手の筋力低下を認める患者における正中神経の運動神経伝導検査の記録(別冊No. 5)を別に示す。誤っているのはどれか。なお、図中の破線は正常波形を示す。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
下図の患者波形(実線)は、正常波形(破線)と比較して、刺激からCMAPの基線から最初の偏位までの時間が明らかに短縮している。これは遠位潜時が短縮していることを示しているため、「遠位潜時が延長している」という記述は誤りである。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。下図の患者波形(実線)の遠位潜時は、刺激からCMAPの基線から最初の偏位までの時間が正常波形(破線)と比較して明らかに短縮しており、延長しているという記述は誤りである。正しくは:遠位潜時は短縮している。選びやすい理由:遠位潜時の測定部位や正常値の範囲を正確に把握していないと、波形だけを見て判断を誤りやすい。混同注意:遠位潜時と他の伝導パラメータ(伝導速度、CMAP振幅など)の変化と混同する可能性がある。
- 2. 患者波形(実線)の潜時は正常波形(破線)と比較して短縮しており、これは神経伝導速度が速くなっていることを示唆する。伝導速度低下の所見とは異なる。正しくは:伝導速度は亢進している(または正常と異なる)。選びやすい理由:一般的な神経障害では伝導速度低下がよく見られるため、この選択肢が正しいと思われがち。しかし、図の波形は伝導速度が速いことを示している。混同注意:脱髄性病変による一般的な伝導速度低下のパターンと、図に見られるような特殊な変化を混同しやすい。
- 3. 伝導ブロックは、近位刺激と遠位刺激でCMAP振幅が大きく低下する現象だが、下図では刺激部位による振幅の大きな変化は示されていない。また、波形の振幅自体は減少しているが、これは伝導ブロックとは異なる。正しくは:伝導ブロックはみられない(またはこの図だけでは判断できない)。選びやすい理由:複合筋活動電位(CMAP)の振幅低下が見られるため、伝導ブロックと誤解しやすい。しかし、伝導ブロックは近位と遠位の刺激部位によるCMAP振幅の有意な低下で判断される。混同注意:複合筋活動電位(CMAP)の振幅低下と伝導ブロックを混同する。
- 4. 正常波形(破線)と比較して、患者波形(実線)はCMAPの波形が広がっており、時間的分散が認められる。これは神経線維の伝導速度のばらつきを示す所見である。正しくは:異常な時間的分散は認められない。選びやすい理由:波形の広がりが目立つため、時間的分散の判断は比較的容易だが、その異常性を見落とす可能性もある。混同注意:CMAPの振幅低下や潜時延長といった他の波形異常と混同することがある。
- 5. 患者波形(実線)の複合筋活動電位(CMAP)の最大振幅は、正常波形(破線)と比較して明らかに低下している。これは軸索障害や神経筋接合部疾患でよく見られる所見である。正しくは:複合筋活動電位(CMAP)の振幅は正常である(または低下していない)。選びやすい理由:波形振幅の低下は視覚的に分かりやすいため、これが正しい判断であることを確信しやすい。しかし、CMAP振幅の低下は様々な神経疾患で見られるため、鑑別には他の所見も必要となる。混同注意:CMAPの振幅と、遠位潜時や伝導速度といった他のパラメータを混同する。
国試ポイント
神経伝導検査の波形判読能力が問われている。特に、遠位潜時、伝導速度、伝導ブロック、時間的分散、CMAP振幅といった主要な指標の定義と、それらが波形上でどのように表現されるかを正確に理解している必要がある。
混同注意
遠位潜時と近位潜時の区別、伝導速度低下と伝導ブロックの違い、CMAP振幅低下の原因(軸索障害、脱髄、伝導ブロック、神経筋接合部障害)を混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
今後同様の画像問題が出た場合、まず波形全体の変化(潜時、振幅、波形持続時間)を概観し、正常波形との比較を明確に行う。次に各選択肢が示す所見が波形と合致するかを一つ一つ確認する。特に潜時の判断は、刺激点からCMAPの開始までの時間を正確に読み取ることが重要である。
関連知識
神経伝導検査の測定原理、運動神経と感覚神経の測定方法、各パラメータ(遠位潜時、CMAP振幅、伝導速度、時間的分散、F波)の臨床的意義、代表的な神経疾患(手根管症候群、ギラン・バレー症候群、ALSなど)における神経伝導検査所見。