腸内細菌科の細菌をTSI培地(左)とSIM培地(右)へ接種し、35℃で好気培養した結果(別冊No. 11)を別に示す。SIM培地にはインドール試薬を滴下済みである。考えられる細菌はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第67回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
提示されたTSI培地の結果は「斜面が黄色、基底部が黄色、気泡形成あり」であり、これはA/A(グルコースおよび乳糖・スクロース分解による酸産生)、ガス産生陽性を示します。SIM培地の結果は「硫化水素産生なし(黒変なし)、インドール試薬滴下後に赤色リング形成あり(インドール陽性)、培地全体に拡散(運動性陽性)」です。これらの性状をすべて満たすのはEscherichia coliの典型的な性状です。
選択肢ごとの解説
- 1. Citrobacter freundiiは通常、硫化水素(H2S)を産生するため、SIM培地で黒変が見られます。本問題のSIM培地はH2S陰性です。正しくは:硫化水素産生(SIM培地で黒変)が陽性であれば、Citrobacter freundiiの可能性が高まります。選びやすい理由:腸内細菌科であるため、候補の一つになりやすいですが、H2S産生能が異なります。混同注意:他のH2S産生菌(例: Salmonella spp., Proteus spp.)と混同することがあります。
- 2. 正解。Escherichia coliはTSI培地でA/A(斜面・基底部ともに酸産生による黄色化)、ガス産生陽性を示します。また、SIM培地では硫化水素陰性、インドール陽性、運動性陽性を示す典型的な性状を持っています。これは提示された画像の結果と一致します。正しくは:この選択肢は正しいため、修正の必要はありません。選びやすい理由:代表的な腸内細菌であり、多くの学生が性状を覚えているため、選択しやすいです。混同注意:Klebsiella spp.との鑑別で運動性やインドール産生の有無が重要になります。
- 3. Klebsiella pneumoniaeはTSI培地でA/A、ガス産生陽性を示す点はE. coliと似ていますが、SIM培地ではインドール陰性(ただし一部陽性株あり)かつ運動性陰性であることが特徴です。本問題のSIM培地はインドール陽性、運動性陽性を示しているため、当てはまりません。正しくは:インドール陰性、運動性陰性であれば、Klebsiella pneumoniaeの可能性が高まります。選びやすい理由:E. coliと同様に代表的な腸内細菌で、TSI培地の性状が似ているため、混乱しやすいです。混同注意:E. coliとの鑑別点をしっかり覚えていないと間違えやすいです。特に運動性で鑑別されます。
- 4. Proteus vulgarisはTSI培地でK/A(斜面アルカリ・基底部酸)、ガス産生陽性、硫化水素(H2S)産生陽性(黒変)を示します。また、SIM培地でもH2S産生陽性、インドール陽性、運動性陽性を示しますが、TSI培地のK/Aが画像結果(A/A)と異なります。正しくは:TSI培地でK/A(斜面赤色、基底部黄色)およびH2S産生(黒変)が陽性であれば、Proteus vulgarisの可能性が高まります。選びやすい理由:インドール陽性、運動性陽性、ガス産生陽性の点は共通する部分がありますが、TSIの基質利用とH2S産生が異なります。混同注意:他のProteus属菌(P. mirabilisはインドール陰性)や、H2S産生菌(Salmonella, Citrobacter)と混同することがあります。
- 5. Shigella sonneiはTSI培地でK/A(斜面アルカリ・基底部酸)、ガス産生陰性、硫化水素産生陰性を示します。本問題のTSI培地はA/A、ガス産生陽性であり、SIM培地も運動性陽性であるため、Shigella sonneiの性状とは一致しません。正しくは:TSI培地でK/A、ガス陰性、H2S陰性、SIM培地で運動性陰性であれば、Shigella sonneiの可能性が高まります。選びやすい理由:TSIで乳糖非分解(K/A)を示す菌として知られていますが、画像の結果とは異なります。混同注意:Salmonella属や他の腸内細菌科の乳糖非分解菌と混同しやすいです。運動性やガス産生の有無が重要な鑑別点です。
国試ポイント
腸内細菌科の主要な菌種のTSI培地とSIM培地における生化学的性状を正確に覚えているかが問われます。特に、TSIの糖分解パターン(A/A, K/A, K/K)、ガス産生、硫化水素産生、そしてSIM培地の硫化水素産生、インドール産生、運動性の組み合わせを鑑別に利用する能力が求められます。
混同注意
Escherichia coliとKlebsiella pneumoniaeはTSI培地の性状が類似しているため混同しやすいですが、SIM培地のインドール産生と運動性で鑑別します。また、硫化水素産生菌(Citrobacter, Proteus, Salmonella)との区別も重要です。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の論点が出題された場合、TSI培地のA/A、K/A、K/Kのパターンとガス産生、H2S産生、およびSIM培地のH2S、インドール、運動性の3つの組み合わせを確実に判断できるかを確認します。
関連知識
TSI培地では、斜面は好気環境で乳糖・スクロース分解、基底部は嫌気環境でグルコース分解を評価します。SIM培地は、硫化水素産生(鉄塩との反応で黒変)、トリプトファンからのインドール産生(インドール試薬で赤変)、運動性(培地の濁り)を評価します。これらの組み合わせにより、腸内細菌科の菌を鑑別します。