62歳女性。慢性肝疾患のため通院中である。意識障害が出現し記録した脳波(別冊No. 5)を別に示す。所見はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
慢性肝疾患に伴う意識障害は肝性脳症を示唆し、その際の脳波所見として特徴的なのは三相波です。三相波は、陽性-陰性-陽性の3つの相からなる比較的低頻度の波形で、特に意識障害が進行した段階で観察されやすいため、画像診断と臨床情報からこの選択肢が正答となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。意識障害を伴う慢性肝疾患の患者における脳波所見として、三相波は肝性脳症に特徴的です。これは、陽性相、陰性相、陽性相の3つの位相からなる緩徐な波形で、通常、前頭部から中心部にかけて同期して出現します。
- 2. 徐波群発は、発作型脳波の一つであり、てんかん発作時や特定の脳病変で見られますが、肝性脳症の典型的な所見ではありません。正しくは:肝性脳症では広範な徐波化は見られますが、群発的な出現よりも持続的な背景活動の徐波化がより特徴的です。三相波は意識障害を伴う肝性脳症の重要な指標です。選びやすい理由:肝性脳症では脳波の徐波化が見られるため、徐波に関連する選択肢は魅力的に見えるかもしれません。混同注意:広範な徐波化と、発作性に出現する群発性徐波を混同しやすいです。
- 3. 棘徐波複合は、てんかん、特に欠神発作で特徴的に見られる脳波所見であり、肝性脳症の所見とは異なります。正しくは:棘徐波複合はてんかん発作に特有の波形であり、肝性脳症では観察されません。選びやすい理由:脳波の異常所見として一般的に知られているため、選択肢として選びやすいかもしれません。混同注意:様々な脳波異常所見の中から、それぞれの疾患との関連性を混同しやすいです。
- 4. 周期性同期性放電(PSD)は、クロイツフェルト・ヤコブ病などのプリオン病で特徴的に見られる脳波所見であり、肝性脳症の典型ではありません。正しくは:周期性同期性放電はクロイツフェルト・ヤコブ病などの疾患に特有であり、肝性脳症とは関連しません。選びやすい理由:意識障害を伴う疾患で観察される異常波形の一つであるため、知識が曖昧だと選びかねません。混同注意:クロイツフェルト・ヤコブ病などの進行性神経変性疾患の脳波所見と混同しやすいです。
- 5. ヒプスアリスミアは、点頭てんかん(ウエスト症候群)に特徴的な脳波パターンであり、乳幼児に多く見られ、肝性脳症とは無関係です。正しくは:ヒプスアリスミアは点頭てんかんの乳幼児に特有の非常に不規則で高振幅な脳波であり、成人で慢性肝疾患に伴う意識障害で見られる所見ではありません。選びやすい理由:「極めて異常な脳波」という点で、重症の脳機能障害を示唆する所見として誤解しやすいかもしれません。混同注意:小児の重症てんかんの脳波所見と、成人の代謝性脳症の脳波所見を混同しやすいです。
国試ポイント
肝性脳症の典型的な脳波所見である三相波を識別できるかどうかが問われています。臨床情報と脳波所見を結びつける能力が必要です。他の選択肢はそれぞれ別の疾患に特徴的な脳波所見であり、鑑別が求められます。
混同注意
脳波の一般的な異常所見(徐波、棘波など)と、特定の疾患に特異的な波形(三相波、棘徐波複合、PSD、ヒプスアリスミア)の区別が混同しやすいポイントです。特に、広範な徐波化と三相波が肝性脳症で共存しうるため、三相波の具体的な形態を理解しているかが重要です。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、まず臨床情報(基礎疾患、症状)から疾患を想定し、その疾患に特異的な脳波所見の特徴を詳細に確認することが重要になります。特に画像問題では、波形の形状、振幅、頻度、出現部位、左右差、周期性などに着目して判断します。
関連知識
肝性脳症の病態生理、アンモニア代謝異常、グルタミンによる脳浮腫、脳波所見の段階的変化(意識障害の進行に伴う徐波化、三相波の出現)について理解していることが望ましいです。また、てんかん、プリオン病、小児てんかんの脳波所見についても基本知識が必要です。