シリンジで採血を行い、止血処置の間にしばらく立てて静置した。その状況の写真(別冊No. 12)を別に示す。そのままシリンジを転倒混和せず、複数の血算用の試験管に分注した。最後の試験管に比べて最初の試験管で測定値が大きくなる可能性の最も高いのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
採血した血液を静置すると、比重の大きい赤血球が重力によって沈降し、シリンジの下部に集まります。転倒混和せずに分注した場合、最初に分注される血液はシリンジの下部から排出されるため、赤血球が最も濃縮された状態の血液が得られ、結果として赤血球数が高値を示す可能性が最も高くなります。この現象は赤血球沈降速度(ESR)測定の原理そのものです。
選択肢ごとの解説
- 1. 単球は比重が赤血球より小さく、また血小板より大きいため、この条件下では最初の分注で特に高い値を示す可能性は低いです。むしろ赤血球沈降によって相対的に後の方の分注で濃度が高まる可能性があります。正しくは:単球は赤血球ほど速く沈降しないため、最初の分注で特に値が大きくなる可能性は低い。選びやすい理由:細胞成分であるため、沈降の影響を全く受けないとは考えにくい点。混同注意:赤血球の沈降速度や白血球の比重差による分布。
- 2. 血小板は赤血球と比較してはるかに小さく、比重も軽いため、静置しても赤血球のように急速には沈降しません。むしろ上層に残りやすく、最初の分注で極端に高値を示す可能性は低いです。正しくは:血小板は比重が軽いため、静置しても赤血球のように速く沈降せず、最初の分注で特に値が大きくなる可能性は低い。選びやすい理由:細胞成分であり、凝集などによる分布の不均一性を想像するかもしれない点。混同注意:他の血球成分の沈降速度や比重。
- 3. 好中球は白血球の一種で、赤血球と比較すると比重が小さく、静置によって急速に沈降するわけではありません。そのため、最初の分注で特に高い値を示す可能性は低いです。正しくは:好中球は赤血球ほど速く沈降しないため、最初の分注で特に値が大きくなる可能性は低い。選びやすい理由:白血球の一種であり、赤血球とともに沈降する可能性を考えるかもしれない点。混同注意:赤血球の沈降速度と白血球の比重差による分布。
- 4. 正解。シリンジを立てて静置すると、比重の大きい赤血球が重力によって速やかに沈降します。そのため、シリンジの下部に赤血球が濃縮され、最初に分注される血液(シリンジ下部から出る)では赤血球数が最も高くなる可能性が非常に高いです。これは赤血球沈降速度(ESR)の原理と同じです。
- 5. リンパ球は白血球の中で最も小さく、比重も軽いため、静置しても赤血球のように急速には沈降しません。血漿成分に近い位置に留まりやすく、最初の分注で特に高値を示す可能性は低いです。正しくは:リンパ球は赤血球ほど速く沈降しないため、最初の分注で特に値が大きくなる可能性は低い。選びやすい理由:他の細胞成分と同様に、沈降の影響を考えるかもしれない点。混同注意:赤血球の沈降速度や他の白血球の比重差による分布。
国試ポイント
この問題は、採血後の検体管理の基本、特に血液の比重と沈降現象が測定値に与える影響について問うものです。転倒混和の重要性を理解しているか、また各血球成分の比重差について基礎知識があるかを評価します。画像を見ることで、検体が静置され分離が起きている状況を正しく認識できるかもポイントです。
混同注意
血球成分全般が沈降すると誤解する可能性がありますが、赤血球が最も比重が大きく沈降しやすいため、他の血球(白血球、血小板)とは異なる挙動を示します。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず『静置』『転倒混和せず』というキーワードに注目し、比重差による成分分離(特に赤血球沈降)を想起する。次に、選択肢にある各血球成分の比重を比較し、最も沈降しやすい(比重の大きい)成分を特定する。
関連知識
血液の成分分離(血漿、バフィーコート、赤血球層)、赤血球沈降速度(ESR)の原理、各血球成分の比重、採血後の検体管理(転倒混和の目的)。