血中(1→3)-β-D-グルカンが高値となるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
血中の(1→3)-β-D-グルカンは、真菌の細胞壁に特異的に存在する多糖体であり、主に深部真菌症の診断マーカーとして用いられます。アスペルギルス属真菌の細胞壁にはこのグルカンが多量に含まれるため、アスペルギルス症では血中濃度が上昇します。一方、ムコール症の原因菌である接合菌類は(1→3)-β-D-グルカンをほとんど持たないため、このマーカーは上昇しません。細菌やウイルスは真菌とは異なる構造を持つため、それぞれの感染症で(1→3)-β-D-グルカンが上昇することはありません。
選択肢ごとの解説
- 1. ムコール菌(接合菌)の細胞壁には(1→3)-β-D-グルカンがほとんど含まれていないため、このマーカーは高値を示しません。正しくは:ムコール症の診断には、病理組織検査や培養、あるいはPCR検査が主に用いられます。(1→3)-β-D-グルカンは深部真菌症の一般的なマーカーですが、原因となる真菌の種類によっては陰性となることがあります。選びやすい理由:ムコール症も真菌感染症であるため、他の深部真菌症と同様に(1→3)-β-D-グルカンが上昇すると誤解しやすいです。混同注意:カンジダ症やアスペルギルス症など、他の多くの深部真菌症で(1→3)-β-D-グルカンが上昇することと混同しやすいです。ムコール症における陰性は、他の真菌症との鑑別点の一つとなります。
- 2. 溶血性レンサ球菌は細菌であり、(1→3)-β-D-グルカンは真菌の細胞壁に特異的に存在する多糖体であるため、細菌感染症では血中濃度は上昇しません。正しくは:細菌感染症の診断には、培養検査、抗体検査、PCR検査、あるいは炎症反応を示すCRPや白血球数などが用いられます。選びやすい理由:感染症全般に対する免疫反応の指標の一つと誤解し、細菌感染症でも上昇すると考える人がいるかもしれません。混同注意:CRP(C反応性タンパク)や白血球数のような、感染症全般で上昇しうる一般的な炎症マーカーと混同しやすいです。(1→3)-β-D-グルカンは真菌感染症に特異的なマーカーです。
- 3. 正解。アスペルギルス属の真菌の細胞壁には大量の(1→3)-β-D-グルカンが含まれており、この真菌による深部感染症(アスペルギルス症)では、血中の(1→3)-β-D-グルカン濃度が特徴的に上昇します。そのため、診断マーカーとして非常に有用です。
- 4. リケッチアは細菌の一種であり、(1→3)-β-D-グルカンは真菌の細胞壁成分であるため、リケッチア感染症では血中濃度は上昇しません。正しくは:リケッチア感染症の診断には、血清抗体価の測定(Weil-Felix反応など)やPCR検査などが用いられます。選びやすい理由:リケッチア感染症も感染症であるため、何らかの生体マーカーが上昇すると考える人がいるかもしれません。混同注意:真菌感染症以外の感染症の診断マーカー、例えば一般的な炎症マーカー(CRP)や特定の病原体に対する抗体検査などと混同しやすいです。
- 5. 新型コロナウイルスはウイルスであり、(1→3)-β-D-グルカンは真菌の細胞壁に特異的に存在する成分です。ウイルス感染症では(1→3)-β-D-グルカンが上昇することはありません。正しくは:新型コロナウイルス感染症の診断には、PCR検査や抗原検査、抗体検査などが用いられます。重症度評価にはCRP、D-ダイマー、フェリチンなどが用いられることがあります。選びやすい理由:新型コロナウイルス感染症は比較的新しく、多くの人が関心を持っているため、何らかの検査値と関連すると誤解しやすい可能性があります。また、COVID-19による免疫不全下で真菌の合併症を起こした場合、(1→3)-β-D-グルカンが上昇することもありますが、これはCOVID-19自体によるものではありません。混同注意:CRPやD-ダイマー、フェリチンなど、COVID-19の重症度や病態に関連する他の生体マーカーと混同しやすいです。(1→3)-β-D-グルカンはあくまで真菌感染症のマーカーです。
国試ポイント
真菌感染症の診断マーカーである(1→3)-β-D-グルカンについて、その特異性と、高値を示す代表的な真菌症(アスペルギルス症、カンジダ症、ニューモシスチス肺炎など)、および高値を示さない例外(ムコール症、クリプトコックス症の一部)を正確に理解しているかを問う問題です。細菌やウイルス感染症では上昇しないことも重要です。
混同注意
真菌感染症の他のマーカー(例:アスペルギルス症のガラクトマンナン抗原)、(1→3)-β-D-グルカンが高値を示さない特定の真菌症(ムコール症、クリプトコックス症)、細菌感染症やウイルス感染症の一般的な炎症マーカー(CRP、白血球数など)と混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、(1→3)-β-D-グルカンの偽陽性要因、および真菌症の種類とそれぞれの診断マーカーの組み合わせ(例:アスペルギルス症とガラクトマンナン抗原、クリプトコックス症と莢膜抗原など)について知識を確認しましょう。また、深部真菌症の病態や治療薬についても理解を深めておくと良いでしょう。
関連知識
(1→3)-β-D-グルカンは、カンジダ症、ニューモシスチス肺炎でも高値を示します。クリプトコックス症では莢膜に(1→3)-β-D-グルカンが含まれないため、基本的には上昇しません(ただし、一部の報告では陽性となる場合もあります)。偽陽性となるケースとして、血液製剤(特にフィルター処理されていないもの)、セロファン膜を用いた透析、一部の抗菌薬(アモキシシリン・クラブラン酸)、吸収性止血材の使用などが挙げられます。