アニオンギャップが上昇するのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第72回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
アニオンギャップ(AG)は、血漿中の主要な測定可能な陽イオン(Na+)から主要な測定可能な陰イオン(Cl-とHCO3-)の合計を引いた値で、通常は測定されない陰イオンの存在を示します。AGが上昇するのは、乳酸アシドーシス(乳酸)、糖尿病性ケトアシドーシス(ケトン体)、腎不全による尿毒症(リン酸、硫酸)、特定の薬物中毒(サリチル酸、メタノール、エチレングリコールなど)のように、未測定の酸性物質が増加する場合です。乳酸アシドーシスは、乳酸が未測定陰イオンとして蓄積するため、AGが上昇する典型的な例です。
選択肢ごとの解説
- 1. 嘔吐は胃酸の喪失を招き、主に代謝性アルカローシスを引き起こします。この状態ではアニオンギャップは通常上昇せず、むしろ低下傾向を示すこともあります。正しくは:嘔吐ではアニオンギャップは通常上昇しない。選びやすい理由:電解質異常全般に関する知識のあいまいさや、嘔吐による脱水などの状況が複雑に影響すると考えてしまう。混同注意:アニオンギャップ上昇性アシドーシスと、他の電解質異常や酸塩基平衡異常(例:代謝性アルカローシス)の区別。
- 2. 下痢では重炭酸イオン(HCO3-)が体外に失われるため、高クロール性の正常アニオンギャップ性代謝性アシドーシスを引き起こします。アニオンギャップは上昇しません。正しくは:下痢ではアニオンギャップは上昇しない。選びやすい理由:下痢がアシドーシス状態を引き起こすため、アニオンギャップの上昇と関連があると思い込みやすい。混同注意:高アニオンギャップ性代謝性アシドーシスと正常アニオンギャップ性代謝性アシドーシスの鑑別。
- 3. 正解。乳酸アシドーシスでは、代謝によって過剰に生成された乳酸(乳酸イオンは未測定陰イオン)が血中に蓄積します。これにより、未測定陰イオンの量が増加し、アニオンギャップが上昇する代謝性アシドーシスを引き起こします。
- 4. 尿細管性アシドーシスは、腎臓における水素イオン(H+)排泄障害や重炭酸イオン(HCO3-)再吸収障害によって生じるアシドーシスですが、これは高クロール性の正常アニオンギャップ性代謝性アシドーシスに分類されます。未測定陰イオンの増加は伴いません。正しくは:尿細管性アシドーシスではアニオンギャップは上昇しない。選びやすい理由:「アシドーシス」という名称から、アニオンギャップの上昇を伴うと誤解しやすい。混同注意:高アニオンギャップ性代謝性アシドーシスと正常アニオンギャップ性代謝性アシドーシスの鑑別。
- 5. 副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰分泌により、主にカルシウムやリンの代謝異常(高カルシウム血症、低リン血症など)を引き起こします。アニオンギャップの異常な上昇とは直接関係ありません。正しくは:副甲状腺機能亢進症ではアニオンギャップは上昇しない。選びやすい理由:電解質バランスに影響を与える疾患であるため、アニオンギャップの変化と結びつけやすい。混同注意:アニオンギャップの変動要因と、他の電解質異常を引き起こす疾患の混同。
国試ポイント
臨床検査技師国家試験では、アニオンギャップの計算式、正常値、およびそれが上昇・低下する代表的な病態について正確な知識が求められます。特に、高アニオンギャップ性代謝性アシドーシスと正常アニオンギャップ性代謝性アシドーシス(高クロール性アシドーシス)の原因疾患を明確に区別できることが重要です。
混同注意
アシドーシスであれば全てアニオンギャップが上昇すると誤解しがちですが、下痢や尿細管性アシドーシスのように重炭酸イオン喪失によるアシドーシスでは、クロールイオンが増加して電気的中性を保つため、アニオンギャップは正常範囲に留まります。この高クロール性アシドーシスとの鑑別が重要です。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が問われた場合、問題が問うているのが「未測定陰イオンの増加によるアシドーシス(高AGアシドーシス)」か、「重炭酸イオンの喪失または水素イオンの貯留に伴うクロールイオン増加によるアシドーシス(正常AGアシドーシス)」かを判断し、それぞれの代表的な病態を想起することが重要です。
関連知識
アニオンギャップの計算式: AG = Na+ - (Cl- + HCO3-)。正常値は約8〜16 mEq/L(施設により異なる)。AG上昇をきたす主な疾患群は「MUDPILES」(Methanol, Uremia, Diabetic ketoacidosis, Paraldehyde, Iron/Isoniazid, Lactic acidosis, Ethylene glycol, Salicylate)などの語呂合わせで覚えることが推奨される。正常AGアシドーシス(高クロール性アシドーシス)の主な原因は、下痢、尿細管性アシドーシス、炭酸脱水酵素阻害薬の使用などである。