透過型電子顕微鏡標本作製法で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第72回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
超薄切片は、ウルトラミクロトームで切り出された後、水面に浮かんだ状態で、電子顕微鏡観察用の金属製グリッドにピックアップされるのが標準的な手順である。
選択肢ごとの解説
- 1. 一般的な透過型電子顕微鏡(TEM)用のエポキシ樹脂は、酸無水物(硬化剤)と混合し、加熱することで重合が進みます。酸性の環境「だけで」重合するわけではありません。正しくは:封入に用いるエポキシ樹脂は、硬化剤と混合し、加熱により重合する。選びやすい理由:酸無水物が硬化剤として使われることから、漠然と「酸」が関与するというイメージで選んでしまう可能性がある。混同注意:酸無水物硬化剤と、酸単体での重合を混同。
- 2. 金属イオン蒸着(金や白金など)は、主に走査型電子顕微鏡(SEM)において、試料の導電性を高めてチャージアップを防ぎ、鮮明な画像を得るために行われる処理です。透過型電子顕微鏡(TEM)の試料では通常行いません。正しくは:走査型電子顕微鏡での観察前に、試料の表面に金属を蒸着させる。選びやすい理由:電子顕微鏡全般の処理と誤解し、「金属」というキーワードから選びやすい。混同注意:走査型電子顕微鏡(SEM)の試料作製と透過型電子顕微鏡(TEM)の試料作製。
- 3. 組織を細切して固定液の浸透を良くする作業(一次固定前または一次固定中)が最も重要です。後固定は一次固定の後に行われ、この段階では組織は既に固定されています。後固定液中での細切は、固定効果の均一性を確保するためではなく、通常は一次固定前または一次固定液中に行われます。正しくは:組織を1mm角程度に細かく切り出す作業は、一次固定液の中で、または一次固定の前に実施する。選びやすい理由:固定液中で組織を扱うことに違和感がなく、後固定も固定の一部であるため選んでしまう可能性がある。混同注意:固定前処理と後固定処理のタイミングや目的。
- 4. TEM用のブロックから超薄切片を作製する前に、全体像や目的部位の確認のために作られる半薄切片(0.5~2μm程度)は、通常トルイジンブルーで染色され、光学顕微鏡で観察されます。ビクトリアブルーは神経線維や弾性線維の染色に用いられることがありますが、一般的なTEMブロックのスクリーニング染色ではありません。正しくは:光顕で組織の全体像を確認するための半薄切片は、トルイジンブルーで染色する。選びやすい理由:「染色」というキーワードと「光顕用切片」という部分が正しく、特定の染色法を知らないと、選んでしまう可能性がある。混同注意:一般的な半薄切片染色(トルイジンブルー)と、特定の組織染色(ビクトリアブルーなど)。
- 5. 正解。超薄切片(通常、厚さ50~100nm)はウルトラミクロトームで切り出された後、水面に浮いた状態で、TEM観察用に設計された専用の金属製グリッド(例: 銅製)ですくい取られ、固定されます。これがTEM観察の基本的な準備手順です。
国試ポイント
透過型電子顕微鏡(TEM)の標本作製における各工程の目的と、それに用いられる試薬や器具、あるいはそのタイミングを正確に理解しているかを問う問題。特に、SEMとの違いや光顕との連携についても知識が求められる。
混同注意
走査型電子顕微鏡(SEM)の標本作製法、一般的な光学顕微鏡の標本作製法、各種固定液や染色の具体的な目的と適用範囲。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、TEM標本作製における各工程の目的や、特定の試薬(固定液の種類、脱水剤、包埋剤、電子染色剤)がどの段階で使われるかを問う問題、あるいはSEMとTEMの標本作製法の違いを比較させる問題に注意する。
関連知識
TEM標本作製の手順:固定(グルタールアルデヒド、オスミウム酸)→脱水(エタノール、アセトン)→置換・包埋(エポキシ樹脂)→超薄切(ウルトラミクロトーム)→電子染色(酢酸ウラン、クエン酸鉛)→グリッド回収→観察。SEM標本作製の手順:固定→脱水→乾燥(臨界点乾燥など)→金属蒸着→観察。光顕用半薄切片の染色:トルイジンブルー。