H-E染色標本(別冊No. 9A)とパラフィンブロックの肉眼写真(別冊No. 9B)を別に示す。H-E染色標本にみられる問題の原因はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
H-E染色標本(A)において、組織の右側が完全に染色されていないのは、パラフィンブロック(B)の右側の組織が一部欠損していることに対応しています。これは、薄切を行う前の面出しが不十分であったために、ブロックの表面に全ての組織が含まれていなかったことが原因です。
選択肢ごとの解説
- 1. ホルマリン固定が不十分な場合、組織の自己融解や変性が起こり、細胞構造の不明瞭化や染色性の不良が見られますが、本画像のような組織の一部欠損には繋がりません。正しくは:適切な固定時間と量のホルマリンを使用し、組織の変性を防ぐ。選びやすい理由:染色性が悪いように見えるため、固定不良を疑う可能性がありますが、組織の欠損とは直結しません。混同注意:固定不良による細胞形態の変化や染色不良。
- 2. パラフィンへの浸透が不十分な場合、組織が硬くなり薄切困難になったり、切片が剥がれやすくなったり、染色ムラが生じたりしますが、本画像のような組織の欠損には繋がりません。正しくは:適切な時間と温度でパラフィン浸透処理を行う。組織の大きさに応じて調整する。選びやすい理由:染色性が不均一に見えるため、浸透不良を疑う可能性があります。混同注意:浸透不良による組織の硬化や染色ムラ。
- 3. 正解。H-E染色標本(A)において、組織の右側が染色されていない部分があり、パラフィンブロック(B)の右側も一部組織が欠損しています。これは、薄切を行う前の面出しが不十分であったため、ブロックの表面にすべての組織が露出していなかったことが原因であり、最も適切な選択肢です。
- 4. 切片の伸展が不十分な場合、切片にしわや折り目ができ、細胞の観察が困難になりますが、本画像のような組織の欠損や一部が染色されないといった症状には繋がりません。正しくは:適切な水温と伸展時間で切片を伸展させる。選びやすい理由:染色標本の見た目の不均一性から、何らかの物理的な処理の問題を疑う可能性があります。混同注意:伸展不良による切片のしわや折り目。
- 5. 染色処理中に切片がガラススライドから剥離した場合、切片全体が失われるか、部分的に剥がれて消失します。しかし、本画像では組織が部分的に存在しており、特にブロックとの対応関係から薄切の問題が示唆されます。正しくは:組織の種類や処理段階に応じて、適切なスライドガラスや接着剤を使用し、切片の剥離を防ぐ。選びやすい理由:染色標本の見た目が不完全なため、何らかの物理的な損傷を疑う可能性があります。混同注意:切片剥離による標本の消失や部分的な欠損。
国試ポイント
病理組織標本作製における薄切工程の重要性とトラブルシューティングに関する知識が問われています。
混同注意
薄切時の「面出し不十分」と「伸展不十分」は混同しやすいですが、面出し不十分は組織の欠損や一部のみの切断を引き起こすのに対し、伸展不十分は切片のしわや折りたたみを引き起こします。
次に同じ論点が出たら
今後同様の症例問題が出題された場合は、まずH-E染色標本の異常な部分が、それに対応するパラフィンブロックのどの部分に由来するかを比較し、各工程での問題点と照らし合わせて判断します。
関連知識
病理組織標本作製工程(固定、脱水、透徹、パラフィン包埋、薄切、伸展、染色、封入)の各ステップで起こりうる問題とその原因・対策を理解しておくことが重要です。