過去約2か月の平均血糖値から想定されるHbA1c値より測定値が高値になるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第66回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
HbA1cは赤血球中のヘモグロビンが糖化されたものであり、その測定値は赤血球の寿命(約120日)に強く依存し、過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映するとされます。赤血球の寿命が短縮する病態(溶血性貧血、腎性貧血、出血後、輸血後など)では、糖化の機会が減るため、実際の血糖値よりもHbA1cは低値を示します。一方、鉄欠乏性貧血では赤血球寿命が延長する傾向があることや、赤血球形成過程での糖化促進などにより、HbA1cが実際の血糖値よりも高値を示すとされています。ただし、個々の症例や重症度によって変動があり、一概には言えない場合もあります。
選択肢ごとの解説
- 1. 輸血後は、古い赤血球が新しい赤血球に置き換わるため、HbA1cは実際よりも低値を示す傾向があります。正しくは:輸血後はHbA1cが低値を示す。選びやすい理由:貧血に関連する状態であり、血液成分の変化がHbA1cに影響を与えることは知られているため、深く考えずに選んでしまう可能性がある。混同注意:赤血球の寿命が短縮する病態(溶血性貧血など)と、血液が入れ替わる病態(輸血後、出血後)でのHbA1cの変化方向を混同しやすい。
- 2. 腎性貧血では、赤血球寿命が短縮する傾向があるため、HbA1cは実際よりも低値を示す傾向があります。正しくは:腎性貧血ではHbA1cが低値を示す。選びやすい理由:貧血の一種であり、赤血球が関連するためHbA1cへの影響は考えやすい。ただし、影響の方向性を間違えやすい。混同注意:赤血球寿命の変化がHbA1cに与える影響の方向性を混同しやすい。
- 3. 大量出血後は、古い赤血球が失われ、その後に産生される新しい赤血球が相対的に増加するため、HbA1cは実際よりも低値を示す傾向があります。正しくは:大量出血後はHbA1cが低値を示す。選びやすい理由:輸血後と同様に血液成分の変化がHbA1cに影響を与えることは明らかであるため、影響の方向性を誤って選んでしまう可能性がある。混同注意:輸血後と同様に、血液の入れ替わりによるHbA1cの変化方向を混同しやすい。
- 4. 溶血性貧血では、赤血球の寿命が短縮するため、ヘモグロビンが糖化される期間が短くなり、HbA1cは実際よりも低値を示す傾向があります。正しくは:溶血性貧血ではHbA1cが低値を示す。選びやすい理由:貧血の一種として知られており、赤血球の異常がHbA1cに影響を与えることは理解しやすいが、影響の方向性を間違えやすい。混同注意:赤血球寿命が短縮する病態ではHbA1cが低値を示すことを正確に理解していない場合、影響の方向性を混同しやすい。
- 5. 正解。鉄欠乏性貧血では、赤血球の寿命は正常または延長する傾向があり、さらに赤血球が新生される過程で糖化が進みやすいことなどから、HbA1c値が実際の平均血糖値よりも高値を示すことがあります。特に小赤血球が増加し、単位赤血球あたりの糖化率が上昇する可能性も指摘されています。混同注意:他の貧血のタイプ(溶血性貧血や腎性貧血など)でのHbA1cの低下と混同しやすい。それぞれの貧血が赤血球の寿命や成熟にどのように影響するかを正確に理解する必要がある。
国試ポイント
HbA1cは糖尿病の血糖コントロール指標として非常に重要ですが、赤血球の寿命や状態に影響を与える様々な病態でその測定値が実際の血糖値を正確に反映しないことがある点を問う問題です。特に、赤血球寿命の短縮によるHbA1cの低値化と、鉄欠乏性貧血におけるHbA1cの高値化のパターンを理解しているかが問われます。
混同注意
各種貧血(溶血性、腎性、鉄欠乏性など)、出血、輸血といった赤血球の状態に影響を与える因子が、HbA1cの測定値にどのように影響するか(高値になるか低値になるか)を混同しやすい。特に、赤血球寿命の短縮がHbA1cを低くすること、鉄欠乏性貧血がHbA1cを高くすることが逆転して記憶されやすい。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず設問が「高値になるもの」を求めているのか「低値になるもの」を求めているのかを正確に確認する。次に、各選択肢の病態が赤血球の寿命を短縮させるか、延長させるか、あるいは糖化のプロセスにどのような影響を与えるかを想起し、HbA1cの変化の方向性を判断する。
関連知識
HbA1cの生理的意義、測定原理、糖尿病診断基準、糖尿病合併症の管理、赤血球の生成と寿命、各種貧血の分類と病態生理。