成人男性がアフリカから帰国後に発熱した。末梢血厚層塗抹のGiemsa染色標本(別冊No. 1)を別に示す。この感染症について正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第67回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
マラリア原虫のライフサイクルにおいて、ヒトに感染したスポロゾイトはまず肝細胞に侵入し、そこで増殖してメロゾイトを形成します。この肝臓での増殖期間は潜伏期にあたり、症状はありません。その後、メロゾイトが赤血球に感染することでマラリアの臨床症状が発現します。したがって、感染初期に肝臓で増殖するという記述は正しいです。
選択肢ごとの解説
- 1. マラリアは重症化すると死に至る可能性があり、自然治癒を期待すべきではない。適切な抗マラリア薬による治療が必要である。正しくは:自然治癒は期待できず、速やかな治療が必要である。選びやすい理由:軽症のマラリアであれば、体力があれば回復することもあると誤解しやすいかもしれない。混同注意:他の軽度な感染症やウイルス疾患と混同する可能性がある。
- 2. マラリアには多様な抗マラリア薬が存在し、感染した原虫の種類や薬剤耐性に応じて選択される。適切な治療薬による治療が可能である。正しくは:有効な治療薬が存在する。選びやすい理由:熱帯病や寄生虫病には治療が困難なものが多いという一般的なイメージから、治療薬がないと誤解しやすい。混同注意:特定の寄生虫症(例えばリーシュマニア症の一部など)で治療が難しいものと混同しやすい。
- 3. マラリアはハマダラカ属の蚊が媒介する。ツェツェバエはトリパノソーマ症(アフリカ睡眠病など)を媒介する昆虫である。正しくは:ハマダラカが病原体を媒介する。選びやすい理由:アフリカの感染症の媒介昆虫としてツェツェバエという名前が有名であるため、知識が不確かな場合に選んでしまいやすい。混同注意:アフリカ睡眠病の原因となるトリパノソーマとマラリア原虫の媒介昆虫を混同しやすい。
- 4. 正解。マラリア原虫は、蚊によってヒトの体内に侵入した後、まず肝臓の細胞に感染し、そこで無性生殖による増殖(肝内期シゾゴニー)を行う。その後、赤血球に感染し発症する。選びやすい理由:マラリア原虫のライフサイクルに関する基本的な知識を問う選択肢であり、正確な知識があれば正答できる。混同注意:直接赤血球に感染して症状が出ると誤解する人もいるかもしれないが、肝臓での増殖期間は潜伏期間であり症状はない。
- 5. マラリアはマラリア原虫(Plasmodium属)という真核生物(アピコンプレックス門に属する原虫)による感染症である。細菌感染症ではない。正しくは:細胞内寄生性の原虫感染症である。選びやすい理由:細胞内寄生という特徴は正しいが、病原体が細菌であると誤解しやすい。微生物の種類に関する基本的な知識が不足していると間違えやすい。混同注意:リケッチアやクラミジアなどの細胞内寄生性細菌と混同しやすい。
国試ポイント
マラリア原虫の生活環と基本的な生物学的特性(病原体の種類、媒介昆虫、主要な臓器での増殖部位)を正確に理解しているかを問う問題です。特に、肝臓での増殖期は症状がないため、見落とされやすいポイントです。
混同注意
マラリア原虫のライフサイクルにおける肝臓期と赤血球期、媒介する昆虫(ハマダラカとツェツェバエ)、病原体の種類(原虫と細菌)を混同しやすい。特に、細胞内寄生という共通点から細菌と原虫の区別があいまいになりやすい。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、マラリア原虫の各ライフステージで存在する原虫の形態(スポロゾイト、メロゾイト、栄養体、シゾント、配偶体など)や、それぞれがどの組織(肝臓、赤血球、蚊の体内など)に存在するかを問う可能性があります。
関連知識
マラリア原虫の種類(熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリア)、それぞれの臨床症状や治療法の違い。抗マラリア薬の種類と作用機序。マラリアの診断法(血液塗抹標本、迅速診断キット)。