子宮頸部細胞診のPapanicolaou染色標本(別冊No. 9)を別に示す。考えられる感染はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第71回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
提示された子宮頸部細胞診のパパニコロウ染色標本では、核内封入体を伴う多核巨細胞が観察されます。これはヘルペスウイルス感染に特徴的な細胞所見です。特に、核のクロマチンが辺縁に押しやられ、すりガラス状に見える特徴的な核所見(核クロマチン辺縁凝集、すりガラス状核)が確認でき、複数の核が融合した巨細胞を形成しているため、ヘルペスウイルスによる感染が最も強く示唆されます。
選択肢ごとの解説
- 1. カンジダ感染では、偽菌糸(酵母の出芽が連なったもの)や出芽酵母、炎症細胞の浸潤が見られますが、核内封入体や多核巨細胞は観察されません。提示された画像とは異なる所見です。正しくは:カンジダ感染の典型的な所見は、パパニコロウ染色で染まる細長い偽菌糸や卵円形の出芽酵母、および炎症細胞の浸潤です。選びやすい理由:子宮頸部における感染症として一般的であるため、選択肢として考慮されやすいですが、細胞所見は全く異なります。混同注意:他の真菌感染症や細菌性腟症などによる炎症反応と混同する可能性がありますが、菌体そのものの形態で鑑別可能です。
- 2. クラミジア感染は、細胞診では特徴的な細胞内封入体や好中球の浸潤を伴う炎症反応が見られることがありますが、ウイルス感染のような核の変化や多核巨細胞は形成されません。細胞所見は非特異的であることが多く、この画像所見とは異なります。正しくは:クラミジア感染の細胞診は、腺細胞の変性や好中球の浸潤、細胞質内封入体が見られることがありますが、診断は困難な場合が多く、分子生物学的検査が推奨されます。選びやすい理由:クラミジアも子宮頸部の一般的な性感染症であるため、選択肢として考えやすいかもしれません。混同注意:他の細菌感染による炎症所見や、非特異的な腺細胞の反応と混同する可能性があります。
- 3. トリコモナス感染では、パパニコロウ染色で染まる特徴的な洋ナシ型の原虫(トリコモナス)や、それに付着した細菌(コッカス様)が観察されます。また、間接的な所見として、表層細胞や中間層細胞の核の腫大やクロマチンの粗造化、核周囲のハローを伴わない空胞変性、炎症細胞の浸潤が見られます。画像のような多核巨細胞や核内封入体は認められません。正しくは:トリコモナス感染の細胞診は、洋ナシ型でやや青灰色に染まるトリコモナス原虫の検出と、それに伴う細胞の変化や炎症細胞の浸潤です。選びやすい理由:トリコモナスも性感染症であり、子宮頸部細胞診で検出されることがあるため、選択肢として考えやすいですが、病原体そのものや細胞の変化の形態が画像とは異なります。混同注意:細胞の変性や細菌性腟症などによる炎症反応と混同することがありますが、トリコモナス原虫の特異的な形態で鑑別可能です。
- 4. 正解。画像には、複数の核が融合した多核巨細胞が観察され、各核には核内封入体が認められます。特に、核のクロマチンが核膜の辺縁に凝集し、核中央部が「すりガラス状」に透明化している所見(ground glass appearance)は、ヘルペスウイルス感染に非常に特徴的です。これらの所見はヘルペスウイルスによる細胞変性効果(CPE)を示しており、子宮頸部細胞診におけるヘルペスウイルス感染の診断基準となります。
- 5. ヒトパピローマウイルス(HPV)感染の細胞学的特徴は、コイロサイト(koilocyte)の出現です。コイロサイトは、核の腫大、濃染、不整形の核、核周囲の明瞭なハロー(空胞)を伴う細胞です。画像に見られる多核巨細胞や核内封入体、すりガラス状核とは異なる所見であり、HPV感染の典型的な細胞像ではありません。正しくは:HPV感染の典型的な細胞所見は、核の異型性、濃染、不整形を伴い、核周囲に明瞭な空胞(ハロー)を持つコイロサイトです。選びやすい理由:HPVは子宮頸がんの主要な原因ウイルスであり、子宮頸部細胞診で最も頻繁に診断されるウイルス感染の一つであるため、選択肢として選びやすいですが、細胞所見は異なります。混同注意:ヘルペスウイルス感染とHPV感染はどちらもウイルス感染による細胞の変化ですが、その形態学的特徴は明確に異なります。核内封入体の有無や多核巨細胞の形成が鑑別点となります。
国試ポイント
子宮頸部細胞診のパパニコロウ染色標本における、各種感染症の細胞学的特徴を識別する能力が問われています。特にウイルス感染による特徴的な核所見(核内封入体、多核巨細胞、すりガラス状核など)の理解が重要です。
混同注意
多核巨細胞はヘルペスウイルスだけでなく、異物反応や炎症など他の病態でも見られることがありますが、ヘルペスウイルス感染では特徴的な核の形態(核内封入体、クロマチン辺縁凝集)を伴う点で鑑別できます。また、HPV感染で見られるコイロサイトは核の異型性とN/C比の増大、ハローを伴いますが、ヘルペスウイルスの特徴的な核内封入体や多核巨細胞とは異なります。
次に同じ論点が出たら
同様の画像問題が出題された場合、まず細胞の核の形態、特に核内封入体や核クロマチンの辺縁凝集の有無に注目します。次に、多核細胞の有無を確認し、複数の核が融合しているかどうかを判断します。これらの特徴が複合的に認められれば、ヘルペスウイルス感染を強く疑います。他の選択肢の病原体による細胞所見と比較して鑑別できるように知識を整理しておくことが重要です。
関連知識
ヘルペスウイルス感染は、性器ヘルペスとして知られ、性行為によって感染が広がる性感染症の一つです。初感染では重い症状を示すことがありますが、多くの場合、無症状のまま経過し、免疫力の低下などで再活性化することがあります。細胞診では、上記の典型的な細胞所見が認められた場合、確定診断のためにウイルス分離やPCR法などの分子生物学的検査が追加で実施されることがあります。