、組織の破綻や欠損、氷晶アーチファクト(凍結不良に起因)などがある。