子宮頸部擦過細胞診のPapanicolaou染色標本(別冊No. 8)を別に示す。Bethesdaシステムによる判定はどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
下に示す画像(別冊No.8)では、細胞質に比して核が非常に大きく、核/細胞質比の著しい増大が認められます。クロマチンは増量し、粗顆粒状で不均一な分布を示し、核形も不整です。これらの所見は、子宮頸部扁平上皮の高度な異形成または上皮内癌に相当するものであり、BethesdaシステムではHSIL(High-grade Squamous Intraepithelial Lesion)と判定されます。
選択肢ごとの解説
- 1. NILM(異常なし)は、扁平上皮内病変や悪性所見が全く見られない場合に適用されます。提示された画像には明らかに異型性のある細胞が多数認められ、NILMには該当しません。正しくは:NILMは「Negative for Intraepithelial Lesion or Malignancy」の略で、細胞に異型が全く認められない場合に用いられます。選びやすい理由:もし画像が正常な細胞のみで構成されていれば、NILMが正解となります。混同注意:LSILやHSILといった軽度から高度の異型を伴う病変と混同しやすいですが、NILMは完全に正常な状態を指します。
- 2. LSIL(軽度扁平上皮内病変)は、HPV感染による軽度の異型細胞に見られます。提示された画像では、異型細胞の核/細胞質比の増大、核形の不整、クロマチンの増量と粗顆粒化が顕著であり、LSILの範囲を超える高度な異型性を示しています。これはLSILの特徴であるコイロサイトーシスや軽度の核異型よりも重度です。正しくは:LSIL(Low-grade Squamous Intraepithelial Lesion)は、主にコイロサイト(異型核と核周囲空胞を持つ細胞)や軽度の核異型が特徴です。選びやすい理由:高度な異型性が判断しにくい場合、初期病変であるLSILと誤って判断することがあります。混同注意:HSILとLSILの鑑別は、異型細胞の核の大きさ、クロマチンの性状、核/細胞質比など、異型性の程度で判断します。特にHSILでは未熟な異型細胞が多く見られます。
- 3. 正解。提示された画像には、核の著しい腫大とクロマチンの増量および不均一な分布、核/細胞質比の著しい増大、核形不整、および異型細胞の集塊が見られます。これらの所見は、BethesdaシステムにおけるHSIL(高度扁平上皮内病変)の診断基準と一致します。HSILは、中等度異形成、高度異形成、および上皮内癌(CIS)を含む概念です。
- 4. Squamous cell carcinoma(扁平上皮癌)は、浸潤性の増殖を示す悪性腫瘍です。HSILよりもさらに異型が高度で、細胞質が好酸性で角化傾向を示す細胞や、細胞質が未熟で小型の細胞が不規則に増殖し、浸潤像を伴います。提示された画像では高度な異型性は認められますが、明らかな癌細胞の浸潤や、より重篤な異型所見(例:クロマチン凝集、不規則な核膜の肥厚、腫瘍壊死)が十分には確認できず、HSILと判定するのが妥当です。HSILは上皮内病変であり、浸潤癌とは異なります。正しくは:扁平上皮癌は、HSILよりさらに異型が強く、浸潤を伴う所見が特徴です。選びやすい理由:HSILと浸潤癌の鑑別は非常に困難な場合があり、高度な異型を見た際に浸潤癌と判断してしまうことがあります。混同注意:HSILは上皮内にとどまる病変ですが、扁平上皮癌は基底膜を越えて浸潤する点で異なります。細胞形態上も、浸潤癌ではより多形性や異型性が顕著になります。
- 5. Adenocarcinoma(腺癌)は、腺細胞由来の悪性腫瘍であり、扁平上皮細胞由来の腫瘍とは形態が異なります。腺癌細胞は、腺構造を形成したり、核が偏在したり、粘液産生が見られたりといった特徴を持ちます。提示された画像に見られる細胞は扁平上皮細胞由来の異型を示しており、腺細胞由来の悪性所見は見られません。正しくは:腺癌は腺細胞由来の悪性腫瘍で、扁平上皮癌とは異なる細胞形態的特徴を示します。選びやすい理由:悪性腫瘍であるという点で他の悪性判定と混同しやすいですが、扁平上皮と腺上皮の区別が重要です。混同注意:扁平上皮病変と腺上皮病変は、それぞれ異なる細胞起源を持つため、形態学的特徴を正確に識別する必要があります。
国試ポイント
Bethesdaシステムにおける子宮頸部細胞診の診断基準、特にHSILの形態学的特徴(核の大きさ、核/細胞質比、クロマチンの性状、核形など)を正確に理解しているかが問われています。NILM、LSIL、HSIL、浸潤癌、腺癌の鑑別ポイントを押さえることが重要です。
混同注意
LSILとHSILの鑑別、およびHSILと浸潤性扁平上皮癌の鑑別が特に混同しやすい点です。各病変の形態学的特徴の差異を明確に理解する必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず異型細胞の有無を確認し、その異型性の程度(核の大きさ、クロマチンの性状、核/細胞質比、核形)から、軽度か高度かを判断します。次に、腺細胞由来か扁平上皮細胞由来かを見極め、浸潤像の有無で上皮内病変か浸潤癌かを最終的に判断します。
関連知識
Bethesdaシステム分類、子宮頸癌の発生機序(HPV感染との関連)、扁平上皮細胞の正常形態と異型細胞の形態学的変化、Papanicolaou染色の病理学的特徴、および各病変の臨床的意義。