腫瘍細胞で特異的に産生されるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第63回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
BCR-ABL融合タンパク質は、慢性骨髄性白血病(CML)において特異的に認められる染色体転座t(9;22)によって生じる融合遺伝子から翻訳される異常タンパク質です。これは正常細胞では産生されず、CMLの腫瘍細胞にのみ発現するため、腫瘍細胞で特異的に産生される物質として最も適切です。他の選択肢は、腫瘍マーカーとして用いられるものの、正常細胞でも産生されたり、良性疾患でも上昇したりする可能性があり、腫異細胞特異性という点ではBCR-ABL融合タンパク質には劣ります。
選択肢ごとの解説
- 1. NSEは、神経内分泌細胞や小細胞肺癌などで高値を示す腫瘍マーカーですが、正常の神経細胞や赤血球にも存在するため、腫瘍細胞に特異的に産生されるとは言えません。正しくは:NSEは神経細胞や神経内分泌細胞由来の腫瘍で高値を示しますが、正常組織にも存在します。選びやすい理由:小細胞肺癌のマーカーとしてよく知られているため、特異的なものと誤解しやすい。混同注意:他の腫瘍マーカーの特異性と混同しやすい。
- 2. hCGは、妊娠時に胎盤で産生されるホルモンであり、精巣腫瘍や絨毛性疾患などの特定の腫瘍でも産生されますが、腫瘍細胞に特異的な産物というよりは、妊娠という生理的状態でも産生される物質です。正しくは:hCGは妊娠時に胎盤で産生される他、一部の腫瘍でも産生されます。選びやすい理由:精巣腫瘍や絨毛癌のマーカーとして有名なので、腫瘍特異的と錯覚しやすい。混同注意:胎盤での産生と腫瘍での異所性産生を混同しやすい。
- 3. SCC抗原は、扁平上皮癌で高値を示す腫瘍マーカーですが、正常な扁平上皮細胞や良性の皮膚疾患、炎症性疾患などでも上昇することがあり、腫瘍細胞に完全に特異的とは言えません。正しくは:SCC抗原は扁平上皮癌で高値を示しますが、良性疾患でも上昇することがあります。選びやすい理由:「扁平上皮癌関連」という名称から、特異性が高いと誤解しやすい。混同注意:特定の癌種と関連するマーカー全般の特異性と混同しやすい。
- 4. CA15-3は、主に乳癌で高値を示す腫瘍マーカーですが、他の癌種や良性疾患、生理的状態でも上昇することがあり、腫瘍細胞に特異的に産生されるとは言えません。特に、MUC1糖タンパク質の細胞外ドメインであり、正常な腺上皮細胞にも存在します。正しくは:CA15-3は乳癌で高値を示すことが多いですが、他の疾患や正常組織でも存在します。選びやすい理由:乳癌の重要なマーカーであるため、特異性が高いと思いやすい。混同注意:MUC1の正常な発現と腫瘍での過剰発現・異所性発現の区別を混同しやすい。
- 5. 正解。BCR-ABL融合タンパク質は、フィラデルフィア染色体t(9;22)転座によって形成されるBCR遺伝子とABL遺伝子の融合遺伝子から産生される、慢性骨髄性白血病(CML)の病態に特異的な異常タンパク質です。これは正常細胞では産生されず、CMLの腫瘍細胞にのみ特異的に発現するため、設問の条件に最も合致します。正しくは:この選択肢は正しいです。選びやすい理由:他の選択肢も腫瘍マーカーとして有名なので、識別が難しいかもしれない。混同注意:一般的な腫瘍マーカーと、染色体異常に起因する『融合タンパク質』のような分子標的薬の対象となる特異的な産物を混同しやすい。
国試ポイント
腫瘍マーカーや癌関連分子のうち、病態に極めて特異的であるものと、一般的なスクリーニングや経過観察に用いられるが特異性が低いものの区別を問う問題。特に、遺伝子異常に起因する融合タンパク質が、その異常を持つ腫瘍細胞にのみ特異的に産生されるという点を理解しているかが重要。
混同注意
一般的な血中腫瘍マーカーと、特定の遺伝子異常に起因する分子病態マーカー(融合タンパク質など)の概念および特異性の違い。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出たら、各腫瘍マーカーの「特異性」と「感度」を比較し、特に遺伝子異常に直結する産物(融合遺伝子産物など)が、その異常を持つ細胞に「特異的」であるという特性に着目して判断する。また、分子標的薬の対象となる物質は特異性が高い傾向にあることを押さえる。
関連知識
フィラデルフィア染色体、慢性骨髄性白血病(CML)、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)、分子標的治療、各種腫瘍マーカー(AFP, CEA, CA19-9, PSAなど)の特異性と感度。