検査部位の皮膚温度が30℃と低い状態で検査を行う場合、神経伝導検査への影響で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
神経伝導速度は温度に非常に敏感であり、皮膚温が低下すると神経線維内のイオンチャネルの機能が抑制され、興奮伝播速度が著しく低下します。このため、神経伝導検査において伝導速度は温度補正が必須とされています。
選択肢ごとの解説
- 1. 低温では神経膜の興奮性が低下するため、刺激に対する閾値はむしろ上昇します(より強い刺激が必要になります)。正しくは:刺激閾値が上昇する。選びやすい理由:低温が何か生理機能に影響を与えるのはわかるが、具体的にどう影響するかを誤解している場合に選択しやすいです。混同注意:特定の病態で閾値が低下する場合や、温度と神経興奮性の関係を逆に理解している可能性があります。
- 2. 正解。低温はイオンチャネルの活動を抑制し、膜の抵抗を増加させるため、神経線維内での興奮伝播速度が著しく低下します。これは神経伝導検査において最も顕著な温度依存性の変化の一つです。
- 3. 多相性波形は、通常、脱髄性疾患や再支配の過程など、神経線維の伝導速度が不均一になる病態で観察されます。単純な低温環境では波形が多相化することはありません。正しくは:多相化しない、または、持続時間が延長し振幅が増加する。選びやすい理由:何らかの「異常」として多相性波形を連想してしまう場合に選択しやすいです。混同注意:低温による生理的な変化と、病理的な波形変化(多相化)を混同している可能性があります。
- 4. 低温では、筋線維や神経線維の膜抵抗が増加し、活動電位の持続時間が延長するため、複合筋活動電位(CMAP)や感覚神経活動電位(SNAP)の振幅は通常、むしろ増加します。正しくは:記録波形の振幅が増加する。選びやすい理由:低温が全体的な機能低下を引き起こすという漠然としたイメージから、振幅も低下すると誤解しやすいです。混同注意:筋温が低下すると筋線維の興奮性が低下すると誤解したり、疲労など他の原因による振幅低下と混同したりする可能性があります。
- 5. 伝導速度が低下し、個々の活動電位の持続時間も延長するため、記録される複合活動電位の持続時間は全体としてむしろ延長します。正しくは:記録波形の持続時間が延長する。選びやすい理由:伝導速度が遅くなる=全体的に活動が鈍化する、という解釈から、持続時間も短くなると誤解しやすいです。混同注意:他の要因(例: 軸索障害による脱落)で持続時間が変化するケースと混同したり、活動電位と複合活動電位の持続時間の関係を誤解したりする可能性があります。
国試ポイント
神経伝導検査における環境要因、特に皮膚温度が検査結果に与える影響は頻出の重要事項です。低温が伝導速度に与える影響(低下)と、振幅や持続時間への影響(増加)を正確に理解しているかが問われます。
混同注意
低温が神経機能に与える影響について、振幅や持続時間の変化(振幅増加、持続時間延長)を、伝導速度の変化(低下)と混同したり、すべてが低下するという誤ったイメージを持ったりしやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同じ論点が出た場合、皮膚温度が低い状態での神経伝導検査において、伝導速度の低下だけでなく、複合活動電位の振幅の増加や持続時間の延長といった他の変化も問われる可能性があるため、包括的な理解が求められます。
関連知識
適切な皮膚温の管理(通常32℃以上)が神経伝導検査の標準化された手順であること、各種イオンチャネル(Na+チャネル、K+チャネル)の開閉 kinetics が温度依存的であること、低温が筋の収縮特性(収縮時間延長)にも影響を与えることなどを関連知識として押さえておきましょう。