血清蛋白泳動分画(別冊No. 5)を別に示す。この患者の血清中に増加が考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第66回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
下図の血清蛋白電気泳動パターンでは、γグロブリン領域に非常に狭く高いMピーク(Mスパイク)が明確に認められます。この所見は、単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)の存在を示しており、多発性骨髄腫などの形質細胞異常増殖性疾患で特徴的です。M蛋白として最も頻度が高いのはIgGであるため、この患者の血清中でIgGの増加が考えられます。他の分画には著しい増加や異常は認められません。
選択肢ごとの解説
- 1. アルブミンは、電気泳動の最も速い(陽極側)に位置する主要なタンパク質です。通常、慢性炎症や自己免疫疾患では肝臓での産生抑制や炎症による血管透過性亢進で減少することが多く、本ケースのようなγ-グロブリンの著しい増加(M蛋白)を伴う疾患では、相対的または絶対的に減少傾向を示すことが多いです。正しくは:パターンではアルブミン分画は正常から減少傾向に見えます。選びやすい理由:アルブミンは血清中で最も量の多いタンパク質であるため、異常がある場合に真っ先に検討する候補と考える人もいるかもしれませんが、本ケースではγ-グロブリンの単クローン性増殖が主病態です。混同注意:他のグロブリン分画の増加と混同しやすいかもしれません。
- 2. α1-アンチトリプシンはα1分画に含まれるタンパク質です。電気泳動パターンではα1分画に著しい増加は見られず、むしろ正常範囲内かやや低下傾向に見えます。α1-アンチトリプシンが増加するのは炎症性疾患の急性期反応物質としてですが、本ケースの所見とは異なります。正しくは:α1分画は正常範囲内かやや低下傾向に見えます。選びやすい理由:炎症反応を示す項目であるため、何らかの疾患を疑う際に選択肢として考慮するかもしれませんが、M蛋白の検出とは直接関係ありません。混同注意:急性期反応物質の増加とM蛋白の増加を混同する可能性があります。
- 3. リポ蛋白はαおよびβ分画に含まれることがありますが、電気泳動パターンではこれらの分画に著しい増加や異常なバンドは認められません。リポ蛋白の増加(高脂血症)は、一般的に蛋白電気泳動で特定のパターンを示すことは稀で、別の検査で評価されます。正しくは:αおよびβ分画に著しい増加は見られません。選びやすい理由:様々な代謝異常で増加する可能性があり、一般的な検査項目の一つと考えるかもしれませんが、血清蛋白電気泳動の主な目的とは異なります。混同注意:高脂血症とM蛋白血症の検査所見を混同するかもしれません。
- 4. トランスフェリンはβ分画に主に含まれるタンパク質です。電気泳動パターンではβ分画に著しい増加は見られません。鉄欠乏性貧血などで増加することがありますが、本ケースの所見はこれとは異なります。正しくは:β分画に著しい増加は見られません。選びやすい理由:β分画に異常がある疾患もあるため、関連性を疑うかもしれませんが、本ケースの明らかな単クローン性ピークとは異なります。混同注意:βグロブリンの増加と単クローン性γグロブリンの増加を混同する可能性があります。
- 5. 正解。示された電気泳動パターンでは、γグロブリン領域に狭く高いピーク(MピークまたはMスパイク)が明確に認められます。これは、単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)の存在を示唆しており、多発性骨髄腫などの形質細胞異常増殖性疾患で多く見られます。M蛋白の多くはIgG型、次いでIgA型であり、この典型的なパターンは単クローン性免疫グロブリンの増加、特にIgGの増加と強く関連しています。選びやすい理由:γグロブリン分画のピークは、多クローン性の増加の場合にも見られることがありますが、本ケースではシャープなピークであり、単クローン性のIgG増加(M蛋白)を強く示唆しています。
国試ポイント
血清蛋白電気泳動のパターンと、各分画に対応する主要なタンパク質、および典型的な疾患との関連性を理解しているか問う問題です。特に、M蛋白の概念とその電気泳動像を正確に認識できることが重要です。
混同注意
多クローン性γグロブリン増加と単クローン性γグロブリン増加(M蛋白)の電気泳動パターンの違い。M蛋白は狭く高いピークを形成するのに対し、多クローン性増加ではγ領域全体がブロードに上昇します。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まずγグロブリン領域に異常なピークがないかを確認し、そのピークがブロードかシャープかで多クローン性か単クローン性かを判断します。シャープなピークであればM蛋白を疑い、選択肢から該当する免疫グロブリンを選択します。
関連知識
M蛋白が検出される疾患には、多発性骨髄腫、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、アミロイドーシスなどがあります。免疫グロブリンにはIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があり、そのうちM蛋白として最も多く見られるのはIgGです。M蛋白の確定診断には、免疫固定法や免疫電気泳動法が用いられます。