自然尿検体のPapanicolaou染色標本の弱拡大写真(別冊No. 9A)と強拡大写真(別冊No. 9B)を別に示す。考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
提示された画像(弱拡大および強拡大)では、尿中に浮遊する異型細胞が観察されます。これらの細胞は、正常な尿路上皮細胞と比較して、著しい大小不同、核/細胞質比(N/C比)の増加、不整な核膜、粗大で凝集性のクロマチン、細胞質の乏しさといった悪性所見を呈しています。これらの特徴は、尿路上皮癌細胞に典型的なものです。特に、強拡大像では、個々の細胞が高度な異型性を示しており、他の選択肢である正常尿路上皮細胞、円柱上皮細胞、デコイ細胞、リンパ腫細胞とは鑑別できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 円柱上皮細胞は通常、細長く円柱状の形態を呈し、核は基底側に偏在します。提示された画像は、円柱上皮細胞の特徴とは異なります。正しくは:円柱上皮細胞の形態は、腎臓の尿細管や子宮頸管などで見られますが、画像のような多形性や核の腫大は示しません。選びやすい理由:尿路系の細胞として、円柱上皮細胞も一部で見られるため混同する可能性があります。混同注意:腎尿細管上皮細胞や子宮頸管円柱上皮細胞
- 2. 正常な尿路上皮細胞は、通常、明確な細胞質境界と均一なクロマチンを持つ比較的小さな核を有し、多形性やN/C比の著しい増加は見られません。画像では、細胞の多形性、核の大小不同、N/C比の増加が顕著です。正しくは:正常尿路上皮細胞は、細胞質が比較的豊富で、核は円形から楕円形、クロマチンは顆粒状で均一です。画像のような異型性は示しません。選びやすい理由:尿検体であるため、尿路上皮細胞が選択肢としてまず考えられますが、悪性所見を見落とす可能性があります。混同注意:正常尿路上皮細胞と尿路上皮癌細胞の鑑別
- 3. デコイ細胞は、BKウイルス感染によって生じる尿路上皮細胞で、特徴的な核内封入体(スリガラス状またはCowdry type A)と核の腫大を伴いますが、細胞全体の異型性は画像ほど著しくありません。画像では、明らかな封入体よりも細胞質の乏しさ、核の著しい大小不同、不整な核膜、粗大なクロマチンが目立ちます。正しくは:デコイ細胞の核は均一なスリガラス状を呈することが多く、画像のような不整なクロマチンパターンとは異なります。選びやすい理由:核の腫大という点では共通するため、ウイルス感染による異型と混同しやすいかもしれません。混同注意:尿路上皮癌細胞とBKウイルスによる細胞異型
- 4. 正解。画像所見では、細胞の多形性、核の著しい大小不同、N/C比(核/細胞質比)の増加、核膜の不整、クロマチンの粗大化と凝集、および細胞質の乏しさが観察されます。これらは尿路上皮癌細胞の典型的な特徴です。
- 5. リンパ腫細胞は通常、単独で出現し、比較的小型で均一な形態を示し、核は円形から卵円形でクロマチンは緻密です。核小体が明瞭な場合もありますが、画像のような著しい多形性やN/C比の増加、不整な核膜は一般的ではありません。正しくは:リンパ腫細胞は、細胞質が非常に乏しく、核は円形から卵円形で、クロマチンは通常均一に凝集しています。尿路上皮癌細胞のような多様な形態は示しません。選びやすい理由:悪性細胞であるという共通点から、リンパ腫細胞も考慮される可能性があります。混同注意:癌細胞とリンパ腫細胞
国試ポイント
本問題は、尿細胞診における悪性細胞の形態学的特徴、特に尿路上皮癌細胞の鑑別能力を問うものです。正常細胞、ウイルス感染細胞(デコイ細胞)、他の悪性細胞(リンパ腫細胞)との鑑別点が重要となります。画像診断能力に加え、各細胞の病理学的特徴の理解が求められます。
混同注意
正常尿路上皮細胞、炎症性異型細胞、デコイ細胞(BKウイルス感染細胞)との鑑別が重要です。特にデコイ細胞は核の腫大が見られるため、混同しやすいですが、クロマチンの均一性や核内封入体の有無で鑑別します。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず『細胞の大小不同』『核/細胞質比の異常』『核膜の不整』『クロマチンの性状(粗大、凝集)』『核小体の有無と大きさ』といった悪性所見の有無を系統的に評価します。
関連知識
尿路上皮癌の組織型、病期分類、細胞診におけるクラス分類(ベセスダシステムなど)、その他尿路系感染症による細胞変化(例えば、カンジダ、トリコモナスなど)。