緩衝食塩溶液の希釈系列に検体A(ヘパリン血)を滴下後37℃で2時間静置した。その溶血度(%)と食塩濃度(%)の関係(別冊No. 13)を別に示す。考えられるのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第70回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
下図の浸透圧脆弱性曲線は、溶血曲線が左側にシフトしており、浸透圧抵抗の増強を示しています。つまり、赤血球が通常の生理食塩水よりも低い食塩濃度でも溶血しにくい状態にあることを示唆しています。鉄欠乏性貧血では、赤血球が小球性・低色素性となるため、赤血球あたりのヘモグロビン量が少なく、細胞体積が小さいです。そのため、より多くの水を取り込まないと破裂しないため、浸透圧抵抗は増強します。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。鉄欠乏性貧血では、赤血球の容積が小さく(小球性)、ヘモグロビン濃度が低い(低色素性)ため、浸透圧抵抗は増強します。つまり、正常な赤血球よりも低い食塩濃度でなければ溶血しにくくなります。グラフでは、溶血曲線が左にシフトしており、より低い食塩濃度で溶血が始まる、または完全溶血に至ることが示されているため、浸透圧抵抗の増強と一致します。選びやすい理由:貧血であることは共通していますが、溶血の機序や赤血球の形態が異なるため、浸透圧抵抗のパターンが異なります。混同注意:他の溶血性貧血や巨赤芽球性貧血など、浸透圧抵抗が減弱する疾患と混同しやすいですが、これらは溶血曲線が右にシフトします。
- 2. 巨赤芽球性貧血では、赤血球が大きくなり(大球性)、浸透圧抵抗は増強します。これは、赤血球の体積が大きいため、比較的低い食塩濃度でも細胞が膨張しきって破裂するまでに、より多くの水を吸収できるためです。そのため、溶血曲線は左にシフトし、鉄欠乏性貧血と同様に浸透圧抵抗が増強するように見えますが、両者の赤血球の形態や病態生理は異なります。設問のグラフは「溶血度(%)と食塩濃度(%)の関係」であり、このグラフが巨赤芽球性貧血に特異的であるとは言えません。ただし、鉄欠乏性貧血と比較すると、一般的には大球性貧血の方が浸透圧抵抗は増強します。正しくは:このグラフは、鉄欠乏性貧血において見られる小球性低色素性貧血による浸透圧抵抗の増強、つまり溶血曲線が左にシフトするパターンを示唆しています。巨赤芽球性貧血も浸透圧抵抗が増強しますが、最も典型的なのは鉄欠乏性貧血のパターンです。選びやすい理由:巨赤芽球性貧血でも浸透圧抵抗は増強し、溶血曲線は左にシフトします。しかし、一般的には鉄欠乏性貧血の方が浸透圧抵抗の増強が顕著な場合があり、国家試験ではより典型的なパターンを問う傾向があります。混同注意:浸透圧抵抗が増強する疾患(例:鉄欠乏性貧血、サラセミア、巨赤芽球性貧血)は全て溶血曲線が左にシフトするため、グラフだけでは鑑別が難しい場合があります。しかし、問題文には「最も考えられる」とあるため、最も典型的な選択肢を選ぶ必要があります。
- 3. 再生不良性貧血は、骨髄の造血幹細胞の障害による貧血であり、赤血球の形態異常は通常見られず、浸透圧抵抗もほぼ正常です。溶血自体が主病態ではないため、浸透圧抵抗の変化はグラフのような溶血曲線の大きなシフトを引き起こしません。正しくは:再生不良性貧血の浸透圧抵抗は通常正常です。したがって、溶血曲線は正常範囲にとどまります。選びやすい理由:「貧血」という共通点がありますが、病態が異なり、浸透圧抵抗には影響しません。混同注意:貧血という広い概念で捉えると混乱しますが、浸透圧抵抗に影響を与えるのは赤血球の形態や膜の異常であることを理解することが重要です。
- 4. 遺伝性球状赤血球症では、赤血球が球状に変形し、表面積が減少しているため、浸透圧抵抗が減弱します。これは、赤血球が水を吸収して膨張できる余地が少ないため、比較的高い食塩濃度でも溶血しやすくなることを意味します。したがって、溶血曲線は右にシフトします。正しくは:遺伝性球状赤血球症では浸透圧抵抗が減弱するため、溶血曲線は右にシフトします。選びやすい理由:溶血性貧血の一種であり、赤血球の形態異常を伴うため、溶血曲線に変化を来すことは正しいですが、その変化の方向が逆です。混同注意:浸透圧抵抗の「増強」と「減弱」の違いを混同しやすいです。球状赤血球は浸透圧抵抗が減弱します。
- 5. 自己免疫性溶血性貧血では、自己抗体によって赤血球が破壊される溶血性貧血であり、赤血球の形態は多様です。クームス試験が陽性となり、直接的な浸透圧抵抗の変化は疾患の本質的な特徴ではありません。溶血曲線のパターンは病型や病態によって様々ですが、一般的に浸透圧抵抗が減弱する傾向が見られることもあります(特に球状化を伴う場合)。ただし、このグラフのような著しい浸透圧抵抗の増強を示すパターンとは異なります。正しくは:自己免疫性溶血性貧血では、赤血球の球状化を伴う場合、浸透圧抵抗が減弱し、溶血曲線は右にシフトする傾向があります。このグラフで示される増強とは逆のパターンです。選びやすい理由:溶血性貧血であるため、赤血球の変化があることは正しいですが、浸透圧抵抗の増強を示すグラフとは一致しません。混同注意:「溶血性貧血」という言葉から、溶血曲線に異常が出ると考えがちですが、どのような異常が出るかを正確に理解する必要があります。
国試ポイント
浸透圧脆弱性試験の結果(溶血曲線)から、各疾患における赤血球の浸透圧抵抗の変化(増強か減弱か)を正確に判断できるかどうかが問われる問題です。特に、小球性貧血と大球性貧血、球状赤血球症のパターンを理解していることが重要です。
混同注意
浸透圧抵抗が増強する疾患(鉄欠乏性貧血、サラセミア、巨赤芽球性貧血など)と、減弱する疾患(遺伝性球状赤血球症、自己免疫性溶血性貧血の一部など)を混同しやすいです。また、貧血という共通点から、病態が異なる貧血を誤って選んでしまう可能性があります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず溶血曲線が正常範囲から右にシフトしているか(浸透圧抵抗減弱)左にシフトしているか(浸透圧抵抗増強)を判断する。その上で、各選択肢の疾患がどちらのパターンに該当するか、最も典型的な疾患はどれかを考慮して選択する。
関連知識
赤血球の浸透圧抵抗は、主に赤血球の形態(特に表面積と体積の比)によって決まります。球状赤血球のように表面積が減少していると浸透圧抵抗は減弱し、小球性赤血球のように体積が小さい場合は浸透圧抵抗が増強します。大球性赤血球も体積が大きいため浸透圧抵抗は増強しますが、小球性とは機序が異なります。クームス試験陽性の自己免疫性溶血性貧血では、赤血球表面に抗体が結合し、マクロファージによる貪食や補体介在性溶血により、赤血球の寿命が短縮します。一部の病型では球状化を伴い浸透圧抵抗が減弱することもありますが、必ずしも一定のパターンを示すわけではありません。