正中神経における運動神経伝導検査の模式的な記録波形(別冊No. 5)を別に示す。軸索変性のパターンはどれか。なお、図中の破線は正常波形を示す。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第68回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
軸索変性(軸索性ニューロパチー)では、神経線維の軸索が障害されるため、筋線維を支配する軸索の数が減少します。この結果、末梢神経伝導検査では、複合筋活動電位(CMAP)の振幅が低下する一方で、残存する軸索の伝導速度は比較的保たれる(または軽度低下する)という特徴的な波形を示します。選択肢②の波形がこの典型的なパターンに該当します。
選択肢ごとの解説
- 1. この波形は、振幅は保たれているものの伝導速度が著しく低下しています。これは脱髄性ニューロパチーの典型的な所見です。正しくは:この波形は脱髄性病変を示唆します。選びやすい理由:波形が大きく変化しているため、何らかの異常と認識しやすいですが、軸索変性とは異なるパターンです。混同注意:軸索変性と脱髄性病変の所見を混同する可能性があります。
- 2. 正解。この波形は、正常な伝導速度を保ちつつ、複合筋活動電位(CMAP)の振幅が著しく低下しています。これは軸索変性(軸索損傷)の典型的なパターンです。軸索が損傷すると、筋線維への神経支配が減少し、筋活動電位の振幅が減少します。正しくは:正しい選択肢です。軸索変性では、軸索の減少によりCMAPの振幅が低下します。選びやすい理由:伝導速度に大きな変化がないため、見落としやすいかもしれませんが、振幅の低下が重要なポイントです。混同注意:脱髄性病変と混同し、伝導速度の低下のみに注目してしまう可能性があります。
- 3. この波形は、複合筋活動電位(CMAP)の起始潜時が延長し、振幅が低下しており、さらに波形が多相性を示しています。これは、病変が進行した脱髄性ニューロパチーや再支配(reinnervation)が起こっている状態、あるいは多巣性脱髄の可能性を示唆します。単純な軸索変性パターンとは異なります。正しくは:この波形は進行した脱髄性病変や慢性的な変化を示唆します。選びやすい理由:波形が複雑に変化しているため、重篤な異常を連想しやすいですが、軸索変性の典型的パターンではありません。混同注意:脱髄性病変の様々な段階や軸索変性を混同しやすいです。
- 4. この波形は、複合筋活動電位(CMAP)の潜時が延長し、振幅が軽度低下していますが、特に持続時間が延長し、波形が拡散しています。これは、主に遠位端での伝導ブロックや病変の進行、あるいは軽度の脱髄と軸索変性が混在している状態を示唆することがありますが、純粋な軸索変性の典型的パターンではありません。正しくは:この波形は、脱髄や伝導ブロック、あるいは混合性の病変を示唆します。選びやすい理由:振幅の低下があるため、軸索変性を疑うかもしれませんが、潜時延長や波形拡散は脱髄の要素が強いです。混同注意:脱髄性病変と軸索変性の混合型や、伝導ブロックとの区別が難しいかもしれません。
- 5. この波形は、正常な波形を示しています。破線で示された正常波形とほぼ同じであり、異常所見はありません。正しくは:この波形は正常です。選びやすい理由:正常波形を基準と理解していれば選択しにくいですが、他の異常波形との比較を誤ると選択してしまう可能性があります。混同注意:異常波形と正常波形を明確に区別できていないと選択肢から除外できません。
国試ポイント
神経伝導検査の記録波形から、軸索性病変と脱髄性病変を鑑別できる知識が問われます。特に、軸索変性ではCMAP振幅の低下、脱髄性病変では伝導速度の低下や潜時の延長が主要な特徴であることを理解しているかが重要です。
混同注意
軸索変性パターンと脱髄性変性パターン。特に、振幅低下と伝導速度低下のどちらが主要な特徴であるかを混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まずCMAPの『振幅』と『伝導速度(潜時)』のどちらに大きな異常があるかに着目し、振幅の低下が主要な場合は軸索変性、伝導速度の低下や潜時の延長が主要な場合は脱髄性変性を疑います。
関連知識
末梢神経伝導検査の原理、複合筋活動電位(CMAP)と感覚神経活動電位(SNAP)の生理学的意義、脱髄性ニューロパチー(例:ギラン・バレー症候群、CIDP)と軸索性ニューロパチー(例:糖尿病性ニューロパチー、薬剤性ニューロパチー)の各病態における神経伝導検査所見。