血中イオン化カルシウムが低下するのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第64回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
全血を室温で長時間放置すると、赤血球や白血球などの細胞代謝により二酸化炭素の逸脱や代謝性HCO3-の消費が起こり、血液のpHが上昇する傾向にあります。pHが上昇すると、血漿タンパク質(主にアルブミン)へのカルシウム結合が増加するため、血液中のイオン化カルシウム濃度は低下します。
選択肢ごとの解説
- 1. クレンチングは、筋活動により乳酸などの酸性代謝物が産生され、pHが低下し、イオン化カルシウムは増加する傾向があります。また、血管外からの水分移動により血漿タンパク質濃度が上昇し、総カルシウム値も上昇することがあります。正しくは:クレンチングはイオン化カルシウムを増加させる可能性があります。選びやすい理由:採血時の操作全般が検体値に影響を与えるため、漠然と誤りやすいと考えるかもしれませんが、具体的な影響を理解している必要があります。混同注意:静脈血採血時の他の影響(例:駆血時間の延長)と混同することがあります。
- 2. 正解。全血を室温で長時間放置すると、血球の代謝活動が続き、グルコースが消費されて乳酸などの酸性代謝物が産生されます。これによりpHが低下し、H+が増加することでカルシウム結合タンパク質(特にアルブミン)からのカルシウム解離が促進され、イオン化カルシウムは増加します。しかし、これは初期段階での話であり、より重要なのは、放置により二酸化炭素の逸脱や代謝によるHCO3-の減少などによってpHが上昇し、タンパク質へのカルシウム結合が増加し、イオン化カルシウムは減少するという現象です。特に、代謝亢進によりHCO3-が消費され、pHがアルカリ側に傾くこともイオン化カルシウムの結合を促進し低下させます。また、血小板から放出されるリン酸イオンがカルシウムと結合し、不溶性のリン酸カルシウムを形成して沈殿する可能性も指摘されています。しかし、最も直接的な理由は、二酸化炭素の逸脱によるpH上昇とそれによるタンパク質への結合増加です。正しくは:全血を室温で長時間放置すると、赤血球や白血球の代謝が継続し、乳酸などの酸性物質が産生されpHが低下し、初期にはイオン化カルシウムは増加する傾向があります。しかし、同時に二酸化炭素が血液中から逸脱することによりpHが上昇し、タンパク質との結合が増加するため、最終的にはイオン化カルシウムが低下します。また、細胞内からのリン酸放出なども影響します。一般的に、放置によりpHは上昇傾向となり、イオン化カルシウムは低下します。選びやすい理由:代謝産物により酸性に傾くと考えることで、イオン化カルシウムが増加すると誤解しやすいです。混同注意:検体の放置による一般的な変化(例:カリウムの上昇)と、イオン化カルシウムの特異的な変化を混同しやすいです。
- 3. 長時間の駆血は、局所の血流を阻害し、血管透過性を亢進させます。これにより、水分が血管内から組織へ移動し、血液が濃縮されます。その結果、血漿タンパク質濃度が上昇し、タンパク質と結合するカルシウムが増加します。しかし、この状態では酸性代謝物も蓄積し、pHが低下するため、タンパク質からのカルシウム解離が進み、イオン化カルシウムは増加する傾向にあります。総カルシウム値は上昇しますが、イオン化カルシウムは通常上昇します。正しくは:長時間の駆血は、イオン化カルシウムを増加させる可能性があります。選びやすい理由:駆血時間が長くなると検体変動が起こりやすいことは知られていますが、具体的な変動方向を間違えやすいです。混同注意:他の採血条件の影響(例:クレンチング)と混同しやすいです。
- 4. 立位での採血は、体位性変化により水分が血管外へ移動し、血液が濃縮されます。これにより、血漿タンパク質濃度(特にアルブミン)が上昇し、タンパク質に結合するカルシウム量が増加するため、総カルシウム値は上昇します。しかし、イオン化カルシウムは体位による変動を受けにくい、またはごくわずかに上昇することがあります。正しくは:立位での採血は、総カルシウムを増加させますが、イオン化カルシウムへの影響は少ないか、わずかに増加する可能性があります。選びやすい理由:体位変化が血漿成分に影響を与えることは知られていますが、その具体的な影響を誤解しやすいです。混同注意:総カルシウム値への影響と、イオン化カルシウム値への影響を混同しやすいです。
- 5. ヘパリンは血液凝固を阻害するために用いられる抗凝固剤ですが、その作用機序上、カルシウムをキレートする(結合する)性質を持っています。しかし、通常用いられるリチウムヘパリンやナトリウムヘパリンの標準的な濃度では、イオン化カルシウム測定に大きな影響を与えないように調整されています。ただし、過剰なヘパリンはカルシウムと結合し、イオン化カルシウム値を低下させる可能性があります。しかし、設問では単に「混入」とあり、過剰量とは限らないため、一般的にはEDTAなどの強力なキレート剤とは異なる影響を考えます。もし「過剰なヘパリン」であれば低下要因ですが、単なる「混入」であれば影響は限定的、あるいは測定系によっては許容範囲内です。正しくは:ヘパリンはカルシウムをキレートする性質がありますが、通常の使用量ではイオン化カルシウムに大きな影響を与えません。しかし、もし「過剰に混入」した場合、イオン化カルシウムを低下させる可能性があります。設問の意図としては、通常の使用量での影響ではなく、検体処理上の問題としての混入を指している可能性があります。選びやすい理由:ヘパリンが抗凝固剤であり、カルシウムが凝固因子であることを知っていると、ヘパリンがカルシウムに影響すると連想しやすいため、選択肢として魅力的です。混同注意:EDTAなどの強力なカルシウムキレート剤の影響と混同しやすいです。
国試ポイント
臨床検査において、採血後の検体管理が検査値に与える影響について問う問題です。特に、イオン化カルシウム値はpHの影響を強く受けるため、その変化の方向性を正確に理解しているかが重要となります。他の採血条件や抗凝固剤の影響との区別も求められます。
混同注意
検体の放置による一般的な変化(例:カリウムの上昇、グルコースの低下)と、イオン化カルシウムの特異的な変化(pHの影響)を混同しやすいです。また、他の採血条件(駆血、クレンチング、体位)が総カルシウム値やイオン化カルシウム値に与える影響の方向性を混同しやすい点も注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、イオン化カルシウム値が変動する要因として、特にpHの変化に着目し、pHとタンパク結合性カルシウム、イオン化カルシウムの関係を再確認する。また、他の電解質(K, Na, Cl)や代謝産物(グルコース、乳酸)の検体放置による変化も合わせて確認する。
関連知識
イオン化カルシウムは生体内で生理活性を持つ形態であり、pHの影響を強く受けます。pHが酸性側に傾くと、タンパク質からカルシウムが解離しイオン化カルシウムは増加します。逆にpHがアルカリ性側に傾くと、タンパク質へのカルシウム結合が増加しイオン化カルシウムは減少します。ヘパリンはわずかにカルシウムをキレートしますが、一般的な抗凝固用量ではイオン化カルシウム測定への影響は少ないとされています。EDTAは強力なカルシウムキレート剤であり、イオン化カルシウムを測定不能にするため使用できません。