32歳の男性。アフリカ系アメリカ人。貧血の精査で採血した末梢血のMay-Giemsa染色標本(別冊No. 9)を別に示す。この疾患について誤っているのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第69回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
鎌状赤血球症では、赤血球に含まれる異常ヘモグロビンS(HbS)が、低酸素状態になると重合し、赤血球が鎌状に変形します。これは血管閉塞や溶血の原因となります。高酸素状態ではHbSの重合は起こりにくく、赤血球は通常の形状を保ちます。したがって、「高酸素状態で変形する」という記述は誤りです。
選択肢ごとの解説
- 1. 鎌状赤血球症は、ヘモグロビンβ鎖遺伝子の点突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患です。常染色体劣性遺伝形式をとります。正しくは:正しい記述です。選びやすい理由:鎌状赤血球症が遺伝病であることは基本的な知識なので、誤りだと考える可能性は低いでしょう。混同注意:他の赤血球疾患(例:自己免疫性溶血性貧血)と混同すると、遺伝性でないと誤解する可能性があります。
- 2. 正解。鎌状赤血球は、低酸素環境下で異常ヘモグロビンS(HbS)が重合して鎌状に変形します。高酸素環境下では、HbSは重合しにくく、赤血球は通常の円盤状を保ちます。したがって、高酸素状態で変形するという記述は誤りです。正しくは:赤血球は低酸素状態で変形する。選びやすい理由:鎌状赤血球症と酸素との関連性は重要ですが、高酸素と低酸素を混同しやすい点が狙われています。病名から変形が特徴であることは容易に想像できますが、変形が起こる具体的な条件を正確に理解しているかが問われます。混同注意:低酸素状態でのHbSの重合と、それに伴う赤血球の鎌状変形を混同しやすいです。酸素分圧が低い環境(例:激しい運動後、高地など)で病態が悪化するという知識から、「酸素」が関わることは理解しても、どちらの状態で変形するかの向きを誤解しやすいでしょう。
- 3. 鎌状赤血球症のヘテロ接合体(鎌状赤血球形質)の患者は、マラリア原虫(特に熱帯熱マラリア原虫)に対する抵抗性を持つことが知られています。これは、鎌状赤血球が原虫の増殖に適さないことや、感染赤血球が早期に破壊されるためと考えられています。そのため、マラリア流行地域でこの遺伝子変異が維持されてきました。正しくは:正しい記述です。選びやすい理由:鎌状赤血球症がマラリア耐性を持つことは、特徴的な関連知識としてよく知られているため、誤りだと考える可能性は低いでしょう。混同注意:マラリアと鎌状赤血球症の関連性を知らない場合、この記述の真偽を判断できない可能性があります。
- 4. 鎌状に変形した赤血球は、正常な赤血球と比較して細胞膜の柔軟性が著しく低下します。この硬化した赤血球は、細い血管を通過しにくくなり、血管閉塞や溶血を引き起こします。正しくは:正しい記述です。選びやすい理由:鎌状に変形した赤血球が硬くなることは、血管閉塞などの病態を考えれば自然な流れであるため、誤りだと考える可能性は低いでしょう。混同注意:赤血球の変形能(柔軟性)が低下することが、この疾患の病態生理における重要な要素であることを理解していない場合、判断に迷うかもしれません。
- 5. 鎌状赤血球症は、異常ヘモグロビンS(HbS)の合成を特徴とする疾患です。このHbSが低酸素状態で重合し、赤血球を鎌状に変形させます。正しくは:正しい記述です。選びやすい理由:鎌状赤血球症の病名から、異常ヘモグロビンS(HbS)が含まれることは非常に基本的な知識であるため、誤りだと考える可能性は低いでしょう。混同注意:他のヘモグロビン異常症(例:サラセミア、他の異常ヘモグロビン症)と混同すると、どのような異常ヘモグロビンが含まれるかを間違える可能性があります。
国試ポイント
鎌状赤血球症の基本的な病態生理(特に赤血球の変形が起こる酸素環境の条件)を正確に理解しているかどうかが問われます。マラリア耐性や遺伝性、ヘモグロビンSの関与といった関連知識も重要です。
混同注意
低酸素状態と高酸素状態での赤血球の変形メカニズムを混同しやすいです。また、単に「変形する」という事実は知っていても、その誘因となる環境条件を誤って記憶している可能性があります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、鎌状赤血球症の病態生理における「酸素分圧」の役割(低酸素で変形、高酸素で正常化)を問う選択肢に注目し、その向きが正しいかを判断する必要があります。また、他のヘモグロビン異常症との違いや、それぞれの特徴的な所見・合併症も確認すると良いでしょう。
関連知識
ヘモグロビン異常症の種類、溶血性貧血の鑑別診断、遺伝形式、マラリアと遺伝病の関係性(遺伝的ポリモーフィズム)。