疾患とその原因の組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
赤芽球癆は、骨髄での赤芽球系前駆細胞の産生・成熟が障害され、選択的に赤芽球が減少することで貧血を来す疾患です。ヒトパルボウイルスB19は、赤芽球前駆細胞に特異的な受容体(P抗原)を持っており、この細胞に感染して増殖を抑制するため、赤芽球癆の主要な原因の一つとなります。特に慢性溶血性貧血患者が感染すると、網状赤血球の急激な減少を伴う「無形成発症(aplastic crisis)」を引き起こし、重篤な貧血に至ることがあります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。ヒトパルボウイルスB19は、赤芽球系の前駆細胞に特異的に感染し、その増殖を抑制することで赤芽球癆(純粋赤芽球癆)を引き起こす主要な原因の一つです。特に、溶血性貧血の患者さんが感染すると、骨髄の赤血球産生が一時的に停止し、重度の貧血(aplastic crisis)を来すことがあります。
- 2. 再生不良性貧血は、骨髄の造血幹細胞の障害により、赤血球、白血球、血小板の全てが減少する汎血球減少を特徴とする疾患です。エリスロポエチンは赤血球の産生を促進するホルモンですが、その欠乏は主に腎機能障害による腎性貧血の原因となります。再生不良性貧血では、貧血に対する代償反応として、血中のエリスロポエチン濃度はむしろ高値を示すことが一般的です。正しくは:再生不良性貧血 ― 造血幹細胞の障害(自己免疫学的機序や薬剤性など)選びやすい理由:貧血という状態から、造血を促すエリスロポエチンの欠乏が原因だと直感的に考えてしまうかもしれません。混同注意:腎性貧血(エリスロポエチン欠乏が原因)と混同しやすいです。
- 3. 遺伝性球状赤血球症は、赤血球膜を構成するタンパク質(スペクトリン、アンキリン、バンド3など)の遺伝的異常により、赤血球が脆弱化し、球状に変形して脾臓で破壊されやすい溶血性貧血です。αグロビン遺伝子異常は、主にサラセミア(特にαサラセミア)の原因であり、ヘモグロビン合成異常を来します。正しくは:遺伝性球状赤血球症 ― 赤血球膜骨格タンパク質の異常(スペクトリン、アンキリン、バンド3など)選びやすい理由:遺伝性の貧血疾患であり、遺伝子異常が原因であるという知識から、詳細な原因遺伝子まで正確に覚えていない場合に選びやすいです。混同注意:サラセミア(特にαサラセミア)と混同しやすいです。
- 4. 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は、患者自身の免疫系が誤って赤血球を攻撃する自己抗体(IgGやIgM)を産生し、これにより赤血球が破壊される疾患です。補体制御因子欠損は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)や非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)といった、補体経路の異常が直接的な原因となる疾患で見られますが、AIHAの直接の原因ではありません。正しくは:自己免疫性溶血性貧血 ― 自己抗体の産生選びやすい理由:溶血性貧血の病態に補体が関与する場合もあるため、補体制御因子欠損が直接の原因だと誤解する可能性があります。混同注意:発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)や非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)と混同しやすいです。
- 5. ビタミンB欠乏性貧血は、主にビタミンB12や葉酸の欠乏によって起こります。ビタミンB12は胃から分泌される内因子と結合して回腸で吸収され、葉酸は主に小腸(十二指腸、空腸)で吸収されます。直腸は消化管の終末部分であり、これらのビタミンの吸収には直接関与しないため、直腸切除がビタミンB欠乏性貧血の直接的な原因となることはありません。正しくは:ビタミンB12欠乏性貧血 ― 胃全摘術後、回腸切除術後、悪性貧血など選びやすい理由:消化管の手術が栄養吸収に影響を与えるという大まかな知識から、直腸切除もビタミン吸収に影響すると誤解する可能性があります。混同注意:胃や回腸の切除術後(ビタミンB12吸収障害)と混同しやすいです。
国試ポイント
貧血の鑑別診断において、それぞれの疾患の病態生理や主要な原因を正確に理解しているかを問う問題です。臨床検査技師として、各貧血疾患の原因を正しく把握することは、適切な検査選択や結果解釈に直結するため、非常に重要な知識となります。典型的な貧血疾患の分類、原因、特徴的な検査所見は毎年頻出する項目です。
混同注意
各選択肢において、似たような病態を持つ貧血疾患や、他の原因と混同しやすい点が狙われています。例えば、再生不良性貧血と腎性貧血、遺伝性球状赤血球症とサラセミア、自己免疫性溶血性貧血と発作性夜間ヘモグロビン尿症、ビタミンB欠乏性貧血の原因となる消化管の部位など、知識の曖昧な部分を突かれる可能性があります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題される場合、それぞれの貧血疾患の診断基準、特徴的な臨床検査所見(例:網状赤血球数、Coombs試験の結果、骨髄穿刺所見、MCH/MCV値など)、治療法、または特徴的な合併症について問われる可能性があります。また、疾患名、原因、検査所見、治療法などを複数組み合わせて、より複雑な形式で正誤を判断させる問題も考えられます。
関連知識
赤芽球癆には、特発性のものと、ヒトパルボウイルスB19感染、胸腺腫、薬剤、自己免疫疾患などに続発するものがあります。再生不良性貧血は骨髄機能不全による汎血球減少で、治療は免疫抑制療法などが中心です。遺伝性球状赤血球症は赤血球膜異常による溶血性貧血で、脾臓摘出が有効な場合もあります。自己免疫性溶血性貧血は自己抗体(温式抗体、冷式抗体)による赤血球破壊で、クームス試験が診断に重要です。ビタミンB欠乏性貧血では、ビタミンB12(悪性貧血、胃切除後など)と葉酸(吸収不良、栄養摂取不足など)の欠乏による巨赤芽球性貧血の鑑別、吸収部位、原因疾患を理解しておく必要があります。