微生物検査において担当医師への緊急連絡を要する検査結果はどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第71回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・5番
解説
緊急連絡を要する検査結果は、患者の生命に関わる重篤な感染症を示唆するもの、または公衆衛生上迅速な対応が必要な感染症である。選択肢2の腸管出血性大腸菌は、溶血性尿毒症症候群などの重篤な合併症や集団感染のリスクがあり、感染症法上の届出対象でもある。選択肢5の血液からの化膿レンサ球菌検出は、通常無菌である血液から重篤な全身性感染症(敗血症、劇症型溶血性レンサ球菌感染症)の原因菌が検出されたことを意味し、生命に関わる緊急事態である。
選択肢ごとの解説
- 1. MRSAの鼻腔からの検出は、多くの場合、MRSA保菌状態を示すものであり、直ちに患者の生命に関わる緊急事態とは限らない。院内感染対策上重要な情報ではあるが、緊急連絡を要するほどの切迫性はない。正しくは:緊急連絡を要するのは、通常、MRSAが血液や髄液など通常無菌であるべき検体から検出された場合、あるいは重篤な感染症(例:敗血症、肺炎)の原因と判断される場合である。選びやすい理由:MRSAが非常に問題視される菌であり、院内感染対策上重要であるため、緊急性が高いと誤解しやすい。混同注意:MRSAが検出された部位が鼻腔という「保菌」の可能性が高い部位であることと、血液など「感染」を強く示唆する部位であることの違い。
- 2. 正解。腸管出血性大腸菌は、溶血性尿毒症症候群(HUS)などの重篤な合併症を引き起こす可能性があり、感染症法上の届出対象である。患者の治療方針決定や公衆衛生上の観点から、検出時には速やかに担当医に連絡する必要がある。
- 3. 淋菌は性感染症の起因菌であり治療が必要だが、通常、その検出は直ちに患者の生命に関わる緊急事態ではない。治療開始の必要性は高いが、緊急連絡を要するほどの切迫性はない。正しくは:検出された場合、適切な抗菌薬による治療が速やかに開始されるべきだが、「緊急連絡」というよりは「速やかな情報共有」に分類される。選びやすい理由:性感染症であるため、公衆衛生上の重要性やパートナーへの感染拡大防止の観点から、緊急性があると感じるかもしれない。混同注意:感染症法上の緊急性の高い届出感染症(全数把握対象など)との違い。
- 4. Mycobacterium aviumは非結核性抗酸菌(NTM)の一種であり、慢性的な肺疾患の原因となることが多いが、結核菌に比べて感染拡大のリスクが低く、急性期の重篤な病態を伴うことは稀であるため、緊急連絡を要するほどではない。正しくは:非結核性抗酸菌症の診断には重要だが、緊急を要する状況は少ない。選びやすい理由:「抗酸菌」という言葉から結核菌を連想し、緊急性が高いと誤解する可能性がある。混同注意:結核菌(Mycobacterium tuberculosis)と非結核性抗酸菌(NTM)の病原性・伝染性・緊急性の違い。
- 5. 正解。血液は通常無菌の検体であり、そこから化膿レンサ球菌(A群溶血性レンサ球菌)が検出された場合、敗血症や劇症型溶血性レンサ球菌感染症(致死率の高いSTSS)など、重篤な全身性感染症の可能性が非常に高い。直ちに抗菌薬治療を開始する必要があるため、緊急連絡が必須である。
国試ポイント
微生物検査において、検出された菌種と検体の組み合わせから、その感染症が患者の生命に与える影響や公衆衛生上の重要性を判断し、緊急性の高い病態を識別できるかどうかが問われている。特に、通常無菌である検体からの病原菌検出や、感染症法上の届出対象である病原体の検出に注意が必要である。
混同注意
保菌状態を示す検出(鼻腔MRSA)と感染症発症を示す検出、または一般的に治療を要する感染症(淋菌感染症、NTM症)と直ちに生命に関わる重篤な感染症との区別が混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、検出された菌種が「重篤な合併症を引き起こす可能性が高いか」、または「通常無菌であるべき検体から検出されたか」、さらに「感染症法上の緊急性の高い届出対象か」という視点で判断する。
関連知識
感染症法における届出感染症の分類(特に全数把握対象)、各菌種の病原性、感染経路、および通常無菌であるべき検体(血液、髄液など)からの病原菌検出の意義。