分子標的薬投与の決定にERBB2(HER2)増幅の検索を行うのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
乳癌では、ERBB2(HER2)遺伝子の増幅またはタンパク質の過剰発現が、抗HER2分子標的薬(トラスツズマブ、パルツズマブ、T-DM1など)の適応を決定する上で不可欠なバイオマーカーです。これらの薬剤はHER2陽性乳癌患者の予後を著しく改善します。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。乳癌では、ERBB2(HER2)遺伝子の増幅やタンパク質過剰発現は、治療方針、特に抗HER2分子標的薬(例:トラスツズマブ)の選択に不可欠なバイオマーカーです。
- 2. 卵巣癌において、ERBB2(HER2)は標準的な分子標的薬選択のための主要なバイオマーカーではありません。BRCA遺伝子変異やHRD(相同組換え修復欠損)などがより重要視されます。正しくは:卵巣癌では、BRCA遺伝子変異や相同組換え修復欠損(HRD)の検索が、PARP阻害薬などの分子標的薬の適用決定に重要です。選びやすい理由:がん種によってはHER2陽性を示す例も報告されているため、知識が曖昧だと迷う可能性があります。混同注意:HER2の役割が乳癌や胃癌で確立されているため、他の様々ながん種におけるHER2発現の基礎研究段階の知見と混同する可能性があります。
- 3. 子宮頸癌の分子標的薬の適用決定において、ERBB2(HER2)増幅は一般的に重要ではありません。HPV感染が主な原因であり、血管新生阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬などが検討されます。正しくは:子宮頸癌では、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染や、PD-L1発現、あるいは血管新生阻害薬の適用が、治療選択において重要視されます。選びやすい理由:他のがん種と同様に、一部の患者でHER2発現がみられることがあるため、特定の治療との関連性が不明確な場合に誤って選ぶかもしれません。混同注意:HPV感染と関連する発癌メカニズムや、免疫療法の適用に関する知識と混同する可能性があります。
- 4. 子宮体癌の分子標的薬の選択において、ERBB2(HER2)増幅は主要な検査項目ではありません。マイクロサテライト不安定性(MSI)や特定の遺伝子変異などがより注目されます。正しくは:子宮体癌では、マイクロサテライト不安定性(MSI)の有無や特定の遺伝子変異(例:PTEN, CTNNB1, POLE)の検索が、分子標的薬の適用決定に重要です。選びやすい理由:子宮体癌の一部タイプでHER2の過剰発現が見られることがありますが、乳癌ほど治療選択に直結する明確な指標ではありません。混同注意:MSIやPD-L1発現など、子宮体癌で重要視される他のバイオマーカーとHER2の役割を混同する可能性があります。
- 5. 前立腺癌の分子標的薬の適用決定に、ERBB2(HER2)増幅は通常用いられません。アンドロゲン受容体経路の阻害や、BRCA遺伝子変異などのDNA修復遺伝子異常が治療標的となります。正しくは:前立腺癌では、アンドロゲン受容体(AR)経路阻害薬の選択や、DNA修復関連遺伝子(例:BRCA1/2)の変異検索が、分子標的薬の適用決定に重要です。選びやすい理由:他の固形癌と同様に、稀にHER2発現を示す報告があるため、全体的な知識が不足していると誤って選ぶ可能性があります。混同注意:アンドロゲン受容体やBRCAなどの、前立腺癌で実際にターゲットとなる分子とHER2を混同する可能性があります。
国試ポイント
分子標的薬とその標的となる遺伝子・タンパク質、およびそれらの適応となる癌種の組み合わせを正確に理解しているかを問う問題です。特に、HER2と乳癌・胃癌の関連は非常に基本的な知識として頻出します。
混同注意
HER2が関与するがん種として、乳癌の他に胃癌や一部の大腸癌なども挙げられますが、本問の選択肢には含まれていません。HER2の発現・増幅が「治療標的」として確立されているがん種と、研究段階や一部のサブタイプでのみ報告されているがん種とを混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出た場合、他の分子標的薬(例:EGFR阻害薬、ALK阻害薬、PD-1/PD-L1阻害薬、PARP阻害薬など)とその適応となる癌種、および関連するバイオマーカーを問われる可能性が高いです。例えば、EGFR遺伝子変異と非小細胞肺癌、ALK融合遺伝子と非小細胞肺癌、MSI/PD-L1と大腸癌/胃癌など。
関連知識
HER2(Human Epidermal growth factor Receptor 2)は、EGFRファミリーに属する受容体型チロシンキナーゼであり、細胞の増殖、分化、生存に関与します。HER2遺伝子増幅やタンパク質過剰発現は、細胞の異常増殖を引き起こし、がん化を促進します。抗HER2分子標的薬には、モノクローナル抗体であるトラスツズマブ(ハーセプチン)、パルツズマブ(パージェタ)、抗体薬物複合体であるトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1、カドサイラ)などがあります。胃癌でもHER2増幅が認められることがあり、同様に抗HER2療法が適用される場合があります。