肺腫瘍のH-E染色標本(別冊No. 7)を別に示す。組織型はどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第63回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
画像では、癌細胞が扁平上皮の特徴である細胞間橋を形成しており、さらに角化傾向を示し、中心に好酸性に染まる角化真珠を形成しているのが観察されます。これらの所見は、分化型平上皮癌に特徴的であり、特に肺の平上皮癌でよく見られる組織像です。
選択肢ごとの解説
- 1. 腺癌は腺腔構造の形成や粘液産生を特徴としますが、画像にはこれらの所見は見られません。むしろ角化真珠が明瞭であり、腺癌とは異なる組織型です。正しくは:腺癌であれば、癌細胞が腺管構造を形成したり、細胞質内に粘液を貯留している所見が観察されます。選びやすい理由:肺癌の組織型として腺癌は頻度が高いため、漠然と選択してしまう可能性があります。混同注意:平上皮癌の組織像は全く異なります。腺癌は一般に末梢肺に発生しやすい特徴があります。
- 2. 小細胞癌は、小型で円形から紡錘形の細胞が密に増殖し、核小体が不明瞭でクロマチンが顆粒状、細胞質が乏しいという特徴を持ちます。画像に示す細胞は比較的大型で細胞質も豊富であり、角化真珠が見られることから、小細胞癌ではありません。正しくは:小細胞癌であれば、細胞は小型で核クロマチンが細顆粒状(salt-and-pepper chromatin)、細胞質が乏しく、核小体が不明瞭なことが特徴です。選びやすい理由:小細胞癌も肺癌の主要な組織型の一つであり、その診断基準を十分に理解していない場合、選択肢として考慮されるかもしれません。混同注意:大細胞神経内分泌癌など、一部の神経内分泌腫瘍と混同する可能性がありますが、小細胞癌は形態的特徴が非常に特異的です。
- 3. 軟骨肉腫は、軟骨組織への分化を示す間葉系腫瘍であり、H-E染色では異型性のある軟骨細胞が軟骨基質を産生している像が見られます。画像は上皮性腫瘍の特徴を示しており、間葉系腫瘍ではありません。正しくは:軟骨肉腫であれば、硝子軟骨様の基質中に異型性を示す軟骨細胞が散在している像が観察されます。選びやすい理由:腫瘍細胞の増殖パターンを誤解した場合、まれな選択肢ながらも選んでしまう可能性があります。しかし、肺の原発性軟骨肉腫は極めて稀です。混同注意:骨肉腫や他の間葉系腫瘍。また、癌肉腫のように上皮性成分と間葉性成分が混在する腫瘍と混同する可能性もゼロではありませんが、画像の所見は明らかに上皮性です。
- 4. 正解。画像には、腫瘍細胞が重層する扁平上皮の特徴を示し、細胞間橋が明瞭に観察されます。さらに、細胞が角化傾向を示し、中心部に好酸性に染まる同心円状の構造である「角化真珠」が明瞭に認められます。これらの所見は、肺の平上皮癌の典型的な組織像です。選びやすい理由:肺癌の主要な組織型の一つであり、診断のポイントである角化真珠が明瞭なため、比較的選びやすい選択肢です。混同注意:分化の悪い平上皮癌では角化真珠が見られないこともあり、その場合は腺癌や大細胞癌との鑑別が難しくなることがあります。
- 5. 悪性リンパ腫はリンパ球系の腫瘍であり、リンパ球様の異型細胞がびまん性に増殖し、リンパ濾胞構造を破壊するなどの特徴を示します。画像は上皮性細胞の増殖と角化真珠が特徴であり、リンパ球系の腫瘍ではありません。正しくは:悪性リンパ腫であれば、リンパ球様の小型から大型の異型細胞がびまん性に、あるいは結節状に増殖し、その細胞形態や免疫組織化学的特徴によって分類されます。選びやすい理由:肺に発生する腫瘍性病変は多岐にわたり、悪性リンパ腫も肺病変を呈することがあるため、鑑別診断の一つとして頭をよぎるかもしれません。混同注意:他の小型円形細胞腫瘍(小細胞癌など)や、反応性リンパ増殖性疾患など。
国試ポイント
肺癌の主要な組織型のH-E染色標本における特徴を識別する能力が問われています。特に平上皮癌に特徴的な角化真珠の有無が重要な鑑別点です。
混同注意
腺癌とは、腺腔形成や粘液産生がない点で区別できます。小細胞癌とは、細胞の形態、核のクロマチンパターン、核小体の有無、細胞質量の違いで区別します。軟骨肉腫や悪性リンパ腫は上皮性腫瘍ではないため、腫瘍細胞の形態学的特徴が大きく異なります。
次に同じ論点が出たら
次回の問題で肺腫瘍のH-E染色標本が出た場合、まず細胞の形態、核のクロマチンパターン、核小体の有無、細胞質量の特徴を確認し、次に腺腔形成、粘液産生、角化真珠の有無など、分化の方向性を示す構造がないかを注意深く観察して判断します。
関連知識
肺癌の組織型には、腺癌、小細胞癌、平上皮癌、大細胞癌などが主要なものとして挙げられます。それぞれの組織型は、発生部位、臨床経過、治療法が異なるため、正確な組織診断が重要です。平上皮癌は喫煙との関連が強いことが知られています。