筋萎縮性側索硬化症患者の萎縮が明らかな筋における針筋電図検査で認める所見はどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・4番
解説
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位および下位運動ニューロンが進行性に変性する疾患です。萎縮が明らかな筋における針筋電図検査では、下位運動ニューロンの障害とそれに伴う筋線維の脱神経、および残存神経による再支配の徴候が観察されます。選択肢2の陽性鋭波と選択肢4の線維束自発電位は、ともに脱神経した筋線維や興奮性が高まった運動ニューロン群から生じる自発電位であり、ALSのような下位運動ニューロン障害の診断に非常に重要な所見です。これらの自発電位は安静時に認められます。
選択肢ごとの解説
- 1. 急速動員は、筋原性疾患(ミオパチー)において、運動単位の数が保たれているにもかかわらず個々の筋線維の収縮力が低下しているため、より多くの運動単位が早期に動員されることで見られる所見です。筋萎縮性側索硬化症のような神経原性疾患では、運動単位の脱落があるため、動員はむしろ減弱します。正しくは:筋萎縮性側索硬化症では、運動単位の脱落により、最大収縮時に動員される運動単位の数は減少し、不完全動員となります。選びやすい理由:「急速」という言葉から、病気の進行や神経の異常な興奮を連想し、誤って選んでしまう可能性があります。混同注意:神経原性疾患と筋原性疾患における動員パターンの違い。
- 2. 正解。陽性鋭波は、軸索の変性によって神経支配を失った筋線維が脱神経状態となり、その膜電位が不安定になった結果生じる自発電位です。筋萎縮性側索硬化症(ALS)のような下位運動ニューロン障害を伴う疾患で特徴的に認められます。
- 3. 完全干渉波形は、正常な筋において最大収縮時に、個々の運動単位電位(MUP)が互いに重なり合い、識別できないほど密な波形として観察される状態です。筋萎縮性側索硬化症では運動単位の脱落があるため、最大収縮時でも運動単位の活動が減少し、個々のMUPが識別できる『不完全干渉波形』や『単相波』が観察されます。正しくは:筋萎縮性側索硬化症では、不完全干渉波形または単相波が認められます。選びやすい理由:「干渉波形」という言葉から、筋電図異常の一種と捉えてしまいがちですが、「完全」である点が正常な所見であることを示しています。混同注意:正常な干渉波形と、神経原性疾患でみられる不完全干渉波形や単相波。
- 4. 正解。線維束自発電位は、運動ニューロンの興奮性が高まっている状態や、慢性的な神経支配喪失と再支配の過程で生じる、複数の筋線維または運動単位全体の一過性の自発的な収縮活動です。皮膚の上から筋のぴくつき(線維束攣縮)として観察されることもあり、筋萎縮性側索硬化症の下位運動ニューロン障害の非常に特徴的な所見です。
- 5. 短持続低振幅電位は、筋原性疾患(ミオパチー)において、個々の筋線維が障害され、機能する筋線維の数が減ることで、運動単位電位(MUP)が短く、小さくなることで認められる所見です。神経原性疾患である筋萎縮性側索硬化症では、残存する神経が脱神経した筋線維を再支配することで、1つの運動単位に含まれる筋線維の数が増え、MUPはむしろ『長持続高振幅電位』となります。正しくは:筋萎縮性側索硬化症のような神経原性疾患では、長持続高振幅電位が特徴的です。選びやすい理由:「筋萎縮」という病態から、筋電図全体が「短く、小さい」状態になると誤解しやすいです。混同注意:神経原性疾患と筋原性疾患における運動単位電位(MUP)の形態変化(特に持続時間と振幅)。
国試ポイント
筋電図検査における神経原性疾患(特にALSなどの運動ニューロン病)と筋原性疾患の鑑別診断に用いられる主要な所見を正確に理解しているかを問う問題です。自発電位の種類と、運動単位電位(MUP)や干渉波形の変化を区別して覚えていることが重要になります。
混同注意
神経原性疾患と筋原性疾患における筋電図所見の混同がよく見られます。特に、MUPの形態(長持続高振幅MUPと短持続低振幅MUP)、干渉波形(不完全干渉波形と完全干渉波形)、そして動員パターン(減弱動員と急速動員)は混同しやすく、それぞれの疾患で真逆の所見を示すことが多いです。また、陽性鋭波、線維自発電位(fibrillation potential)、線維束自発電位といった異なる自発電位の意味と、それらが出現する疾患についても正確な理解が求められます。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が問われた場合、神経原性疾患(特に運動ニューロン病)と筋原性疾患の筋電図所見の対比に注目し、それぞれの特徴的な自発電位、MUPの形態、干渉波形、動員パターンを正確に区別できるかを確認する必要があります。特に、長持続高振幅MUPと短持続低振幅MUP、陽性鋭波と線維束自発電位の区別が重要です。また、病態進行度によるMUPの変化(急性期と慢性期)にも注意を払うと良いでしょう。
関連知識
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態は、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方の障害によって特徴づけられます。針筋電図検査の基本原理として、安静時電位(自発電位)、運動単位電位(MUP)、そして最大収縮時の干渉波形を評価します。神経原性疾患の筋電図所見は、安静時での線維自発電位(陽性鋭波、fibrillation potential)や線維束自発電位、MUPの長持続・高振幅・多相性増加(慢性期)、そして最大収縮時の不完全干渉波形が典型的です。対照的に、筋原性疾患ではMUPの短持続・低振幅・多相性増加、そして早期・急速動員が特徴的となります。他の神経疾患(例:脊髄性筋萎縮症、重症筋無力症など)における筋電図所見も関連知識として重要です。