TSI培地に細菌を接種して1日後の写真(別冊No. 14)を別に示す。推定されるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
TSI培地は、乳糖、ショ糖、ブドウ糖の3種類の糖分解能、硫化水素産生能、ガス産生能を同時に調べることができる鑑別培地である。Salmonella Typhiは、ブドウ糖のみを分解するため、斜面はアルカリ性(赤色)で底部は酸性(黄色)となる(K/A反応)。また、硫化水素を産生するため培地底部が黒色に変色する。ガス産生は通常陰性(または極めて少量)である。下図の培地は、斜面が赤色、底部が黄色かつ黒色化しており、ガス産生が認められないため、Salmonella TyphiのTSI反応に合致する。
選択肢ごとの解説
- 1. Citrobacter freundiiは通常、TSI培地で酸産生(黄変)とガス産生を示すが、硫化水素産生は菌株による。下図のS. Typhiに典型的な黒色化は通常示さない。正しくは:Citrobacter freundiiの場合、底部の黒色化は認められないか、あったとしても硫化水素陽性反応は弱い。選びやすい理由:腸内細菌科細菌であり、TSI培地で鑑別される対象であるため。硫化水素産生能を持つ菌も存在するため。混同注意:他の硫化水素産生能を持つ腸内細菌科細菌(サルモネラ、プロテウスなど)と混同しやすい。
- 2. Enterobacter cloacaeはTSI培地で酸産生とガス産生を示すが、硫化水素は産生しない。したがって、培地の黒色化は起こらない。正しくは:Enterobacter cloacaeの場合、培地の黒色化は認められない。選びやすい理由:腸内細菌科細菌であり、TSI培地で鑑別される対象であるため。混同注意:硫化水素非産生性の他の腸内細菌科細菌(クレブシエラ、セラチアなど)と混同しやすい。
- 3. Proteus vulgarisはTSI培地で酸産生、ガス産生、そして硫化水素産生(黒色化)を示すが、ブドウ糖と乳糖の両方を分解するため、斜面と底部が共に黄色に変色する。下図では斜面は赤色、底部は黄色の反応を示しており、S. Typhiの典型的な反応(K/A反応、つまり斜面アルカリ性/底部酸性)とは異なる。正しくは:Proteus vulgarisの場合、斜面も黄色に変色する(A/A反応)。選びやすい理由:硫化水素産生能を持つ菌であり、培地の黒色化という点で共通点があるため。混同注意:他の硫化水素産生菌(サルモネラなど)と、TSI培地での糖分解能の違いを混同しやすい。
- 4. 正解。Salmonella TyphiはTSI培地で、ブドウ糖のみを分解するため斜面は赤色(アルカリ性)、底部は黄色(酸性)となる(K/A反応)。また、硫化水素を産生するため底部が黒色に変色する。ガスは通常産生しないか、ごく少量のため、培地の持ち上げや亀裂は認められない。下図のTSI培地は、斜面が赤色、底部が黄色かつ黒色化しており、ガス産生は認められないため、Salmonella Typhiの典型的な反応と一致する。
- 5. Shigella sonneiはTSI培地でブドウ糖のみを分解するため、斜面は赤色、底部は黄色(K/A反応)を示すが、硫化水素もガスも産生しない。したがって、培地の黒色化や培地の持ち上げは認められない。正しくは:Shigella sonneiの場合、培地の黒色化やガス産生による培地の亀裂は認められない。選びやすい理由:腸内細菌科細菌であり、TSI培地で鑑別される対象であるため。ブドウ糖のみ分解する点で共通点がある。混同注意:サルモネラなど、K/A反応を示すが硫化水素やガス産生能が異なる菌と混同しやすい。
国試ポイント
TSI培地による腸内細菌の鑑別反応(特に糖分解パターン、硫化水素産生、ガス産生)を正確に理解しているかが問われている。サルモネラ属菌のTSI反応は特に重要。
混同注意
硫化水素産生能を持つ他の腸内細菌(Proteus, Citrobacterなど)のTSI反応と混同しやすい。特に、糖分解パターン(A/A, K/A)の違いが重要。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、TSI培地の図から、まず「斜面の反応(乳糖・ショ糖分解)」「底部の反応(ブドウ糖分解)」「黒色化の有無(硫化水素産生)」「培地の亀裂・持ち上げの有無(ガス産生)」を正確に読み取り、これらの組み合わせから鑑別できる菌種を判断する。特に、硫化水素産生菌と非産生菌、ブドウ糖のみ分解する菌と多糖を分解する菌のパターンを覚えておく必要がある。
関連知識
TSI培地の成分(フェノールレッド指示薬、鉄塩、3種の糖)、各成分が反応に与える影響、および代表的な腸内細菌のTSI反応パターン(大腸菌、クレブシエラ、サルモネラ、プロテウス、シゲラなど)。また、硫化水素産生に必要なアミノ酸や酵素についても関連知識として挙げられる。