67歳の男性。汎血球減少症の精査のため骨髄検査を行った。骨髄穿刺液のMay-Giemsa染色標本(別冊No. 10A、B)及び鉄染色標本(別冊No. 10C)を別に示す。最も考えられるのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
下図の骨髄穿刺液のMay-Giemsa染色標本では、顆粒球系の脱顆粒や核の分葉異常、赤芽球系の核異型、巨核球系の小型巨核球や低分葉核など、汎血球系にわたる異形成所見が認められる。さらに鉄染色標本では、赤芽球のミトコンドリアに鉄が異常に沈着したリングシデロブラストが観察される。これらの所見は、骨髄異形成症候群(MDS)の診断基準を満たすため、最も考えられる疾患は骨髄異形成症候群である。
選択肢ごとの解説
- 1. 癌の骨髄転移では、異型細胞の集塊や癌細胞の浸潤がみられるが、下図の所見とは異なる。正しくは:癌細胞の浸潤が確認される。選びやすい理由:汎血球減少症の原因の一つとして癌の骨髄転移も考えられるため。混同注意:悪性腫瘍一般の病態生理と混同しやすい。
- 2. 多発性骨髄腫では、骨髄中に形質細胞の著しい増加(10%以上)がみられるが、下図の所見とは異なる。正しくは:単クローン性の形質細胞が増加している。選びやすい理由:汎血球減少症や高齢者に発症することから鑑別疾患として考慮されるため。混同注意:他の血液悪性腫瘍の所見と混同しやすい。
- 3. 巨赤芽球性貧血では、骨髄に巨赤芽球や巨大な杆状核好中球(巨核球ではなく)などの巨赤芽球性変化がみられるが、下図の所見とは異なる。特に鉄染色でリングシデロブラストは通常認められない。正しくは:巨赤芽球や過分葉好中球が見られ、リングシデロブラストは認められない。選びやすい理由:汎血球減少症の原因であり、骨髄の形態異常が見られるため、選択肢として魅力的。混同注意:骨髄異形成症候群の一部類型(例:リングシデロブラストを伴う型)と細胞形態の一部を混同しやすい。
- 4. 再生不良性貧血では、骨髄が低形成となり、造血細胞が著しく減少して脂肪組織に置換されている。下図では細胞密度が保たれ、異形成所見やリングシデロブラストが認められるため、所見が異なる。正しくは:骨髄は低形成で、造血細胞が著しく減少している。選びやすい理由:汎血球減少症の原因として代表的であり、他の血液疾患との鑑別が重要となるため。混同注意:骨髄異形成症候群の低形成型と混同しやすいが、異形成所見の有無が異なる。
- 5. 正解。下図のMay-Giemsa染色標本(A, B)では、顆粒球系、赤芽球系、巨核球系に異形成所見(例:顆粒球系の脱顆粒や異常顆粒、赤芽球系の核異型や多核化、巨核球系の小型巨核球や低分葉核)が観察される。また、鉄染色標本(C)では、赤芽球の核を囲むように鉄顆粒がリング状に存在するリングシデロブラストが認められる。これらの所見は、骨髄異形成症候群(MDS)に特徴的である。
国試ポイント
本問題は、汎血球減少症の患者における骨髄穿刺液の染色標本の所見から、疾患を鑑別する能力を問うものである。特に、骨髄異形成症候群に特徴的な血球系の異形成所見(顆粒球系、赤芽球系、巨核球系)や、リングシデロブラストの形態学的特徴を正確に識別できるかがポイントとなる。各疾患の骨髄所見の鑑別が重要である。
混同注意
骨髄異形成症候群と他の汎血球減少症をきたす疾患(再生不良性貧血、巨赤芽球性貧血など)の骨髄所見が混同しやすい。特に、低形成型MDSと再生不良性貧血、リングシデロブラストを伴うMDSとその他の鉄芽球性貧血との鑑別は重要である。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、まず汎血球減少症の有無を確認し、骨髄の細胞密度、各血球系の成熟段階における形態異常(異形成所見)、芽球の割合、および特殊染色(鉄染色など)の所見を総合的に評価して鑑別する。
関連知識
骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞レベルでのクローン性異常により、無効造血と異形成を特徴とする疾患群である。世界保健機関(WHO)分類に基づいたMDSの診断基準や病型分類を理解しておく必要がある。また、リングシデロブラストは赤芽球の核周囲に鉄顆粒がリング状に1/3以上沈着したものを指し、MDSの診断において重要な所見である。