血液培養陽性ボトル内容液のGram染色標本(別冊No. 11)を別に示す。35℃、5%炭酸ガス培養後のヒツジ血液寒天培地上のコロニーはβ溶血を示し、カタラーゼ試験陰性およびPYR試験陽性であった。推定されるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第67回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
Gram染色でグラム陽性球菌が確認され、培養結果でβ溶血性、カタラーゼ試験陰性、PYR試験陽性という組み合わせは、Streptococcus pyogenes(A群溶血性レンサ球菌)の典型的な同定特徴である。他の選択肢の菌種は、これらの特徴のいずれかに矛盾する。
選択肢ごとの解説
- 1. Listeria monocytogenesはグラム陽性桿菌であり、本問題のGram染色所見(グラム陽性球菌)と一致しない。正しくは:Gram染色でグラム陽性桿菌が確認され、さらに運動性やエスクリン加水分解陽性などの特徴がある場合。選びやすい理由:グラム陽性菌である点は共通するが、形態が異なる。混同注意:グラム陽性菌の分類全体と混同しやすいが、形態(球菌か桿菌か)で明確に区別できる。
- 2. Peptostreptococcus anaerobiusは嫌気性グラム陽性球菌であり、本問題の培養条件(5%炭酸ガス培養、つまり通性嫌気性または好気性菌の培養)での明確なβ溶血形成とは合致しにくい。また、PYR試験は通常陰性である。正しくは:Gram染色でグラム陽性球菌が確認され、厳密な嫌気培養で増殖し、PYR試験陰性の場合。選びやすい理由:グラム陽性球菌である点は共通するが、嫌気性菌である点が異なる。また、PYR試験の結果も異なる。混同注意:グラム陽性球菌という点では連想されるが、嫌気性とPYR試験結果で鑑別が必要。
- 3. Staphylococcus aureusはグラム陽性球菌であり、β溶血を示すことがあるが、カタラーゼ試験は陽性であるため、本問題のカタラーゼ試験陰性という結果と矛盾する。正しくは:Gram染色でグラム陽性球菌が確認され、カタラーゼ試験陽性の場合。選びやすい理由:グラム陽性球菌であり、β溶血を示すことがあるため、グラム染色の所見だけでは選択肢として挙がりやすい。しかし、カタラーゼ試験で明確に鑑別できる。混同注意:Streptococcus属とStaphylococcus属の基本的な鑑別点であるカタラーゼ試験の結果を混同しやすい。
- 4. Streptococcus pneumoniaeはグラム陽性球菌であり、カタラーゼ試験は陰性であるものの、通常はα溶血を示し、β溶血は示さない。また、PYR試験も陰性である。正しくは:Gram染色でグラム陽性球菌(双球菌が多い)が確認され、α溶血を示し、カタラーゼ試験陰性、PYR試験陰性、オプトヒン感受性陽性の場合。選びやすい理由:グラム陽性球菌でカタラーゼ陰性という点は共通するが、溶血性やPYR試験の結果が異なる。混同注意:溶血性やPYR試験の結果を他のStreptococcus属菌と混同しやすい。
- 5. 正解。Streptococcus pyogenes(A群溶血性レンサ球菌)は、Gram染色でグラム陽性球菌として観察され、ヒツジ血液寒天培地でβ溶血を示し、カタラーゼ試験陰性、PYR試験陽性という特徴を全て満たすため、本問題の所見と完全に一致する。
国試ポイント
グラム染色所見と、溶血性、カタラーゼ試験、PYR試験といった基本的な生化学的性状を組み合わせて菌種を同定する能力が問われている。特に、Streptococcus属とStaphylococcus属の鑑別、およびStreptococcus属内の主要菌種の鑑別ポイント(溶血性、PYR試験、CAMP試験など)の理解が重要。
混同注意
Streptococcus属内の他菌種(例:S. agalactiae, S. pneumoniae)やStaphylococcus aureusとの鑑別。特に、Streptococcus agalactiaeもβ溶血を示すが、PYR試験は陰性であり、CAMP試験が陽性である点で鑑別される。
次に同じ論点が出たら
グラム染色でグラム陽性球菌が見られた場合、まずカタラーゼ試験を行い、陰性であればStreptococcus属を疑う。次に溶血性(α、β、γ)を確認し、β溶血であればPYR試験やCAMP試験、バシトラシン感受性試験などを用いてA群、B群などの鑑別を行う。
関連知識
グラム染色:グラム陽性球菌(連鎖状配列)。溶血性:β溶血。カタラーゼ試験:陰性。PYR試験:陽性。その他の鑑別試験として、バシトラシン感受性(陽性)が挙げられる。