血栓の誘因となりにくいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
血栓形成は、血管内皮の損傷、血流のうっ滞、血液凝固能の亢進(Virchowの三要素)が主な誘因となります。喫煙は血管内皮を傷害し凝固能を亢進させ、悪性腫瘍は腫瘍細胞が凝固系を活性化し、心房細動は血流うっ滞を引き起こし、脂質異常症は動脈硬化を通じて血管内皮を損傷させます。これらはいずれも血栓形成を促進する因子です。一方、ビタミンKは血液凝固因子の活性化に必須であり、欠乏すると凝固能が低下し出血傾向となるため、血栓形成の誘因とは逆の作用を示します。
選択肢ごとの解説
- 1. 喫煙は血管内皮細胞に損傷を与え、血液凝固を促進する因子を増やし、血小板の活性を高めるため、血栓形成のリスクを著しく増加させます。正しくは:喫煙は血栓形成のリスクを高める主要な誘因の一つです。選びやすい理由:喫煙が健康に悪いことは広く認識されていますが、具体的な血栓形成機序(血管内皮傷害や凝固亢進)を正確に理解していないと、直接的な誘因として見落とす可能性があります。混同注意:喫煙が心血管疾患全般の危険因子であることは知っていても、血栓形成に至る直接的な機序(例:血管内皮機能障害、血小板凝集能亢進)を他の疾患リスクと混同することがあります。
- 2. 悪性腫瘍は、腫瘍細胞自体が凝固因子を活性化する物質を産生したり、炎症反応を引き起こしたりすることで、血液凝固能を亢進させ、血栓症(特に静脈血栓塞栓症やTrousseau症候群)の発症リスクを大幅に高めます。正しくは:悪性腫瘍は血栓形成の強力な誘因であり、特にTrousseau症候群として知られるものです。選びやすい理由:悪性腫瘍は全身の衰弱や様々な合併症を引き起こしますが、血栓症がその主要な合併症の一つであるという認識がない場合、誘因ではないと誤解する可能性があります。混同注意:悪性腫瘍が引き起こす貧血や感染症などの合併症にばかり着目し、血栓症が非常に重要な合併症であることを見過ごすことがあります。
- 3. 心房細動では、心房が不規則に拍動するため、心房内の血液が淀みやすくなります(血流うっ滞)。この血流うっ滞が、特に左心房での血栓形成を強く促進し、脳梗塞などの全身性塞栓症の主要な原因となります。正しくは:心房細動は心臓内で血栓が形成されやすく、特に脳梗塞などの塞栓症の主要な誘因です。選びやすい理由:不整脈の一種である心房細動が、直接的に血栓形成に結びつく機序(血流うっ滞)を明確に理解していないと、誘因ではないと誤って判断する可能性があります。混同注意:心房細動を単なる心臓のリズム異常と捉え、血流うっ滞による血栓形成への影響を結びつけられないことがあります。
- 4. 脂質異常症は動脈硬化の主要な危険因子であり、動脈硬化によって血管内皮が損傷すると、血小板が付着・凝集しやすくなり、血栓形成が誘発されます。特に粥状動脈硬化における血栓形成は、心筋梗塞や脳梗塞の主な原因です。正しくは:脂質異常症は動脈硬化を進展させ、その結果として血栓形成の強力な誘因となります。選びやすい理由:脂質異常症が直接血栓を作るというよりも、動脈硬化を介して血栓形成に関与するため、間接的であることから誘因ではないと見誤る可能性があります。混同注意:脂質異常症が動脈硬化の危険因子であることは知っていても、動脈硬化病変が血管内皮損傷を引き起こし、最終的に血栓形成につながる詳細な機序を混同することがあります。
- 5. 正解。ビタミンKは、プロトロンビン(第II因子)、第VII因子、第IX因子、第X因子といった主要な血液凝固因子の肝臓での合成と活性化に不可欠です。したがって、ビタミンKが欠乏するとこれらの凝固因子の機能が低下し、血液凝固能が抑制され、出血傾向になるため、血栓形成をむしろ抑制する方向に作用します。
国試ポイント
血栓形成に関わる主要な危険因子と、血液凝固機序における各因子の役割を正確に理解しているかを問う問題です。特に、ビタミンKが凝固因子の活性化に必須であるという知識を応用し、「欠乏」がどのような結果をもたらすかを判断させる点がポイントです。
混同注意
血栓形成の誘因と、止血・凝固系の各因子の役割を混同しやすいです。特に、ビタミンKの欠乏が凝固能を低下させる(出血傾向になる)という基本的な知識が不足していると、選択肢5を誤って選んでしまう可能性があります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、選択肢に挙げられた各因子がVirchowの三要素のいずれに該当し、どのように血栓形成を促進または抑制するのか、その具体的な機序を検討する必要があります。また、凝固・線溶系の重要な酵素や補因子が欠乏した場合の影響についても注意が必要です。
関連知識
Virchowの三要素(血管内皮傷害、血流うっ滞、血液凝固能亢進)、血液凝固カスケード、ビタミンK依存性凝固因子(プロトロンビン、VII、IX、X因子)、抗凝固薬(ワルファリンなど)の作用機序、各疾患(喫煙、悪性腫瘍、心房細動、脂質異常症)が血栓形成に与える具体的な影響。