急性咽頭炎患者の咽頭粘液を5%ヒツジ血液寒天培地(左)とチョコレート寒天培地(右)の分画培地に接種し、35℃で24時間炭酸ガス培養を行った培地(別冊No.15)を別に示す。分離菌は、グラム陽性球菌、カタラーゼテスト陰性、LancefieldのA群抗原陽性であった。推定される菌種はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第63回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
Streptococcus pyogenes(A群β溶血性レンサ球菌)は、グラム陽性球菌、カタラーゼ陰性、LancefieldのA群抗原陽性、そしてβ溶血性(下図のヒツジ血液寒天培地で透明な溶血環が観察されるはず)という特徴を持ちます。急性咽頭炎の主要な原因菌であり、与えられたすべての条件に合致します。
選択肢ごとの解説
- 1. Streptococcus agalactiaeはLancefieldのB群抗原陽性であり、A群抗原陽性という条件と異なります。正しくは:LancefieldのB群抗原陽性であれば、Streptococcus agalactiaeが考えられます。選びやすい理由:グラム陽性球菌であり、溶血性を示すため、選択肢として考慮されやすいかもしれません。混同注意:Streptococcus pyogenesと同じレンサ球菌ですが、Lancefield抗原群が異なります。
- 2. Streptococcus mitisはLancefield分類で群特異抗原を持たないか、分類不能群に属することが多く、A群抗原陽性という条件とは異なります。また、溶血性も非溶血性(α溶血性)が多いです。正しくは:A群抗原陰性で、α溶血性を示す場合はStreptococcus mitisを考慮します。選びやすい理由:口腔常在菌であり、咽頭から検出される可能性はあるため、誤って選ばれるかもしれません。混同注意:他のレンサ球菌(特に口腔常在菌)と混同しやすいです。
- 3. Streptococcus pneumoniaeはLancefield分類で群特異抗原を持たないか、分類不能群に属することが多く、A群抗原陽性という条件とは異なります。また、肺炎球菌はオプトヒン感受性を示します。正しくは:A群抗原陰性で、α溶血性、オプトヒン感受性を示す場合はStreptococcus pneumoniaeを考慮します。選びやすい理由:グラム陽性球菌であり、呼吸器感染症の原因菌であるため、選択肢として魅力的に見えるかもしれません。混同注意:他のα溶血性レンサ球菌、特にStreptococcus mitisなどと混同しやすいです。
- 4. 正解。Streptococcus pyogenes(A群β溶血性レンサ球菌)はグラム陽性球菌であり、カタラーゼ陰性、そしてLancefieldのA群抗原陽性であるという特徴を全て満たします。また、急性咽頭炎の主要な原因菌でもあります。正しくは:(正答のため修正不要)選びやすい理由:(正答のため該当せず)混同注意:(正答のため該当せず)
- 5. Streptococcus sanguinisはLancefield分類で群特異抗原を持たないか、分類不能群に属することが多く、A群抗原陽性という条件とは異なります。主に口腔常在菌であり、心内膜炎の原因菌として知られます。正しくは:A群抗原陰性で、α溶血性を示す場合はStreptococcus sanguinisを考慮します。選びやすい理由:口腔常在菌であり、咽頭から検出される可能性はあるため、誤って選ばれるかもしれません。混同注意:他のレンサ球菌(特に口腔常在菌)と混同しやすいです。
国試ポイント
本問題は、グラム陽性球菌の同定における重要な検査項目(カタラーゼテスト、Lancefield抗原分類、溶血性)の理解と、主要な病原菌であるレンサ球菌の鑑別能力を問うものです。特にA群β溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)の基本的な性状と、それが引き起こす疾患(急性咽頭炎)との関連性を把握しているかが鍵となります。
混同注意
他のLancefield分類群のレンサ球菌(例: Streptococcus agalactiae [B群])、あるいはLancefield分類群を持たない他のレンサ球菌(例: Streptococcus pneumoniae, Streptococcus mitisなどのα溶血性レンサ球菌)との鑑別がポイントになります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まずグラム染色結果とカタラーゼテストで菌種の大まかな分類を行い、次にLancefield抗原群分類と溶血性のパターン、さらに必要に応じてオプトヒン感受性やCAMPテストなどの追加試験の結果を統合して菌種を同定します。画像からは溶血性の判断が必要になります。
関連知識
レンサ球菌はグラム陽性球菌でカタラーゼ陰性である点がブドウ球菌(カタラーゼ陽性)との鑑別点です。レンサ球菌の分類には、溶血性(α, β, γ)、Lancefield抗原群分類(A~Gなど)、生化学的性状などが用いられます。Streptococcus pyogenesは、急性咽頭炎、猩紅熱、丹毒、膿痂疹などの化膿性疾患に加え、リウマチ熱や急性糸球体腎炎といった非化膿性合併症の原因となります。