我が国で輸血による感染の頻度が最も高いのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第71回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
現在の日本の輸血管理体制では、HBV、HCV、HIV、HTLV-1などの感染症に対し、核酸増幅検査 (NAT) や抗体検査などの厳格なスクリーニングが行われています。しかし、HBVについては、感染初期のウイルス量が低すぎて検査で検出できない「ウィンドウ期」が存在することや、他のウイルスに比べて非常に感染力が高い特性から、完全にリスクを排除することは困難です。そのため、すべてのスクリーニング検査を通過した血液であっても、輸血による感染事例の報告頻度は他のウイルスと比較してHBVが最も高いとされています。特に、高感度なNAT導入後も稀に感染事例が報告されており、そのほとんどがHBVによるものです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。輸血後感染症のスクリーニング検査は厳格に行われていますが、献血からHBV感染の初期段階で検出できない「ウィンドウ期」のリスク、およびHBVの潜在的な感染性が他のウイルスと比較して高いため、現在でも輸血による感染リスクが最も高いとされています。特に、低レベルのウイルス量ではPCR検査でも検出が難しい場合があります。
- 2. HCVはかつて輸血後肝炎の主要原因でしたが、現在では核酸増幅検査 (NAT) の導入により、輸血による感染リスクは極めて低減されました。正しくは:かつて輸血後肝炎の主要原因であったが、現在はNAT導入によりリスクは低い。選びやすい理由:過去に輸血後肝炎の主要原因であったという知識から、選択肢として魅力的だが、現状の対策によりリスクは大幅に減少している。混同注意:HBVとHCVの過去の感染経路の主要因を混同しやすい。
- 3. HIVもNAT検査の導入により、輸血による感染リスクは非常に低い水準に抑えられています。ウィンドウ期も存在しますが、現在の検査制度ではHBVと比較して頻度は格段に低いです。正しくは:NAT検査の導入により、輸血による感染リスクは極めて低い。選びやすい理由:HIVは重篤な疾患であるため、重要視されやすいが、現在の検査体制下では頻度は低い。混同注意:感染症の重篤度と感染頻度を混同しやすい。
- 4. HTLV-1は献血時に抗体検査が行われており、感染が判明した血液は輸血に使用されません。そのため、輸血による感染は非常に稀です。正しくは:献血時の抗体検査により、輸血による感染リスクは極めて低い。選びやすい理由:日本では流行地域があるため、気になるかもしれないが、検査体制により管理されている。混同注意:地域的な流行と輸血時のスクリーニングの有効性を混同しやすい。
- 5. SARS-CoV-2の輸血による感染リスクは極めて低いとされています。呼吸器感染症であり、ウイルス血症の期間やウイルス量が輸血を介して感染を起こすには不十分であると考えられています。また、現在のパンデミック状況下でも献血スクリーニングは厳格に行われています。正しくは:呼吸器系ウイルスであり、輸血を介した感染リスクは極めて低い。選びやすい理由:最近のパンデミックを引き起こしたウイルスであり、身近に感じるため選択肢として魅力的に映るが、輸血感染経路としては主要ではない。混同注意:流行している感染症と輸血感染リスクの有無を混同しやすい。
国試ポイント
輸血による感染症のリスク管理に関する最新の知識、特にスクリーニング検査の限界と、それによって現在最も注意すべき感染症を問う問題です。各ウイルスの特性と現在の検査体制(NATの導入効果)を理解しているかが重要です。
混同注意
かつて輸血後感染症の主要な原因であったHCVや、重篤な疾患であるHIVと混同しやすい。しかし、現在の検査体制下での残存リスクはHBVが最も高いという点を把握する必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が問われた場合、最新の検査技術(特にNAT)の導入による各ウイルスの感染リスクの変化と、それでもなお残るリスク(ウィンドウ期やウイルスの特性に起因するもの)に注目して判断する。特にHBVの低ウイルス量感染や不完全な検出に焦点を当てた問題が出題される可能性があります。
関連知識
輸血後感染症のウィンドウ期、核酸増幅検査 (NAT) の原理と限界、各感染症の疫学と感染経路、献血時のスクリーニング項目。