40歳の男性。胸部の発赤と腫脹を主訴に来院した。発赤は次第に腹側正中部に向かって伸び、帯状や線状になった。腹部の写真(別冊No. 1)を別に示す。食物摂取歴として、1か月前にドジョウを生食した。診断として正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第64回臨床検査技師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
40歳の男性が胸部の発赤と腫脹を訴え、その発赤が腹部正中部に向かって帯状や線状に広がり、1か月前にドジョウを生食した既往があることから、顎口虫の幼虫が皮下組織を移動することで生じる皮膚爬行症(creeping eruption)が考えられます。顎口虫の幼虫は、ドジョウなどの淡水魚介類を生食することで経口感染し、ヒトの消化管壁を穿通して皮下組織へ移行し、皮下を移動することで線状の皮疹を形成します。画像は典型的な線状・帯状の皮疹を示しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 疥癬はヒゼンダニによる皮膚感染症で、指間、手首、腋窩、腹部などに強い痒みのある丘疹や小水疱、疥癬トンネルを形成しますが、画像のような帯状・線状に広がる皮疹とは異なります。また、生食歴は関連しません。正しくは:疥癬はヒゼンダニの感染により指間や手首などに小紅斑、丘疹、小水疱を形成し、夜間の掻痒が特徴的です。画像のような皮膚爬行症は呈しません。選びやすい理由:皮膚病変であるため、一般的な皮膚疾患として選択肢に含めやすいですが、病変の形態や感染経路が異なります。混同注意:皮膚感染症全般
- 2. 正解。ドジョウの生食歴、胸部から腹部正中部に向かって広がる帯状・線状の皮疹(皮膚爬行症)は、顎口虫の幼虫が皮下組織を移動することで生じる典型的な症状です。選びやすい理由:症例情報が顎口虫症の典型的なパターンと一致しているため、正答として選びやすいです。混同注意:糞線虫症による皮膚爬行症
- 3. 旋毛虫症は豚肉やイノシシ肉の生食で感染し、眼瞼浮腫、顔面浮腫、筋痛、発熱などを主症状とし、皮膚症状としては蕁麻疹や点状出血がみられることがありますが、画像のような帯状・線状の移動性皮疹(皮膚爬行症)は特徴的ではありません。正しくは:旋毛虫症は豚肉やイノシシ肉の生食で感染し、顔面浮腫、筋痛、発熱、好酸球増多などを特徴とします。皮膚爬行症は通常見られません。選びやすい理由:寄生虫疾患であり、生食歴があるため迷う可能性があります。しかし、感染源と皮膚症状が異なります。混同注意:他の寄生虫疾患、特に肉の生食で感染するもの
- 4. オンコセルカ症はブユによって媒介される寄生虫症で、アフリカや中南米の風土病です。特徴的な皮膚症状は皮下結節(オンコセルカ腫)、強い掻痒を伴う皮膚炎、象皮病などであり、画像のような線状の移動性皮疹とは異なります。また、ドジョウの生食歴とは関連しません。正しくは:オンコセルカ症はブユ媒介性の寄生虫症で、皮下結節や強い掻痒を伴う皮膚炎が主症状です。ドジョウの生食とは関連ありません。選びやすい理由:寄生虫疾患であり、皮膚症状を呈することから選択肢として考えるかもしれませんが、感染経路、地域、具体的な症状が異なります。混同注意:他の熱帯病や昆虫媒介性の皮膚疾患
- 5. 日本住血吸虫症は巻き貝(中間宿主)を介して皮膚から感染します。主な症状は、急性期には発熱、肝脾腫、下痢、蕁麻疹など、慢性期には肝硬変などです。感染初期に皮膚からの侵入部位に痒みを伴う皮疹(セルカリア皮膚炎)が見られることもありますが、画像のような帯状・線状に広がる移動性皮疹(皮膚爬行症)とは異なります。また、ドジョウの生食とは関連しません。正しくは:日本住血吸虫症は皮膚からのセルカリア侵入によって感染し、発熱、肝脾腫、下痢、蕁麻疹などが主症状です。ドジョウの生食とは直接関連せず、皮膚爬行症も呈しません。選びやすい理由:寄生虫疾患であり、皮膚症状を呈することがあるため迷う可能性があります。しかし、感染経路と具体的な皮膚症状が異なります。混同注意:他の寄生虫疾患、特に水系感染するもの
国試ポイント
寄生虫感染症における特異的な症状(皮膚爬行症、皮下腫瘤など)と感染経路(生食歴)を関連付けて診断する能力が問われています。特に顎口虫症とドジョウ生食の関連は重要です。
混同注意
疥癬のトンネルは短く、他の寄生虫の移動性皮疹と混同しやすいですが、顎口虫症の皮膚爬行症はより長く、速度が速いのが特徴です。また、消化器症状を伴う他の寄生虫疾患との鑑別も必要です。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、生食歴(特に淡水魚介類)と、特徴的な移動性・線状の皮疹の有無を確認します。皮下腫瘤の有無も重要な鑑別点となります。血液検査で好酸球増多が認められることが多いです。
関連知識
顎口虫症の他に、皮膚爬行症を呈する寄生虫として糞線虫症(Strongyloides stercoralis)があります。また、ドジョウ生食で感染する他の寄生虫には、肝吸虫(Clonorchis sinensis)などがあります。