検査材料の取扱いで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第66回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
寒冷活性化する補体成分が測定値に影響を与えないよう、半量溶血補体価(CH50)測定においてEDTA加血漿を使用するのは適切です。EDTAはカルシウムイオンをキレートすることで補体経路の活性化を阻害し、測定の安定性を確保します。これにより、検体中の補体活性がin vitroで不必要に亢進するのを防ぎ、より正確な補体価を反映できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 寒冷凝集反応の測定に使う血液検体は、反応を阻害しないよう採血後すぐに37℃で保温し、凝集を起こさせずに遠心分離して血清を得る必要があります。4℃での遠心分離は寒冷凝集を促進し、正確な測定を妨げます。正しくは:寒冷凝集反応の測定に使う血液検体は、37℃で保温後に遠心分離して血清を得る。選びやすい理由:『寒冷凝集』という言葉から『4℃』を連想しやすいですが、測定のためには凝集を防ぐ必要があります。混同注意:クリオグロブリンの検査における採血・遠心分離時の温度管理(こちらは4℃で凝集促進)と混同しやすいです。
- 2. 免疫電気泳動は血清中の免疫グロブリンなどを分析する検査であり、補体の影響を排除する必要がある免疫学的検査とは異なります。通常、免疫電気泳動に用いる血清検体を56℃で30分間加熱処理する理由はありません。加熱処理は主に補体依存性溶血反応などの検査で補体を除去するために行われます。正しくは:免疫電気泳動に用いる血清検体は、通常加熱処理しない。選びやすい理由:免疫学的検査では補体失活のために加熱処理を行うことがあるため、免疫電気泳動も同様と誤解しやすいです。混同注意:補体結合反応や細胞障害性抗体検査などで補体を失活させる目的の加熱処理と混同しやすいです。
- 3. クリオグロブリンは4℃で沈殿する異常タンパク質であり、検査のためには、採血後37℃で保温した血液を遠心分離して血清を分離する必要があります。その後に血清を4℃に冷却して沈殿を確認します。4℃で採血や遠心分離を行うと、採血容器内でクリオグロブリンが沈殿し、血清中への移行が不完全になる可能性があります。正しくは:クリオグロブリン検査のために、採血後37℃で保温した血液を遠心分離して血清を得、その後血清を4℃で放置してクリオグロブリンの沈殿を観察する。選びやすい理由:『クリオグロブリン』という名から『低温』を連想し、採血や遠心分離も4℃で行うと誤解しやすいです。混同注意:寒冷凝集反応の採血・遠心分離時の温度管理と混同しやすいです。また、クリオグロブリンの『沈殿を見る段階』の温度(4℃)と、分離する段階の温度(37℃)を混同しやすいです。
- 4. 直接クームス試験は、赤血球に結合した抗体を検出する検査であり、補体成分が関与すると結果に影響を与える可能性があります。特に、補体は4℃で活性化しやすいため、検査直前まで4℃で保管すると補体の非特異的な結合や活性化が起こり、偽陽性につながる恐れがあります。通常、室温または適切な温度で保管し、迅速に検査を行うことが望ましいです。正しくは:直接クームス試験の血液検体は、検査直前まで室温で保管するか、適切な温度管理のもとで速やかに検査する。選びやすい理由:多くの血液検体は4℃で保管されるため、他の検体と同様に4℃で保管すると考えてしまいやすいです。混同注意:一般的な血液検体の保存温度と混同しやすいですが、直接クームス試験は補体の影響を考慮する必要があります。
- 5. 正解。正しいです。寒冷活性化が認められる検体(低温で補体活性が亢進する検体)の半量溶血補体価(CH50)を測定する場合、EDTA加血漿を使用することは適切です。EDTAはカルシウムイオンをキレートすることで補体経路の活性化を阻害し、検体採取後のin vitroでの補体活性化を防ぎ、より正確なCH50値を反映させることができます。これにより、低温による補体活性化が測定値に与える影響を排除できます。選びやすい理由:特にありません。補体活性化の抑制という目的とEDTAの作用機序が一致しているため、医学的知識があれば正答しやすい選択肢です。混同注意:ヘパリン加血漿やクエン酸加血漿など、他の抗凝固剤の作用機序と混同することが稀にあります。CH50測定ではEDTAが推奨されます。
国試ポイント
検体処理における温度管理、抗凝固剤の選択、加熱処理の目的とそれが検査に与える影響について覚える必要があります。特に、寒冷反応性物質や補体、不安定な成分を考慮した検体処理の原則が重要です。
混同注意
検体保存温度と遠心分離温度の区別。寒冷凝集反応とクリオグロブリン検査における温度管理の共通点と相違点。補体活性化を防ぐための抗凝固剤の選択。
次に同じ論点が出たら
同様の検体処理問題が出た場合、検査項目が『温度感受性の成分』『補体活性化の有無』『熱不安定性成分』に関わるものかを最初に確認し、それぞれの特性に合わせた適切な処理(温度、抗凝固剤、加熱の要否)がなされているかを判断します。
関連知識
寒冷凝集反応は4℃で凝集、37℃で解離する自己抗体。クリオグロブリンは4℃で沈殿、37℃で溶解するタンパク質。補体は熱不安定性であり、加熱により失活する。EDTAはCa2+をキレートし、凝固と古典経路の補体活性化を阻害する。