64歳の男性。家族に「最近ぼーっとしていることが多い」と指摘され受診した。脳波別冊No.62を別に示す。所見はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
提示された脳波では、全体的に背景活動がやや遅延しており、特にFp1-A1、Fp2-A2、F3-A1、F4-A2などの前頭部優位に鋭く尖った陰性電位の後に、それに続く陽性成分を伴う波形が散発的に認められます。これらの波形は、てんかん性放電の特徴である棘波(spike)に合致します。患者の「最近ぼーっとしていることが多い」という症状は、非けいれん性てんかん発作の一症状である欠神発作や複雑部分発作の可能性を示唆しており、脳波所見と臨床症状が一致しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。脳波の複数の誘導で認められる、鋭く尖った陰性電位に続く陽性成分を伴う波形は、棘波の定義に合致します。持続時間も短く、てんかん性放電の特徴を示しています。選びやすい理由:てんかん性放電の最も基本的な波形であるため、正しく識別できれば選択できます。混同注意:鋭波、突発性徐波
- 2. 三相波は、陽性→陰性→陽性、または陰性→陽性→陰性の3つの相を持つ比較的ゆっくりとした波で、特に肝性脳症などの代謝性脳症で認められます。本脳波の波形は三相波の特徴とは異なります。正しくは:脳波の三相波は、肝性脳症や他の代謝性脳症、低酸素脳症などで見られる特徴的な波形であり、問題の脳波はこれに該当しません。問題の波形は鋭く尖っており、てんかん性放電を示唆しています。選びやすい理由:三相波も高齢者の意識障害で鑑別にあがる可能性のある波形であるため、なんとなく異常波形として選んでしまう可能性があります。混同注意:周期性同期性放電(PSD)、棘波
- 3. 多棘徐波複合は、複数の棘波が先行し、その後に徐波が続く複合波で、West症候群などの重篤なてんかんで見られます。本脳波では単発の棘波が散発的に認められるのみで、複数の棘波に続く徐波のパターンは確認できません。正しくは:多棘徐波複合は複数の棘波とその後の徐波からなる複合波であり、West症候群などに見られますが、本脳波では単発の棘波が主体であるため誤りです。問題の波形は単発の棘波と解釈されます。選びやすい理由:てんかん性放電の一種であり、棘波を含むため、てんかんを疑う症例で選択肢として魅力的に映るかもしれません。混同注意:棘徐波複合、棘波
- 4. 14Hz陽性棘波は、睡眠中に側頭部や後頭部に短時間出現する弓形の陽性棘波で、神経学的に正常な睡眠脳波でも見られることがあり、てんかん原性ではありません。本脳波の波形はこのような特徴を示していません。正しくは:14Hz陽性棘波は正常な睡眠脳波でも見られることがあり、てんかん原性放電とは区別されます。問題の脳波は覚醒時の異常な棘波と考えられます。選びやすい理由:てんかん性異常波形と誤解されやすいため、知識が曖昧な場合に選んでしまう可能性があります。特に「棘波」という言葉が含まれるため混同しやすいです。混同注意:6Hz陽性棘波(phantom spike-and-wave)、棘波
- 5. 周期性同期性放電(PSD)は、高振幅の鋭波や徐波複合がほぼ一定の周期で脳波全体に同期して出現する波形で、クロイツフェルト・ヤコブ病などで特徴的です。本脳波の波形は周期性がなく、同期性も認められません。正しくは:周期性同期性放電は、クロイツフェルト・ヤコブ病などで見られる周期的な高振幅波形ですが、本脳波では周期性や同期性は認められず、散発的な棘波が特徴です。選びやすい理由:高齢者の「ぼーっとしていることが多い」という症状は、認知症や神経変性疾患を想起させるため、クロイツフェルト・ヤコブ病などで見られる周期性同期性放電を連想しやすいかもしれません。混同注意:三相波、てんかん重積状態での周期性パターン
国試ポイント
てんかん性脳波の基本波形である棘波、鋭波、棘徐波複合の定義と特徴を画像で識別できること。特に、てんかんと関連の深い異常波形の判読が重要です。
混同注意
棘波は、鋭波や突発性徐波と混同しやすいですが、棘波は持続時間が20〜70ミリ秒の短く尖った波形である点で区別されます。鋭波は70〜200ミリ秒と持続時間が長く、突発性徐波はてんかん原性ではない可能性があります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の脳波問題が出題された際は、まず波形の鋭さ、持続時間、出現パターン(単発か複合か、周期性か非周期性か、左右対称性か非対称性か)に着目し、基本的な異常波形の定義に当てはめて判断します。また、臨床情報(年齢、症状)と脳波所見の整合性も考慮します。
関連知識
てんかん性放電には、棘波、鋭波、棘徐波複合、多棘徐波複合などがあり、それぞれが異なるタイプのてんかんと関連します。例えば、3Hz棘徐波複合は定型欠神発作に特徴的です。周期性同期性放電(PSD)はクロイツフェルト・ヤコブ病などに、三相波は肝性脳症などにみられる非てんかん性の特徴的波形です。