FISH法による乳癌HER2検査の模式図(別冊No. 10)を示す。HER2とCEP17のシグナル比(HER2/CEP17)で最も近いのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第71回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
下図の細胞を見ると、緑色のHER2遺伝子シグナルが1細胞あたり平均して約6個、赤色のCEP17(17番染色体セントロメア)シグナルが平均して約2個確認できます。HER2/CEP17のシグナル比は「HER2シグナル数 ÷ CEP17シグナル数」で算出されるため、6 ÷ 2 = 3.0 となります。したがって、最も近いのは3.0です。
選択肢ごとの解説
- 1. HER2シグナルがCEP17シグナルよりも明らかに多いことから、比率が1.0を下回ることはありません。正しくは:HER2シグナルがCEP17シグナルの約3倍であるため、比率は約3.0となります。選びやすい理由:少数のHER2シグナルを見落としたり、CEP17シグナルを過大評価したりした場合に誤って選択される可能性があります。混同注意:HER2の増幅が認められない場合(比率が1.0付近)や欠損している場合(比率が1.0未満)の所見と混同する可能性があります。
- 2. 図を見ると、HER2シグナルがCEP17シグナルよりも明らかに多く存在しており、比率が1.0(等しい状態)ではありません。正しくは:HER2シグナルがCEP17シグナルの約3倍であるため、比率は約3.0となります。選びやすい理由:HER2遺伝子増幅がない場合の基準値であるため、誤って選択される可能性があります。混同注意:HER2の増幅がない状態(比率が約1.0)と、増幅している状態の区別ができていない場合に混同しやすいです。
- 3. 正解。画像中の細胞核を観察すると、緑色のHER2シグナルが1細胞あたり平均で約6個、赤色のCEP17シグナルが平均で約2個見られます。したがって、HER2シグナル数(約6)をCEP17シグナル数(約2)で割ると、比率はおおよそ3.0となります。
- 4. 画像中のHER2シグナルはCEP17シグナルの約3倍であり、10倍もの差はありません。HER2シグナルが過剰に多く(例: 20個以上)、CEP17シグナルが少ない場合にこのような比率になります。正しくは:HER2シグナルがCEP17シグナルの約3倍であるため、比率は約3.0となります。選びやすい理由:HER2シグナルの数が非常に多いと感じた場合や、数え間違いによって過大な比率を選択してしまう可能性があります。混同注意:HER2の高度な増幅(比率が非常に高い場合)と、中程度の増幅との区別が曖昧な場合に混同しやすいです。
- 5. 画像中のHER2シグナルはCEP17シグナルの約3倍であり、50倍もの極端な差はありません。この比率は、CEP17シグナルがほとんど見られず、HER2シグナルが非常に多数見られるような極めて稀なケースでしか発生しません。正しくは:HER2シグナルがCEP17シグナルの約3倍であるため、比率は約3.0となります。選びやすい理由:HER2シグナルが非常に多く見え、過剰な増幅であると判断した場合に、極端な高値を選択してしまう可能性があります。混同注意:HER2の非常に高度な増幅(比率が極めて高い場合)を、一般的な増幅と混同している可能性があります。
国試ポイント
FISH法によるHER2遺伝子増幅検査の原理と、画像からシグナル数を数え、比率を正確に算出する能力が問われています。特に、HER2とCEP17のシグナルを正確に識別し、数をカウントする実践的なスキルが重要です。HER2遺伝子増幅の判定基準(比率2.0以上で陽性など)も関連知識として必要です。
混同注意
HER2遺伝子の増幅状態と、染色体異数性(特に17番染色体)が混同されることがあります。CEP17は17番染色体のセントロメアを示すプローブであり、HER2遺伝子(17q12に位置)のコピー数変動に対する内部コントロールとして機能します。比率を評価することで、17番染色体全体の数の変化(異数性)ではなく、HER2遺伝子特異的な増幅を判断します。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の画像問題が出題された場合は、まずHER2(緑色)とCEP17(赤色)のシグナルをそれぞれ正確に数えること、そして、その平均値や代表的な細胞のシグナル数から比率を計算する手順が重要になります。また、HER2検査のIHC法とFISH法の役割分担、それぞれの判定基準値も合わせて確認しておきましょう。
関連知識
乳癌のHER2遺伝子増幅は、分子標的薬トラスツズマブ(ハーセプチン)の治療適応を決定するための重要なバイオマーカーです。FISH法は、免疫組織化学(IHC)法で判定がグレーゾーン(IHC 2+)の場合に、増幅の有無を確定するために用いられます。HER2/CEP17比が2.0以上で陽性と判定されるのが一般的です。