遺伝子の変異原と人体への影響の組合せで最も関連の深いのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第63回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
ベンゾピレンは多環芳香族炭化水素の一種であり、タバコの煙、煤、焼き焦げた食品などに含まれる強力な化学変異原です。特に皮膚に接触した場合や、代謝されて生じる活性中間体がDNAを損傷することで、皮膚癌(例:煙突掃除夫の陰嚢癌)を引き起こすことがよく知られています。この組み合わせは、特定の化学物質とそれに関連の深い癌との典型的な例として適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 放射線は変異原であり様々な癌を誘発しますが、大腸癌との特異的な関連性はベンゾピレンと皮膚癌ほどの直接的な関連として知られていません。電離放射線は白血病、甲状腺癌、肺癌などとの関連が強いです。正しくは:放射線と白血病/甲状腺癌/肺癌選びやすい理由:放射線が発がん物質であることは広く知られているため、一般的な組み合わせとして選んでしまう可能性があります。混同注意:放射線による発がん性自体は正しいですが、特定部位の癌との関連の強さの点で混乱する可能性があります。
- 2. 紫外線は変異原であり皮膚癌(特に基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫)の主要な原因ですが、甲状腺癌との直接的な関連は一般的には強くないとされています。甲状腺癌のリスク因子は主に電離放射線への曝露です。正しくは:紫外線と皮膚癌選びやすい理由:紫外線が発がん物質であることは理解しているため、別の癌との組み合わせでも正しいと思ってしまうかもしれません。混同注意:紫外線による皮膚癌と、電離放射線による甲状腺癌を混同しやすいです。
- 3. 活性酸素はDNA損傷を引き起こす変異原であり、広範な癌発生に関与する可能性が指摘されていますが、乳癌との特異的な直接的な関連が他の選択肢の組み合わせほど明確に確立されているわけではありません。正しくは:活性酸素は一般的なDNA損傷因子として様々な癌発生に関与する可能性がありますが、特定の癌との強力な組み合わせとしては提示されにくいです。選びやすい理由:活性酸素がDNA損傷や老化に関わることは知られているため、乳癌との関連も自然に思えてしまうかもしれません。混同注意:活性酸素の汎用的なDNA損傷作用と、特定の癌との因果関係の強さを混同しやすいです。
- 4. 正解。ベンゾピレンは多環芳香族炭化水素(PAH)の一種で、タバコの煙や煤煙などに含まれる強力な発がん物質です。皮膚に接触したり、皮膚で代謝されたりすることで皮膚癌のリスクを高めることが知られています。特に煙突掃除夫の陰嚢癌は、ベンゾピレンへの曝露が原因であることが古くから報告されています。選びやすい理由:これは癌原性物質とその特定の標的臓器との古典的な関連を示す良い例です。混同注意:他の一般的な発がん物質との関連と混同しないように注意が必要です。
- 5. ニトロソ化合物(例: N-ニトロソアミン)は強力な変異原であり、様々な臓器に癌を誘発することが知られていますが、特に消化器系癌(食道癌、胃癌)との関連が強いとされます。肺癌の主要なリスク因子は喫煙(タバコ煙中のベンゾピレンなど)です。正しくは:ニトロソ化合物と消化器系癌(食道癌、胃癌)選びやすい理由:ニトロソ化合物も発がん物質として有名なので、何らかの癌と関連があると思い選んでしまうかもしれません。混同注意:ニトロソ化合物の標的臓器(消化器系)と、肺癌の主要なリスク因子(喫煙)を混同しやすいです。
国試ポイント
本問題は、特定の化学変異原(発がん物質)と、それが特に誘発しやすい癌の部位(標的臓器)との最も関連の深い組み合わせを問うものです。個々の変異原の発がんメカニズムや標的臓器に関する知識が求められます。一般的な発がん物質の知識だけでなく、その特異性まで問われる点がポイントです。
混同注意
各選択肢の発がん物質は確かに変異原であり、癌を誘発する可能性があります。しかし、国試ではその中で『最も関連が深い』組み合わせ、つまり特異性が高い組み合わせが正答となる傾向にあります。一般的な発がん性と、特定の臓器への発がん性の強さ・特異性を混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、個々の変異原について「どのような化学構造か」「主な曝露源は何か」「どの臓器に特に強い発がん性を示すか」の3点を中心に確認すると良いでしょう。また、有名な職業性発がん物質とそれに関連する癌の組み合わせも重要です。
関連知識
化学変異原の種類(例:多環芳香族炭化水素、芳香族アミン、ニトロソ化合物、アルキル化剤)、物理的変異原(放射線、紫外線)、生物学的変異原(ウイルス)。それぞれの主要な標的臓器や関連する癌種。喫煙、飲酒、食事などの生活習慣と癌発生の関連。