正中神経における運動神経伝導検査の記録波形(別冊No. 5)を別に示す。最も考えられるのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第71回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
下図の波形は、近位刺激での複合筋活動電位(CMAP)の振幅が、遠位刺激でのCMAP振幅と比較して著しく減少していることを示しており、これは「伝導ブロック」の所見である。伝導ブロックは、脱髄性ニューロパチーの主要な特徴であり、特に慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)で高頻度に見られる。CIDPは、免疫介在性の神経脱髄により神経伝導障害を引き起こす疾患である。
選択肢ごとの解説
- 1. 重症筋無力症は神経筋接合部の疾患であり、反復刺激でCMAPの漸減現象(decrement)を示すが、脱髄性ニューロパチーで見られるような近位刺激でのCMAP振幅の著しい減少(伝導ブロック)は典型的ではない。正しくは:この波形は、神経筋接合部の異常ではなく、神経線維自体の伝導障害、特に伝導ブロックを示唆する。選びやすい理由:筋力低下を伴うため、CMAPの変化と関連する疾患として考えやすいかもしれない。混同注意:神経筋接合部疾患と脱髄性ニューロパチーの病態の違い。
- 2. 手根管症候群は正中神経の絞扼性病変であり、通常は手根部での伝導速度の遅延や遠位運動潜時の延長、CMAP振幅の低下が見られる。しかし、この波形が示すような近位刺激での明らかな伝導ブロック(振幅の著しい減少)は一般的ではない。伝導ブロックは通常、広範な脱髄性疾患でより顕著に見られる。正しくは:手根管症候群では、局所的な脱髄や軸索障害による遠位でのCMAP振幅低下が主であり、広範囲の伝導ブロックではない。選びやすい理由:正中神経の検査なので、正中神経の疾患として手根管症候群が想起されやすい。混同注意:局所的な絞扼性ニューロパチーと広範な脱髄性ニューロパチーの鑑別。
- 3. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロン病であり、軸索変性が主体である。神経伝導検査では、CMAP振幅の低下はみられるものの、近位刺激でのCMAP振幅の著しい減少(伝導ブロック)は通常見られない。伝導ブロックは脱髄性病変の特徴である。正しくは:ALSでは軸索変性により神経線維数が減少し、CMAPの振幅が低下するが、伝導ブロックは一般的ではない。選びやすい理由:筋力低下や筋萎縮を伴うため、神経伝導検査の結果と関連付けやすいかもしれない。混同注意:運動ニューロン疾患と脱髄性ニューロパチーの病態生理の違い。
- 4. 糖尿病性多発ニューロパチーは、主に軸索変性型が一般的であり、神経伝導検査ではCMAP振幅の低下や伝導速度の軽度低下が見られることが多い。しかし、この波形が示すような近位刺激での明らかな伝導ブロックは典型的ではない。一部に脱髄要素を伴う場合もあるが、CIDPほどの著明な伝導ブロックは稀である。正しくは:糖尿病性ニューロパチーは軸索変性が主体であり、広範な伝導ブロックはCIDPほど顕著ではない。選びやすい理由:多発ニューロパチーであるため、神経伝導検査の異常が考えやすい。混同注意:軸索変性型ニューロパチーと脱髄性ニューロパチーの鑑別。
- 5. 正解。慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)は、神経の脱髄が主な病態であり、その特徴として神経伝導ブロック、伝導速度の著しい遅延、遠位潜時の延長、時間的分散などが挙げられる。特に伝導ブロックはCIDPの診断基準の一つであり、近位刺激でCMAP振幅が遠位刺激よりも著しく減少する波形はこの疾患に非常に典型的である。
国試ポイント
神経伝導検査における伝導ブロックの所見を理解し、その所見から考えられる代表的な脱髄性ニューロパチー(特にCIDP)を鑑別できるかどうかが問われる。各疾患の神経伝導検査の特徴を区別する知識が必要。
混同注意
軸索変性型ニューロパチー(糖尿病性、ALSなど)と脱髄型ニューロパチー(CIDP、ギラン・バレー症候群など)の神経伝導検査所見の区別。特にCMAP振幅の減少が伝導ブロックによるものか、軸索変性によるものか。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、CMAPの波形を細かく分析し、特に近位と遠位での振幅比較、波形の分散度合い、伝導速度の極端な低下に注目して、それが脱髄性変化(伝導ブロック、時間的分散)を示唆するものか、軸索変性(振幅の全体的低下)を示唆するものかを判断する。また、各疾患の典型的な神経伝導所見を正確に想起できるかが重要となる。
関連知識
神経伝導検査の基本原則(運動神経伝導検査、感覚神経伝導検査)。CMAPとSNAPの測定項目(振幅、潜時、伝導速度)。伝導ブロック、時間的分散、遠位潜時の延長、伝導速度の低下がそれぞれどのような病態を示すか。各神経疾患(重症筋無力症、手根管症候群、ALS、糖尿病性ニューロパチー、CIDP、ギラン・バレー症候群など)の神経伝導検査所見の典型例。