線溶亢進による出血傾向を認める先天性疾患はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第71回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
PAI-1(プラスミノゲン活性化因子インヒビター-1)は、プラスミノゲンをプラスミンに変換する酵素であるt-PAやu-PAの働きを抑制し、線溶反応を調節する主要な因子です。PAI-1が欠損すると、t-PAやu-PAが過剰に作用し、プラスミンが多量に生成されます。この過剰なプラスミンがフィブリンを分解しすぎることで、止血栓が不安定になり、出血しやすい状態(線溶亢進による出血傾向)となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。PAI-1(プラスミノゲン活性化因子インヒビター-1)は、線溶を促進するt-PAやu-PAの働きを阻害し、線溶反応を抑制する因子です。PAI-1が欠損すると、線溶系の抑制が解除され、プラスミンの産生が過剰になり線溶が亢進するため、出血傾向をきたします。
- 2. プロテインSは、プロテインCとともに活性化プロテインC(APC)の補因子として働き、凝固因子(第Va因子、第VIIIa因子)を分解することで凝固を抑制します。プロテインSが欠損すると、凝固抑制作用が低下するため、血栓傾向をきたします。正しくは:凝固抑制作用が低下し、血栓傾向を引き起こします。選びやすい理由:凝固系と線溶系が密接に関連しているため、凝固抑制因子の欠損が出血につながると誤解する可能性があります。しかし、凝固抑制因子の欠損は血栓傾向を招きます。混同注意:プロテインC欠損症やアンチトロンビン欠損症など、他の凝固抑制因子の欠損症と同様に、血栓傾向をきたす疾患群と混同しやすいです。
- 3. 高ホモシステイン血症は、血管内皮細胞を傷害し、血栓形成を促進することで、血栓症のリスクを増加させます。線溶亢進による出血傾向とは直接関係ありません。正しくは:血管内皮傷害により血栓症のリスクを増加させます。選びやすい理由:血液や血管に関わる疾患であるため、出血傾向と関連があるように感じるかもしれませんが、主な病態は血栓傾向です。混同注意:特定の凝固・線溶因子ではなく、代謝異常が原因で血管に影響を及ぼす疾患であるため、凝固・線溶系の先天性疾患とは区別して考える必要があります。
- 4. プラスミノゲンは、線溶系の中心的な酵素であるプラスミンの前駆体です。プラスミノゲンが欠損すると、プラスミンの生成が不十分となり、線溶能が低下するため、フィブリンが分解されにくく血栓傾向をきたします。正しくは:プラスミンの生成が減少し、線溶能が低下するため血栓傾向を引き起こします。選びやすい理由:線溶系の主要な因子であるため、欠損すると線溶亢進につながると誤解しやすいですが、実際は線溶能が低下します。混同注意:PAI-1欠損症のように、線溶抑制因子の欠損による線溶亢進とは逆の病態を示します。プラスミンの生成に関わる因子が欠損すると線溶能が低下することを理解しておく必要があります。
- 5. アンチトロンビンは、トロンビン(第IIa因子)や第Xa因子などの主要な凝固因子を不活化し、凝固反応を抑制する強力な抗凝固因子です。アンチトロンビンが欠損すると、凝固抑制作用が低下するため、血栓傾向をきたします。正しくは:凝固抑制作用が低下し、血栓傾向を引き起こします。選びやすい理由:プロテインS欠損症と同様に、凝固抑制因子の欠損が出血傾向につながると誤解しやすいですが、血栓傾向が正しいです。混同注意:プロテインC欠損症やプロテインS欠損症など、他の凝固抑制因子の欠損症と同様に、血栓傾向をきたす疾患群と混同しやすいです。
国試ポイント
凝固・線溶系の各因子の役割と、その欠損や異常がどのような病態(出血傾向か血栓傾向か)を引き起こすかを正確に理解しているかが問われています。特に、線溶系の制御機構と、その破綻が線溶亢進または線溶抑制のどちらにつながるかを区別できるかどうかが重要です。
混同注意
凝固系と線溶系の因子が多数あるため、それぞれの役割と欠損時の影響(出血傾向か血栓傾向か)を混同しやすいです。特に、プラスミノゲン欠損症とPAI-1欠損症は、線溶系に関わるが真逆の病態を引き起こすため注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
次に類題が出た場合、各因子が「凝固を促進するか抑制するか」「線溶を促進するか抑制するか」を判断し、その因子の「欠損」がどのような影響(促進が抑制に、抑制が促進に)をもたらすかを論理的に導き出す練習をしましょう。特に、PAI-1が「線溶を抑制する」因子であり、その「欠損」は「線溶亢進」につながる、という論理の流れを理解することが重要です。
関連知識
凝固系因子の欠損症(血友病など)は出血傾向を、凝固抑制因子(プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンなど)の欠損症は血栓傾向を引き起こします。線溶系因子(プラスミノゲン、t-PAなど)の欠損症は血栓傾向を、線溶抑制因子(PAI-1、α2-プラスミンインヒビターなど)の欠損症は出血傾向を引き起こします。