冷蔵保存した全血検体で検査可能なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
HBs抗体検査は血清中の抗体を検出する免疫学的検査であり、抗体分子は冷蔵保存によって安定性が損なわれることがほとんどありません。そのため、全血を冷蔵保存し、後で血清分離を行っても検査は適切に実施可能です。他の選択肢の検査は、低温によって測定対象物質が沈殿・凝集したり、赤血球や補体に影響を与えたりするため、冷蔵保存した全血では正確な結果が得られないか、検査実施に特別な配慮が必要となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 寒冷凝集素は冷温で赤血球に結合し凝集を引き起こす抗体です。全血検体を冷蔵すると、採血前にすでに寒冷凝集素が赤血球に結合・凝集してしまう可能性があり、正確な測定が困難になります。正しくは:採血後、検体を37℃で保温し、凝集が起きない状態で血清を分離して検査します。選びやすい理由:「寒冷」という言葉から冷蔵保存が適していると誤解しやすいですが、これは検査で検出する抗体が寒冷で活性化するという意味であり、検体そのものを冷蔵すると検査結果に影響が出るため不適です。混同注意:寒冷凝集素の活性化温度と検体保存温度の要件を混同しやすいです。
- 2. 正解。HBs抗体は血清(または血漿)中に存在する免疫グロブリンであり、冷蔵保存によってその構造や抗原抗体反応性が損なわれることはありません。全血を冷蔵保存した後でも血清分離を行えば、検査は問題なく実施可能です。
- 3. クリオグロブリンは冷温で可逆的に沈殿するタンパク質です。全血検体を冷蔵すると、クリオグロブリンが採血前に試験管内で沈殿してしまい、正確な測定値が得られなくなる可能性があります。正しくは:採血後、検体を37℃で保温し、沈殿を避けた状態で血清を分離して検査します。選びやすい理由:「クリオ」(寒冷)という言葉から冷蔵保存と関連があるように思えますが、これは検出対象が寒冷で沈殿するという意味であり、検体そのものを冷蔵すると偽低値となるため不適です。混同注意:クリオグロブリンの特性と検体保存温度の要件を混同しやすいです。
- 4. 直接抗グロブリン試験は、赤血球表面に結合している抗体や補体を検出する検査です。冷蔵保存した全血では、赤血球の変性や、in vitroでの補体活性化(非特異的な補体結合)が起こる可能性があり、偽陽性や判定困難となることがあります。特に補体結合は冷蔵で促進されやすいです。正しくは:採血後速やかに検査を実施するか、EDTA加血を用いて冷蔵(4℃)で24時間以内とします。ただし、その場合でも補体結合による偽陽性リスクに注意が必要です。選びやすい理由:EDTA加血であれば冷蔵保存可能という情報を断片的に知っていると、全血の冷蔵保存でも可能だと誤解する可能性がありますが、厳密な条件が必要です。混同注意:EDTA加血の場合の保存条件と、非特異的な補体結合による偽陽性の可能性を混同しやすいです。
- 5. Donath-Landsteiner反応は、二相性溶血素(Donath-Landsteiner抗体)を検出する検査です。この抗体は低温で赤血球に結合し、その後37℃で溶血を引き起こします。全血を冷蔵保存すると、採血前の段階で抗体が赤血球に結合したり、補体が消費されたりする可能性があり、正確な反応評価が困難になります。正しくは:検査には新鮮な血清と洗浄赤血球を用いることが重要であり、採血後は37℃で保温し、血清を速やかに分離・凍結保存し、赤血球も適切に準備します。選びやすい理由:「寒冷」という言葉が反応名に含まれるため、冷蔵保存が適していると誤解しやすいですが、これは検査の手順の一部であり、検体そのものを冷蔵保存することは推奨されません。混同注意:検査プロトコルにおける寒冷処理と、検体の保存方法を混同しやすいです。
国試ポイント
検体の適切な取り扱いと保存条件は、検査結果の信頼性を確保するために極めて重要です。特に温度による影響を受けやすい検査項目を理解しているかが問われます。採血後の温度管理が検査結果にどう影響するか(偽陽性、偽陰性、測定誤差など)を把握しておく必要があります。
混同注意
「寒冷」や「クリオ」といった言葉が含まれる検査は、検体を冷蔵することがかえって検査に不都合な影響を与えることが多い点に注意が必要です。これらは検査反応の条件を指すのであって、検体保存の条件を指すわけではありません。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、各検査項目について『何』を測定しているのか、そしてその『何』が『どのような温度条件』で影響を受けるのかを考えることで、正しい判断ができるようになります。特に、細胞成分(赤血球など)や温度で活性化・沈殿・凝集する物質を測定する検査は、冷蔵保存に不適であることが多いです。
関連知識
検体処理の基本原則(検体の種類、凝固・遠心分離のタイミング、温度管理、安定性)、各検査項目の特性(抗体、酵素、細胞成分、凝固因子など)とそれらが温度や時間経過によってどう変化するか。特に、免疫学的検査における抗体の安定性、赤血球を対象とする検査における細胞の安定性、補体活性化の条件について理解が必要です。