髄液の墨汁標本(別冊No. 14)を別に示す。推定される菌種の特徴で正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第63回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
下に示す髄液の墨汁標本では、厚い莢膜に囲まれた出芽酵母が観察される。これはクリプトコッカス・ネオフォルマンスに特徴的な所見である。クリプトコッカス・ネオフォルマンスはウレアーゼを産生することが知られており、この酵素活性は同定検査において重要な指標となる。他の選択肢はカンジダ属真菌やその他の深在性真菌の特徴であり、クリプトコッカスには当てはまらない。
選択肢ごとの解説
- 1. 墨汁染色で莢膜が観察できることからクリプトコッカス属が推定される。クリプトコッカス属は酵母型真菌であり、一般的に二形性は示さない。二形性とは、宿主内や特定の温度では酵母型、環境中や室温では菌糸型など、生育条件によって形態が変化する性質を指す。正しくは:二形性を示すのはヒストプラズマ属、ブラストミセス属、コクシジオイデス属などの深在性真菌である。選びやすい理由:真菌感染症全般の知識として二形性を想起する可能性があるが、クリプトコッカスには当てはまらない。混同注意:カンジダなどの他の酵母との違いや、深在性真菌の一般的な特徴と混同する可能性がある。
- 2. 発芽管形成は、主にカンジダ・アルビカンスの同定に用いられる特徴である。墨汁染色で莢膜が明瞭に観察されることからクリプトコッカス・ネオフォルマンスが強く疑われ、クリプトコッカスは発芽管を形成しない。正しくは:発芽管を形成するのはカンジダ・アルビカンスである。選びやすい理由:発芽管形成が酵母の鑑別点として重要な項目であるため、選択肢として選びやすい。混同注意:カンジダ・アルビカンスの同定法と混同しやすい。
- 3. 仮性菌糸は、出芽した細胞が分離せずに伸長し、連なった形態を指し、主にカンジダ属真菌の培養で観察される特徴である。クリプトコッカス属は酵母型真菌であり、仮性菌糸は形成しない。正しくは:仮性菌糸を形成するのは主にカンジダ属の真菌である。選びやすい理由:酵母型真菌の知識として、カンジダの仮性菌糸形成を想起しやすい。混同注意:カンジダ属真菌の一般的な特徴と混同しやすい。
- 4. 厚膜胞子は、カンジダ・アルビカンスなどが栄養不良環境下で形成する抵抗性の強い胞子で、同定の一助となる。クリプトコッカス属は厚膜胞子を形成しない。正しくは:厚膜胞子を形成するのはカンジダ・アルビカンスなどである。選びやすい理由:酵母の形態学的特徴として厚膜胞子を想起しやすい。混同注意:カンジダ・アルビカンスの形態学的特徴と混同しやすい。
- 5. 正解。髄液の墨汁標本で莢膜を持つ酵母が観察された場合、クリプトコッカス・ネオフォルマンスが最も強く疑われる。クリプトコッカス属真菌は、特徴的にウレアーゼを産生する。この酵素は尿素を分解し、アンモニアを生成する。この特徴はクリプトコッカス属の生化学的同定に利用される。
国試ポイント
髄液墨汁染色で莢膜を持つ酵母像からクリプトコッカス属真菌を推定させ、その生化学的特徴(ウレアーゼ産生)を問う問題。真菌の形態学的特徴と生化学的特徴を結びつける知識が求められる。
混同注意
カンジダ属真菌(発芽管形成、仮性菌糸形成、厚膜胞子形成)の同定検査の特徴と混同しやすい。また、二形性を示す深在性真菌の特徴とも区別する必要がある。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、墨汁標本像から鑑別すべき真菌の形態的特徴だけでなく、培養特性、生化学的特性、血清学的診断法、病原性、主な感染経路まで含めて理解しているかを確認する。
関連知識
クリプトコッカス症は日和見感染症として重要であり、特にHIV感染者などで脳炎・髄膜炎を引き起こす。墨汁染色による莢膜の検出は迅速診断に極めて有用である。ウレアーゼ試験のほか、ラテックス凝集反応による莢膜抗原の検出も重要な診断法である。