イオン選択電極法による測定で、血清Na 140 mmol/L、血清Cl 125 mmol/Lであった。考えられるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第65回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
イオン選択電極法によるCl測定において、臭素イオン(Br-)はCl-と誤認識され、見かけ上のCl値が高くなります。この問題で示されたNa 140 mmol/Lに対してCl 125 mmol/Lという値は、Na-Clの差が15 mmol/Lであり、通常のアニオンギャップ(AG)の計算に含まれない陰イオン(Br-など)の存在を示唆しています。臭素中毒ではBr-がCl-として測定されるため、見かけ上のClが高くなり、アニオンギャップが縮小または負の値になることが特徴的です。
選択肢ごとの解説
- 1. 嘔吐では消化液が失われるため、代謝性アルカローシスをきたし、代償的にクロール濃度が低下することが多いです。また、脱水によりナトリウムは高値を示すことがありますが、クロールとの不均衡が本選択肢のパターンとは異なります。正しくは:嘔吐による脱水では、通常、血液濃縮が起こりNa濃度は高値を示すことがあります。Clは代償性の低下が見られますが、本件のようなCl高値は典型的ではありません。選びやすい理由:脱水や電解質異常を伴うため、電解質異常全般から連想される可能性があります。混同注意:低クロール血症を伴う代謝性アルカローシスを引き起こす病態と混同する可能性があります。
- 2. 尿崩症では、抗利尿ホルモンの分泌不足または作用不全により多尿となり、水分が過剰に失われるため、血漿の浸透圧が上昇し、高ナトリウム血症をきたします。クロールも高値になる傾向がありますが、NaとClの乖離が本選択肢のパターンとは異なります。正しくは:尿崩症では高Na血症とそれに伴う高Cl血症が見られますが、Na:140mmol/L, Cl:125mmol/Lという値の乖離は通常見られません。選びやすい理由:高Na血症をきたす病態として知られているため、電解質異常から選択肢として考えられる可能性があります。混同注意:高Na血症を引き起こす他の病態と混同する可能性があります。
- 3. 正解。臭素中毒では、臭素イオン (Br-) が体内に蓄積します。イオン選択電極法によるクロール測定では、臭素イオンがクロールイオンと類似した特性を持つため、誤って高値として検出されることがあります(擬陽性)。この結果、実際のクロール濃度が正常であるにもかかわらず、見かけ上、Na濃度に対してCl濃度が異常に高いという測定値が得られます。Na濃度140mmol/Lに対し、Cl濃度125mmol/Lは、Na-Cl=15mmol/Lと正常範囲(通常10-14mmol/L)を逸脱してClが高く測定されており、アニオンギャップの縮小を示唆します。臭素中毒ではBr-がCl-として測定されることで見かけ上のClが高くなり、これによりアニオンギャップが減少または負の値になることがあります。正しくは:この選択肢は正しい記述です。選びやすい理由:電解質異常の原因として一般的ではないため、見落とされやすいかもしれません。しかし、特徴的なNaとClのバランスを示唆しています。混同注意:他の電解質異常や、測定法の原理に起因する異常値と混同する可能性があります。
- 4. Addison病(原発性副腎皮質機能低下症)では、アルドステロンの分泌が低下するため、腎臓でのナトリウム再吸収とカリウム排泄が障害されます。これにより、低ナトリウム血症、高カリウム血症、および代謝性アシドーシスを伴う低クロール血症が見られます。正しくは:Addison病では低Na血症と低Cl血症が一般的です。選びやすい理由:電解質異常を伴う疾患として知られているため、選択肢として考えられる可能性があります。混同注意:他の内分泌疾患による電解質異常と混同する可能性があります。
- 5. Cushing症候群(副腎皮質機能亢進症)では、過剰なコルチゾールによりアルドステロン様作用が生じ、腎臓でのナトリウム再吸収が促進され、カリウム排泄が増加します。結果として高ナトリウム血症、低カリウム血症、および代謝性アルカローシスを伴う高クロール血症または正常クロール血症が見られますが、本症例のようなNaとClの乖離は典型的ではありません。正しくは:Cushing症候群では高Na血症と低K血症が見られますが、Naが140mmol/LでClが125mmol/Lという状況は典型的ではありません。選びやすい理由:電解質異常を伴う内分泌疾患として知られているため、選択肢として考えられる可能性があります。混同注意:他の内分泌疾患による電解質異常と混同する可能性があります。
国試ポイント
イオン選択電極法における測定原理の理解と、特異的な電解質異常をきたす疾患や物質の影響に関する知識が問われています。特に、臭素中毒がイオン選択電極法によるCl測定に与える影響(擬似的な高Cl血症)を理解しているかが重要です。
混同注意
他の電解質異常を引き起こす疾患や、測定干渉を起こす他の物質との区別が混乱しやすい点です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、NaとClの数値からアニオンギャップの変化を迅速に推定し、その変化を引き起こす特定の病態や測定誤差の原因(特に薬剤や異物の影響)に注意を払う必要があります。
関連知識
イオン選択電極法の原理、アニオンギャップの計算と臨床的意義、各疾患における電解質異常パターン(Addison病、Cushing症候群、尿崩症、嘔吐など)、臭素中毒。